
クウェートは、公式声明や、さまざまな効果的な措置を通じ反テロ連合を支援した。サアド皇太子は10月、国民議会開会の演説の中で、テロ対策はクウェート政府の最優先事項であると述べた。クウェートは、国連のテロ防止関連条約12すべてを批准または署名した。金融面では、国際的な資金の移動はすべてクウェート中央銀行を通すこと、すべての金融機関が米国の大統領令13224号で指定された資産を凍結・押収すること、そして2002年までに無許可の慈善団体すべてを閉鎖することを命じた。クウェート政府は12月、テロ資金調達が疑われる事例の調査に当たって、米国の専門家と協力することを約束した。クウェート政府は、イスラム教慈善団体を監督する上級の協議会を設置するとともに、聖職者がその地位を利用し政治紛争を扇動しないよう指導した。クウェートは、不朽の自由作戦への支援を求める反テロ連合の要請すべてに、積極的かつ迅速に応じた。また不朽の自由作戦の期間中、アフガニスタン難民向けの人道支援物資を複数回にわたり輸送した。クウェートは2001年に、難民のための800万ドルを超える義援金と、パキスタンに対する無償資金協力として2億5000万ドルを超える金額を拠出した。クウェートでは、2001年にテロ事件は発生しなかった。
レバノン
レバノンの大統領と政府高官は、一貫して9月11日の同時多発テロを非難し、アルカイダにつながりを持つ人物の逮捕とイスラム教スンニ派の過激派と疑われる人物の資産凍結を目指す米国の取り組みへの支援を申し出た。レバノンの治安部隊は10月、米国と英国の両大使館とベイルート市内における不特定のアラブ系標的に対するテロ攻撃を計画していたとして、「アスバト・アルアンサル」のメンバー2人を逮捕した。アスバト・アルアンサルは非合法組織で、アルヒルワ・キャンプを本拠として活動しているが、指導者のアブ・ムージンは、レバノンでの欠席裁判により死刑判決を受けている。
しかし、レバノン政府は、ヒズボラによる反イスラエル活動は占領政策に対する「抵抗運動」であるとして、これを黙認している。レバノンで活動または存在を維持しているテロ組織には、ヒズボラ、イスラム抵抗運動(ハマス)、パレスチナ・イスラム聖戦、パレスチナ解放人民戦線総司令部(PFLP-GC)、アスバト・アルアンサル、そして地元のスンニ派過激派組織などがある。
米国連邦捜査局(FBI)は2001年、1985年のトランス・ワールド航空(TWA)847便のハイジャックに関与したイマド・ムグニヤー容疑者をはじめとするヒズボラの幹部3人を指名手配したが、レバノン政府はこの3人の身柄を米国政府当局に引き渡さなかった。レバノンの法律は、同国の国籍を持つ犯罪人の外国への引き渡しを禁じているが、レバノン政府は同国の裁判所でこの事件を審理するための十分な措置を取っておらず、3人は国内にはいない、行方は不明であると主張している。
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| ベイルートの米国大使館付近で、同時多発テロの犠牲者を悼み、ろうそくに火をともすレバノンの学生 |
レバノン政府がイスラエルを狙う組織を合法と見なしているため、ヒズボラ、ハマス、パレスチナ・イスラム聖戦などのパレスチナのテロ組織は合法組織として認められ、ベイルートに事務所を置くことを引き続き許された。レバノン政府は、ヒズボラの資産凍結や反イスラエルのパレスチナ組織の事務所閉鎖を拒否した。同国政府はまた、ヒズボラはレバノンの社会・政治に不可欠な、地域に根ざした組織であると主張し、ヒズボラは世界的に活動しているとする米国政府の見解を否定した。レバノン政府は米国と国連に対し、レバノンはテロに反対し、テロ抑制の取り組みを続けていると報告したが、米国とレバノンは、テロの定義を巡って意見が対立した。レバノン政府は他のアラブ諸国と同様、国連主催の会議を開き、テロの根本原因を明確にし、それに対処するよう求めた。
2001年を通じて、レバノンのほとんどの地域で治安は安定していたが、ベイルート南部の郊外、ベッカー高原、南部の国境周辺そしてパレスチナ難民キャンプなど国内数カ所では、政府による治安維持は十分ではなかった。政府の治安維持能力に問題が残る状況が続いたため、テロ組織による訓練活動や、小火器・爆発物の密輸入が横行する環境が生じた。ヒズボラは1991年以降、レバノン国内での米国権益に対するテロ攻撃を実行していないが、国内外で米国人や米国関連施設を攻撃する能力は維持してきた。ヒズボラは2001年にも、ベッカー高原の訓練施設で、ハマスとパレスチナ・イスラム聖戦に訓練を提供した。ヒズボラはまた、これらの組織が反イスラエル活動に使用できるよう、ヨルダン川西岸やガザ地区への武器の移送を増やしたとされる。
レバノンでは、2001年には米国権益を標的とするテロ事件はなかったが、政治的暴力や偏見に基づく犯罪は散発的に発生した。5月に、レバノン政府の統制が及ばないシドン市に近いアイン・アルハルワ・パレスチナ難民キャンプで、アラファト議長率いるファタハの上級司令官が、正体不明の暗殺者に銃殺された。9月には、別のファタハ幹部がシドンの自宅近くで襲撃されたが、殺害は免れた。9月と10月には教会2軒が襲撃され建物は損壊したが、死者は出なかった。10月には、キリスト教徒が多数を占めるバトルーンの町でモスクが放火され、多少の被害が出た。
モロッコ
モロッコ国王のモハメド6世は、9月11日の同時多発テロを明確に非難し、国際的な反テロ連合にモロッコが全面的に協力することを申し出た。モロッコ政府は9月24日、国連テロ資金供与防止条約に署名し、またテロ資金の根絶を目的とする国連安保理決議に全面的に従っている。
モロッコ政府は2001年も引き続き、テロ活動に対する厳戒態勢を維持し、テロリストを排除する姿勢を堅持した。モロッコ国内でのテロ活動は報告されていないが、モハメド国王はテロを実行・信奉する者に対する強い非難を繰り返した。
オマーン
オマーン政府は、反テロ連合の要請に極めて迅速に対応した。オマーンは、テロ資金の封鎖を目指す米国大統領令13224号に関連する米国の要請に積極的に応じ、指定されたテロ組織とテロリストの口座閉鎖を確実にした。オマーン政府は、国連テロ防止関連条約12のうち9つの条約に署名している。オマーンでは、2001年にテロ事件は発生しなかった。
カタール
カタールは、反テロ連合に、重要で多大な支援を提供した。カタールはイスラム諸国会議機構(OIC)議長国として、9月11日の事件直後このテロを非難するとともに、テロとイスラム教との関わりを否定する公式声明を発表した。10月16日には、OICの臨時外相会議を主催し、反テロ連合の行動を支持する最終声明の作成に関わった。カタールの法執行当局は、テロ容疑者を拘束し取り調べるため米国と密接に協力し、また、カタール中央銀行は、すべての金融機関に対し、米国大統領令13224号で指定されたテロ資産を凍結・押収するよう指示した。
サウジアラビア
9月11日の事件が発生し、テロ実行犯19人のうち15人がサウジアラビア国籍を保有していたことが判明したのを受け、サウジアラビア政府はテロと戦うことを改めて約束するとともに、アルカイダとタリバンに対抗する反テロ連合の取り組みを支援する具体的な行動要請に積極的に応じた。サウジアラビアの国王、皇太子、政府が任命した宗教指導者、そして国営報道機関は一貫してテロを公に非難し、一部のイスラム教聖職者が同時多発テロを、思想的・宗教的観点から正当化しようとすることに異議を唱えた。
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| 2001年6月29日、パリでサウジアラビアのアブドラ皇太子(右)と会談するパウエル国務長官 |
サウジアラビアは10月、テロ関連資産の凍結などを求める国連安保理決議1373号を実施することを明らかにした。サウジアラビア政府は、国連のテロ防止関連条約12のうち9つを批准し、さらに国連テロ資金供与防止条約など3つにも署名した。残る3つの条約についても検討している。サウジアラビア政府はまた、非政府機関や民間機関に対し、国内外での人道目的のための寄付要請行為に関する既存の法律を順守するよう強く求めた。これらの法律は、これまで厳密に施行されておらず、一部の国際テロ組織の代表者がサウジアラビア国内で民間人や企業から寄付金を集めていた。サウジアラビア当局は12月、テロ資金調達が疑われる事例の捜査で米国と協力することに合意した。
2001年には、サウジアラビア国内の米国の民間人や軍人そして施設に対するテロの予告が数件あったが、いずれも実行されなかった。サウジアラビア当局は、首都リヤドと東部のアシュ・シャルキーヤ州での一連の爆破事件の調査を年末までに終え、これられは政治的動機に基づくものではなく、刑事事件であるとの結論に達した。10月には、アルコバルで自爆テロと思われる事件が発生し、米国人1人が死亡、1人が負傷した。その後のサウジアラビア当局の捜査によれば、このテロはパレスチナ人による単独犯行で、パレスチナのインティファーダと関連する動機は確認できなかった。
サウジアラビアでの2001年の主要な国際テロ事件としては、3月に、チェチェンにおけるロシアの行動に抗議する目的で、ロシア行きのトルコ航空機がハイジャックされた事件1件があった。サウジアラビア軍がハイジャック機内に突入し、乗客の大半を救出した。サウジアラビア政府は、ハイジャック犯引き渡しを求めるロシアとトルコの要求を拒否した。
サウジアラビア政府は、1996年6月にダーラン近郊のコバル米軍宿舎ビルが爆破され、米軍人19人が死亡し、米国人とサウジアラビア人計約500人が負傷した事件の捜査を継続した。サウジアラビア政府は、1999年に米国から送還されたハニ・アルサエグ容疑者をはじめ、この事件に関連する多数のサウジアラビア人を引き続き拘留した。
チュニジア
チュニジア政府は9月11日の事件を契機に、テロに反対する積極的な姿勢を強化した。2001年にアラブ国家で唯一の国連安保理事会の理事国であったチュニジアは、安保理決議1368号と1373号を支持した。こうした国際的な協力姿勢は、国内でのテロに対峙するというチュニジア政府の具体的な取り組みに沿うものであった。隣国アルジェリア内での暴力を目の当たりにしているチュニジア国民の大半は、自国がそうした状況に陥ることを望まず、イスラム原理主義的な活動に反対している。
チュニジアでは2001年にテロ活動は報告されていないが、政府は司法、法執行、軍事などの手段を用い、テロリストの容疑者を続けた。軍事法廷は11月29日、イタリアから送還されたチュニジア人被告を、イタリアにおいてテロ細胞メンバーを訓練した罪で有罪とした。軍事面では、チュニジア政府はアルジェリア政府と協力し、治安を脅かす可能性のある過激派の流入を阻止するため国境警備を強化した。こうした取り組みが実を結び、チュニジア政府は11月、テロリストの移動や武器・麻薬・密輸品の不法な取引の取り締まりを強化するため国境警備隊を増強することを目的とした軍事協力協定をアルジェリアと結んだ。
アラブ首長国連邦
アラブ首長国連邦(UAE)は、アフガニスタンのタリバン政権を承認していた3カ国のうちの1つであったが、米国で同時多発テロが発生してから11日後に、タリバンとの外交関係を断絶した。ザイード大統領は、12月の建国記念日の演説で、「テロと戦い、テロを根絶する」ことを約束した。UAEが法執行や外交そして人道の分野で取った行動は、こうした姿勢を裏付けるものであった。UAEは、テロ資金の遮断に向け重要な措置を取った。例えば、UAE中央銀行は、銀行、投資会社、両替商を含むあらゆる金融機関に対し、テロとのつながりを持つ150近い団体や個人の口座の凍結と差し押さえを命じた。こうした団体には、ドバイに本拠を置くアルバラカート・グループも含まれている。UAEはまた、湾岸協力会議による、資金洗浄を禁止する最も包括的な刑法を採用した。さらに、9月11日の同時多発テロに関与した、UAE国籍のマルワン・アルシヒとファエズ・バニ・ハメド両容疑者に関する捜査を継続した。7月には、ドバイでジャメル・ベグハル容疑者を逮捕し、フランスに送還した。同容疑者は、パリの米国大使館とアメリカ文化センターに対するテロ計画に関与したとして、フランスで正式に取調べを受けた。UAEはこのほかにも、パキスタンに対し2億6500万ドル相当の援助を拠出した。またUAE赤新月社は、ドバイのムハマド・ビン・ラシド・アルマクトム皇太子の財団と「シャルジャー・チャリティ・インターナショナル」と協力し、アフガニスタンとパキスタンの国境付近5カ所に難民キャンプと人道センターを設置するため2000万ドル以上を寄付するとともに、アフガニスタン国民に医薬品、衣料、毛布を提供した。
イエメン
イエメンは、9月11日の事件直後、このテロ行為を非難した。イエメン政府はまた、「あらゆる形態、あらゆる理由の」テロを公に非難し、国際的なテロとの戦いに対する支持を表明した。イエメン政府はさらに、米国との情報・諜報そして軍事面での協力を拡大するため効果的な措置を取った。サレハ大統領は、11月にワシントンを公式訪問し、イエメンがテロ対策に関し米国の積極的なパートナーとしての役割を担う決意であることを強調した。米国政府高官は、サレハ大統領の取り組みを歓迎したが、テロ対策への協力の評価は、結果によって判断されることも明言した。
米国とイエメンは、2000年10月に発生した米国駆逐艦「コール」爆破事件の合同捜査を継続した。この協力は、特に同時多発テロ後に効果を上げ、ケニアとタンザニアの米国大使館爆破事件と「コール」爆破事件、そして9月11日の同時多発テロの間に重要な関係があることが立証された。イエメン政府が、米国の捜査官に貴重な文書を提供し、米国内で証拠分析を行うことを認め、容疑者との接触も容易にしたことが、こうした成果につながった。
イエメン政府は2001年に、複数のテロ容疑者を逮捕した。また、イエメン国内の主要なアルカイダ拠点を壊滅することを約束した。治安部隊が圧力を強化したため、一部テロリストは移動を余儀なくされた。イエメンは、それまで揺るやかであった国境警備を強化し、ビザ手続を厳格にし、テロとの関わりが疑われる人物のアフガニスタンへの入国を阻止した。当局は、海外から帰国する旅行者を厳しく監視し、イエメンに不法滞在している外国人やテロ活動に関与した疑いのある外国人の取り締まりを行った。教育面では、これまで過激派を送り出すこともあった独立運営の私的な宗教学校を、国の教育制度のひとつとして位置付けた。また外国人留学生の資格要件を厳格にした。イエメン政府は、アラブ系やイスラム系外国人留学生多数に出国するよう求めた。
イエメンには、いくつかのテロ組織が依然として存在した。ハマスとパレスチナ・イスラム聖戦は、合法的にイエメンに事務所を維持してきた。その他の国際テロ組織で、メンバーがイエメン国内で非合法活動に従事している組織には、アルカイダ、エジプト・イスラム聖戦、アルガマア・アルイスラミア、リビアの抵抗組織、そしてアルジェリアの武装イスラム・グループなどがある。地元のテロ組織である「アデン・イスラム軍」も国内での活動を続けた。


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