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*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。質疑応答部分の質問は、日本語の発言は、その英語通訳を、英語の発言はその英語を日本語に翻訳しています。

J・トーマス・シーファー大使の日本記者クラブにおける講演と質疑応答

2006年10月27日

 どうもありがとうございます。本日ここで皆様にお話をさせていただくことを大変うれしく思います。特に、日本記者クラブの皆さまが、私のわがままをお許しくださったことに感謝しております。本当は、先週の水曜日にここでお話をさせていただく予定でしたが、ご存じのように国務長官の日本到着が重なったため時間が取れず、講演をすることができませんでした。本日改めてその機会を作っていただいたことに、大変感謝しております。また、本日は、おいしい米国産牛肉をごちそうになったことにもお礼を申し上げたいと思います。当然米国産牛肉だったと思っているのですが・・・大変おいしい牛肉でした。ただ、米国産牛肉の輸入が再開されてから、私はどこへ行っても米国産牛肉をごちそうになっているようで、輸入解禁以来、私のコレステロール値は大幅に上昇しているのではないでしょうか。しかし、それでも私は、大好きな牛肉を食べるのをやめられそうにありません。

 1990年代半ばに、日本の著名なジャーナリスト船橋洋一氏が「同盟漂流」という本を書き、大変評判になりました。この本のテーマは、一連の出来事によって日米同盟は焦点を失った、ということでした。船橋氏は、日米同盟は、再活性化されない限り、21世紀にはその意味を失う、と主張しました。

 しかし10年の間に事情は大きく変わりました。今日、日米同盟に関する本が書かれるとしたら、著者が選ぶ題名は、「同盟漂流」ではなく「同盟変革」となる可能性の方がはるかに高いと思います。過去5年間余りで、日米関係は著しく変化しました。50年以上にわたって太平洋地域の平和の基盤となってきたこの同盟関係を近代化し強化するために、日本と米国は、ともに多大な時間と努力を費やしてきました。過去数週間、数カ月間の朝鮮半島危機に対する日米両国の対応により、こうした努力の重要性と適切性を皆が痛感しています。本日は、これまでの日米関係について、また今後の日米関係の方向性について、私の考えをお話ししたいと思います。

 小泉前首相とブッシュ大統領の2人ほど日米関係の強化に寄与した人たちはほかにいません。この2人が在職中に築いた個人的な友情について書かれたものはたくさんあります。そして、それは真実です。この2人は、本当に気が合い、それは、ブッシュ大統領が小泉首相を、米国大衆文化の真の偶像の1人であるエルビス・プレスリーの邸宅グレースランドに案内したときに、誰の目にも明らかでした。しかし、この2人の間には、個人的な友情だけではなく、それをはるかに超えるものがありました。 2人とも、世界が変化しつつあり、日本と米国は新しい国際秩序の将来に極めて大きな役割を果たすようになる、というビジョンを共有していました。2人とも、アジアにおいては、米国の安全保障も日本の安全保障も、この2カ国間の強力な同盟を出発点としている、ということを理解していました。やがて彼らは、自らがつくり上げた個人的な関係を、2人が大切にするこの同盟で制度として確立するため、それぞれリスクを冒しました。昨年、小泉首相が京都で語ったように、米国と日本の関係が親密すぎるということはありません。

 小泉首相は、その日米関係に大きな足跡を残しました。それは、彼が、米国の大衆文化だけではなく、ほかのさまざまな事柄も広く理解していたからです。9.11の悲劇が起きたとき、彼は、米国民が体験したトラウマを理解しました。彼には、私たちにとって世界が永久に変わってしまったことが分かっていました。テロリズムが米国にあのような衝撃を与えることができたのであれば、将来世界各地でテロが発生しないようにするためには、世界各地でテロに対処しなければならない、ということを認識していました。小泉首相は、日本から支援を提供し、ブッシュ大統領と米国民は、これに深く感謝しました。

 小泉首相は、テロリズムは私たちの命取りにもなりかねず、米国だけの問題ではないことを理解していました。その後、バリ島、マドリード、ロンドン、サウジアラビア、モロッコ、ムンバイ、ベスラン、そしてモスクワでの事件で学んだように、理性を失った少数の人々が、自らの政治的な計画を推し進めるためには罪のない人々を殺害する権利があると信じるとき、ひとつの国だけではなく、文明自体が攻撃されることになります。だからこそ、日本はアフガニスタンとイラクで支援を提供したのであり、日米関係に新たな1章が加わったのです。

 小泉首相もブッシュ大統領も、健全な日米同盟のためには、国民の支持が不可欠であることを理解していました。小泉首相がブッシュ大統領に、沖縄に配備されている米軍の規模を見直すよう要請したとき、大統領は、この要請が真摯(しんし)なものであることを理解していました。その結果、米国は、沖縄に配備されている海兵隊の非常に大きな部分に相当する、1万7000人の海兵隊員とその家族をグアムに移転することで、日本政府と合意に達しました。彼らは、住宅などの収容施設が建設され次第、グアムに移されます。在日米軍と地元市民の摩擦の原因となってきた普天間の海兵隊基地は、キャンプ・シュワブに代替施設が建設され次第、沖縄に返還されます。その他の日本各地でも、地元社会への影響を軽減し、日米同盟の抑止力を強化するために、新しい米軍施設を建設し、古い施設を閉鎖していきます。これらは、日米同盟を長期的に存続させるために双方が取った大胆な措置です。非常に厳しく、難しい交渉の期間を通じて、私たちは、極めて戦略的な概念にかかわっていたことを忘れないように努めました。最終的には、地元社会、地域、国家、そして世界の利益の間でバランスを保った合意に達することができました。もちろん、私たちの仕事が終わったわけではありません。合意が実施されるまでは米軍再編は完了しませんが、再編が完了したときには、21世紀のいかなる非常事態にも対処する準備が十分に整った同盟が実現されます。今回の交渉で得た素晴らしい副産物のひとつは、日米が相互理解をはるかに深めることができた、ということです。50年以上存在してきた同盟についてこのようなことを言うと、奇妙に聞こえるかもしれませんが、私は、それが真実だと思います。私たちは、過去あるいは現在だけでなく未来に焦点を当てることによって、共通の戦略目標について合意することができました。危険な環境でいかに協調して作戦行動を取るかを話し合いました。北朝鮮のミサイル発射や核実験への対応に見られたような日米の協力を予想しました。

 こうした調整と協力体制を、1998年の北朝鮮のミサイル発射実験後の状況と比べてみてください。当時は、何が起きたのかという状況の判断や、それに対する対応が、日米両政府で異なる時期がありました。今回は、朝鮮半島の危機で日米同盟が緊張することはなく、むしろ同盟を強化しました。日米が、より多くを共有し、より協調したため、そしてより多くのことを研究し予測したため、非常に深刻な状況を、うまくいけば平和的に解決する結果になる国際社会の反応を呼び起こすために、より多く貢献することができました。

 これには、私たちが常に忘れてはならない重要な教訓が含まれています。日米同盟は、外交をなおざりにして軍事的解決を奨励するものである、との批判が時々聞かれます。しかし、実際はその逆です。日米同盟が強固で、双方がそれぞれ相手を信頼できると考えているときには、外交の選択肢が増えます。その例をお話ししたいと思います。

 安倍首相が、日本と近隣諸国の関係改善を促進するために中国と韓国を訪問したとき、米国はその努力を称賛しました。誰に言われるまでもなく、日本が引き続き米国との同盟を信頼していることを確信していました。安倍首相が、米国をなおざりにして他の諸国に手を差し伸べているのではなく、私たちすべての利益のために問題を取り除こうとしている、ということを理解していました。

 同様に、米国も中国との関係を改善してきていますが、対中関係の改善は、日本との関係を犠牲にして得たものではありません。米国民も日本人も中国人も、皆、米国の対アジア関係は強力な日米同盟を出発点としていることを理解しています。これは動かぬ事実であり、誰もが、自己の利益のためにこの動かぬ事実を受け入れています。

 別の言い方をすれば、米国と日本は、ここしばらくの間、自分の努力をし、すでに大きな成果を手に入れようとしているのです。その例として、7月の北朝鮮によるミサイル発射後の展開を挙げることができます。歴史上初めて、日本が率先して、国際平和に対する深刻な脅威に対処する国連決議を提案しました。日本は、中国も含めすべての安全保障理事国の支持を得ることに成功しました。もちろん米国も支援しましたが、重要なのは、日本が主導権を握ることによって新境地を開いたということであり、それは日本と米国にとって、また国際社会全体にとって好ましいことでした。

 数週間前に北朝鮮が核爆発実験を行った後、米国と日本は、すべての安全保障理事会理事国および国際社会全体の支持を得るべく協力をしました。安倍首相がすでに中国および韓国との関係改善の構想に着手していたことによって、厳しい制裁措置決議を可決させる作業が、より容易になりました。この決議によって、北朝鮮が、現在進んでいる行き詰まりに向かう道から、より生産的な道へと方向転換をすることが望まれます。米国と日本が、このように緊密に協力をしていなければ、どれだけ事態が困難になっていたかを考えてみてください。繰り返しますが、強力な同盟は、私たちの外交の選択肢を減らすのではなく、むしろ増やす効果があります。

 その点において、ここで、国連安全保障理事会決議1718で何ができて、何ができないと米国が考えているかをお話ししておいた方がいいかもしれません。第一に、これは封鎖ではありません。何らかの理由で、この決議の採択は、キューバ・ミサイル危機のような制裁隔離、禁輸措置、あるいは封鎖と同じものと考えられたようでしたが、それは事実ではありません。この決議は、すべての加盟国が、ミサイル、ミサイル技術、核兵器、もしくは核技術に加え、ぜいたく品のような禁輸リスト品目の移動に関して、北朝鮮に対する制裁措置を取ることを義務付けるものである、と私たちは考えています。米国もほかの諸国も、大量破壊兵器がこれ以上北朝鮮から、あるいは北朝鮮へ拡散することを望んでいません。この決議を実施するためには、各国が、それぞれの法律の範囲内で、また国際社会の検査体制と協力して、措置を講じるべきです。すなわち、米国は、日本がすでに取ったような、北朝鮮のすべての船舶の入港を禁止する措置を称賛します。国家がこうした措置を取れば、その国は、入港する北朝鮮船を検査する必要がなくなります。

 同様に、私たちは、すべての国家が、北朝鮮の組織とのあらゆる取引に関する情報を今後も共有することを望んでいます。誰も、この難局に当たり、緊張をエスカレートさせたいとは思っていませんが、北朝鮮の行為を国際社会が受け入れるという誤った印象を北朝鮮に与えるべきではありません。

 今後数カ月の間に、米国は、北朝鮮による核兵器の開発をさらに難しくする、国際法に沿った措置を導入すべく、日本をはじめとする諸国と協力していきます。この危機が外交的に、また外交手段を通じて解決されることを望んでおり、国連制裁措置の実施が決定的な役割を果たし得ると認識しています。

  この機会に、もうひとつ別の点についてコメントをさせていただきます。この危機の最中に、日本も核兵器を入手する必要があるかもしれないと提案する意見が出始めています。

 冷戦の真っ只中にあったとき、シャルル・ドゴールが、フランスについて、今日日本で一部の人々が提案するような主張をしました。それは、主として、米国がパリあるいは東京を守るために、米国の都市を犠牲にすることを期待することはできない、という主張です。私に言えることは、歴史を見れば、ドゴールが間違っていたことは明らかだ、ということです。私たちは、ヨーロッパとアジアでソ連を威圧しました。それは、ソ連が、ヨーロッパあるいはアジアの国の首都を攻撃すれば、米国による破壊的、壊滅的な報復を受けることを知っていたからです。ソ連がなくなった以外には、状況は全く変わっていません。しかし米国は、今も、ほかの国々に対する条約上の義務を果たす用意があります。それは、過去の体験から、米国の安全保障が、最終的には他国の安全保障に依存していることが分かっているからです。また、ソ連に対する抑止力の面で、フランスの核兵器が果たした役割は、たとえあったとしてもごくわずかであったことも申し添えておきます。ソ連を食い止めたのは、米国の報復の効力でした。日本国民は、今後も、日本を守るという米国の約束を信頼することができます。50年以上にわたり、米国の大統領は、党派を問わず、米国の安全保障は日本の安全保障と直接結び付いている、と述べてきました。そしてそれは、他の諸国がどのような行動を取ろうとも、変わることのない見解であり約束です。

 本日お話ししてきたことの多くは、私たちの過去の行動に関連しています。日米同盟を強化する新しい方法を見出すことは、この同盟を大切に思う人々の責務であり、私は同盟の強化が可能であると考えています。

 最近のいくつかの出来事により、情報を共有することがいかに重要であるかが再び実証されました。敵について知れば知るほど、日米相互のニーズを満たす政策を形成しやすくなります。情報はぜいたく品ではありません。現代の国政・外交術に不可欠な要素です。私たちは、情報の共有が確実に実行されるように協力しなければなりません。改善する必要のあることのひとつは、機密情報の取り扱いです。情報収集のための情報源や手段を明らかにすれば、敵に軌道修正の機会を与えることになり、善人が勝つことが難しくなります。このシナリオでは誰も勝利することができません。私たちは皆、危機的な出来事に断固として対応する能力を損なう有害な漏えいを防ぐために、さらなる措置を取らなければなりません。

 また、最近の出来事により、日米が今後作戦行動の面でどのように協力していくかということに関する難しい質問に答えを出さなければならないことが明白になりました。7月の北朝鮮によるミサイル発射準備とその遂行ほど、ミサイル防衛の賢明さを明確に示したものは、かつてありませんでした。今度は、実践面で取り組まなければならないことがあります。敵がミサイルを発射したとして、日本の艦艇がそのミサイルを撃ち落とす能力を持っていたとしたらどうでしょうか。ミサイルが日本に向けられていたことが明らかになるまで待たなければならないのでしょうか。それとも、日本の領空に向けて、または領空上に発射されたミサイルは、すべて日本にとって脅威であるとの考え方に基づいて、ミサイルを撃ち落とすことができるのでしょうか。これは解決すべき重要な問題であり、答えを必要とする、日本独自の問題です。それは、米国には日本を防衛する条約上の義務がありますが、日本には米国を防衛する条約義務はないからです。言葉を変えて言えば、米国には、そのミサイルの標的が日本であれ米国であれ撃ち落とす義務がありますが、日本は必ずしも米国に対して同様の義務を負っていません。ミサイル防衛に関する決断は数分間で下されなければならないことを考慮すると、いざというときには、決断を下す十分な時間がありませんから、この問題に対する答えは、将来に持ち越さず今出しておくことが望まれます。この答えは、日米同盟の役割と将来にとって絶対に不可欠なものです。

  また、両国の政府および米軍と自衛隊が確実に相互運用性を持つようにするために、共同訓練をもっと頻繁に実施すべきです。米国人と日本人が定期的に席を並べることによって、米軍と自衛隊それぞれ独自の特徴を学ぶことができるだけでなく、お互いのことを理解することができるため、危機が発生したときに役立ちます。最近の状況が非常に好ましいものであることの理由のひとつは、最近日米両国が協働するケースが非常に増えているためである、と私は確信しています。今後もこれを継続し拡大していく必要があります。親しさからは、侮りではなく信頼が生まれます。

 再度強調させていただきますが、米国は、同盟の強化は、外交の選択肢を排除するのではなく、むしろ増やす、と信じています。私たちは、お互いが同等である同盟、お互いを信頼できることがわかっているので、より大きなリスクを冒すことのできる同盟を望んでいます。より強固な同盟を構築することにより、日米それぞれにとって、国際社会から孤立して単独で仮想敵国を相手にしなくてすむ、という安心感が高まります。

 最後に、米国と日本の、より深くより強固な関係は、安全保障面にとどまらないということを申し上げておきます。日米両国の経済は、合わせて全世界の国内総生産の40%に相当します。この両国の経済をさらに統合すれば、両国とも新たな成長の分野を見つけることができます。米国、カナダおよびメキシコが北米自由貿易協定を結ぶ前の国内総生産の合計は、恒常ドルで8.5兆ドルでした。2005年には、この数字は12.5兆ドル近くになっていました。すなわち、この3カ国の実質国内総生産の合計が50%近く増加したということです。これは、各国が経済的に個別の道を歩んでいたならば実現しなかったことです。日本と米国の技術革新力と創造力を統合して活用したなら、どのようなことが期待できるか、想像してみてください。これは、今後何十年間にもわたって新しい雇用と繁栄を創出することのできる組み合わせです。

 より深くより強固な同盟関係の構築について、これほど見通しが明るかった時期はありません。より深くより強固な友好関係の構築について、これほど見通しが明るかった時期はありません。このチャンスをとらえることができるかどうかは、私たち次第です。私たちがそれを実行すれば、今日ここに至るために大きく貢献した人たちを私たちが尊敬し称賛するように、今後何世代にもわたって私たちが称賛されることになるでしょう。

 ケネディ大統領は、フランスの老将軍が、80代になってから、庭師にオリーブの木を植えるように言った話を好んでしました。庭師は、オリーブの木を植えても50年は実がならない、と言って反対しました。老将軍はただほほ笑んでこう言いました。「時間を無駄にしてはいられない。今日の午後すぐに植えなさい」

 日米の同盟と友好関係においても、まだ植えるべき木があり、無駄にする時間はありません。今日の午後から植え始めなければならないのです。ありがとうございました。

質疑応答

 会場の皆さんを代表して、いくつか質問をさせていただきます。お話の中で、シーファー大使は、日米同盟について率直に語られ、多くの具体的な点についても言及されました。まず、示唆に富んだお話に対して、深くお礼を申し上げます。それでは、最初の質問をさせていただきます。われわれの関心は北朝鮮情勢にありますが、北朝鮮に対する米国の政策について質問があります。共和党のブッシュ政権になってからの米国の北朝鮮政策は失敗したといわれており、これに対し、共和党は「違う。クリントン政権の北朝鮮政策が間違っていたのだ」と反論しているようです。クリントン時代には、米国と北朝鮮の間に対話チャンネルが開かれ、マドレーン・オルブライト氏が国務長官時代に平壌を訪問しましたが、北朝鮮はひそかにウラン濃縮の研究を進めてきました。ただ、今回核実験が行われ、それはプルトニウムの核実験である、といわれています。少なくともクリントン時代には、北朝鮮のプルトニウム開発は凍結されていましたが、今回プルトニウム爆弾が爆発し、これはブッシュ政権の北朝鮮政策の失敗であることを意味するともいわれています。このような主張に対して、どのようにお答えになりますか。

シーファー大使 私は、北朝鮮が核実験を行ったのは誰の責任であるかという議論は、あまり生産的ではないと考えています。北朝鮮の核実験の責任は北朝鮮にある、というのが本当のところです。そして、北朝鮮への対応において、まったく別の結果をもたらすと思われる手段を、まだ誰も見つけていません。また、1990年代初めにクリントン政権が北朝鮮との合意に達していたことは事実ですが、北朝鮮がその合意に違反したこと、そしてその合意に至ったとほぼ同時に違反していたことも事実です。成果をもたらさない合意には意味がありませんし、米国はムチばかりでアメを十分に使っていないとの批判がある一方で、韓国はアメばかり使ってムチが足りないとの批判もあります。この2つの立場を見てみると、いずれも、北朝鮮にとって核兵器が利益にならないということを北朝鮮に認識させることができずにいる、というのが現実です。

 しかし、米国がこの問題に対して地域的な対応を取ることを重視してきたのは、そのためだと思います。北朝鮮を合意に従わせることが、日本、中国、米国、ロシア、そして韓国など皆の利益となる、と信じているからです。そして、こうしたアプローチを取らなければ、そして私たちが、北朝鮮が、このグループを分裂させることに成功すれば、問題が継続するだけだと考えています。この危機の責任は北朝鮮にあり、北朝鮮がこの危機を解消することができるという、それだけのことです。北朝鮮には、自らの行動を見直し、他国の行動ではなく自らの行動によって、国際社会からの孤立をますます深めていることを認識するよう求めます。

 今挙げた5カ国は皆、北朝鮮が国際社会の主流に戻ることを歓迎すると思いますが、そのためには北朝鮮は、現在の核兵器開発路線の放棄に同意しなければなりません。北朝鮮が核兵器開発に固執するならば、国際社会からの孤立が続くことになります。核開発の放棄がどのような成果をもたらすかを示す事例として、リビアの例を挙げたいと思います。リビアは、国際社会から孤立していました。行き詰まった状況にあったにもかかわらず、生物兵器、化学兵器、核兵器といった大量破壊兵器の開発に従事していました。そんなことをしていても望むような成果を得ていないと判断したとき、リビアはこれらの計画を放棄しました。今では国際社会が、国際思潮の主流に戻ってきたリビアを歓迎しています。これは良い結果をもたらした例であり、北朝鮮が交渉のテーブルに着き、自ら入り込んだ窮地から脱出するための交渉をすれば、これが再現する可能性があります。

 それでは、もうひとつ北朝鮮について質問をさせていただけますでしょうか。北朝鮮に対する日本と米国の政策を見てみると、この2カ国の優先事項に多少の違いがあるようです。米国にとって、最大の優先事項は核の拡散防止であり、日本にとっては北朝鮮から何であれ核を取り除くことだからです。従って、日本と米国では優先順位に多少の違いがあるようで、その結果として、米国の政策は日本国民にとって多少理解しにくいものとなっています。大使は、地域的なアプローチ、いわゆる6カ国協議のアプローチを要請されましたが、一方で、なぜ米国は北朝鮮と1対1の2国間協議は望まないと強く主張しているのでしょうか。米国側が拒否する理由は何なのでしょうか。北朝鮮は常に安全保障に関して米国との2国間交渉を望んでいるのだから、米国は北朝鮮からのそうした要請に応え2国間協議を行うべきであるとの主張もあります。今後の米国の政策はどうなのでしょうか。今後米国がこの方向に進むとお考えになりますか。

シーファー大使 米国は喜んで北朝鮮と話し合いたいと思っており、これまでにもさまざまな非公式ルートを通じて、相互にメッセージをやりとりしてきました。しかし、絶対に避けなければならないのは、北朝鮮が、米国と日本、米国と中国、あるいは米国と韓国やロシアを分裂させることです。北朝鮮が2国間交渉を望む理由はそこにあります。何かを達成するためではなく、団結した国際社会を分裂させようとする試みなのです。しかし、この試みは成功しないでしょう。なぜなら、繰り返しますが、今直面している問題は米国が原因ではないからです。米国は、喜んで北朝鮮と交渉をすると言ってきました。北朝鮮はまず6カ国協議に復帰し、その時点で米国と2国間交渉をしたいというのであれば、喜んで応じます。しかし米国は、その対話の内容を友好国・同盟国に報告することのできる状況でいたいと思っています。北朝鮮が、こうした交渉を利用して、米国が日本に見切りをつけようとしている、あるいは友好国・同盟国を裏切ろうとしているかのような印象を与えるような事態にはしたくありません。米国は、そうはさせません。

 大使は、秘密情報を守ることについての懸念を表明されました。日本の関心は、北朝鮮が2回目の核実験をするのかしないのか、実施するとすれば、いつなのかということですが、大使がご存じの秘密情報に触れない範囲で、お話ししていただけますでしょうか。

シーファー大使 北朝鮮が再び核実験を行うかどうか、誰にも分からないと思います。実際に彼らが核実験を行うとしたら、すぐ直前までその事実を知ることはないのではないかと思います。この種のことはかなりの部分が地下で行われ、追跡することが非常に難しいからです。しかし、2回目の実験を行うことを考えているという北朝鮮の言葉を信じなければならないと思います。これも、北朝鮮が取る必要のない挑発的な行動です。しかし、私たちには、この決断を阻止する力はありません。北朝鮮が実行することを選ぶならば、彼らはその結果も受け入れなければなりません。私たちは北朝鮮に、実行しないよう要請しました。6カ国協議に復帰し協議に加わるよう要請しました。北朝鮮が協議に復帰するならば、2国間で、あるいは多国間で、これらの課題について喜んで北朝鮮と話し合います。従って、北朝鮮が望むならば、北朝鮮がこの危機を解決し、この危機を鎮静化するのを望むならば、そのための機会と討論の場は十分にあります。北朝鮮がこれを活用することを望んでいます。

 私からの最後の質問です。NPT、核拡散防止条約に関する米国の姿勢について質問があります。 日本が核を保有するのではないかといわれていますが、インドとパキスタンは核実験を行いました。そのインドに対して、国際社会は制裁を科しましたが、同時に米国は、インドと核開発協力協定を結んでおり、その枠組み内で日本にも協力を要請しています。そこで、なぜインドは核実験を行ってもよいのに、北朝鮮はいけないのでしょうか。国際社会は、この2重基準に疑問を呈しており、これが米国の求めるNPT制度の穴になり得ると考えています。このような主張にどのようにお答えになりますか。

シーファー大使 インドは1974年に核実験を行いました。そして米国はこれに対して非常に否定的な反応を示し、その後32年間にわたって、インドはこの決断の結果を甘受してきました。それに続いてパキスタンも核実験を行い、やはり30数年間にわたってその結果を受け入れています。米国は、インドとパキスタンが核兵器を持たない方がいいと思っており、核兵器の拡散を食い止めたいと思っています。米国は、インドと協定を結び、あるいは結ぼうとしていますが、この協定は、インドの核開発計画の核兵器に関連する部分を縮小する、重視しないようにし、民生部分に重点を置くものになることを期待しています。なぜなら、インドの将来のエネルギー需要を満たすことができるのは、おそらく原子力エネルギーであると認識しているからです。しかし、インドと北朝鮮を同等に語ることは、私には多少無理があるように思えます。インドは世界最大の民主主義国家であり、概して、拡散の分野で責任ある行動を取ってきたと思います。米国は、北朝鮮に核を保有してほしくありません。インドのために弁解をするわけではありませんが、誰も金正日を選挙で選んだわけではなく、彼が30数年間にわたり、自由で開かれた民主主義社会で活動してこなかったのは確かです。そしてそれは、国際舞台において、インドの進路とは全く違うものだと思います。今おっしゃった主張は理解できますが、それは、北朝鮮に関して何かをしなければならないという考えを損なうものだと思います。なぜなら、北朝鮮は地域の近隣諸国にとって、また米国にとって脅威であり、米国はこの脅威を非常に深刻に受け止めており、この地域のすべての国がかなり深刻に受け止めていると思うからです。

 これはおそらく、米国の核拡散防止政策の2重基準ともいえる点に関する先の質問の続きとなりますが、ブッシュ政権が包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准しようとしない理由をもう一度ご説明いただけますか。なぜ米国は、北朝鮮が再び核実験を行わないことを強く求める一方で、自らが核実験を行う権利を留保すること望むのですか。最近のABCニュースによると、北朝鮮の金柱寛外務次官が「米国は何百回も核実験を行っている。彼らにわれわれを非難することができるのか」と述べていますが、このコメントにどのようにお応えになりますか。また、最後に…。

シーファー大使 米国はもう、何年になるか私は思い出せませんが、何年も核実験を行っていません。確かに米国は、大量の核兵器を保有しており、将来実験を行う権利を留保したいと考えていますが、その権利を行使してはいません。なぜなら、米国は、核抑止力が、われわれが世界各地に持つ同盟構造の重要な基盤だと信じているからです。そして、ここ日本で、核抑止力が日本の現状にとっていかに重要であるかが、再び証明されていると思います。もし私が今日ここで、米国が突然核兵器をすべて放棄したと発表したら、北朝鮮がこのような実験を行っている中で、日本の国民はどのように思われるのでしょうか。

 日本シリーズ優勝チームの監督で、大使と同郷のテキサス出身のトレイ・ヒルマン氏に何かメッセージをいただけますか。

シーファー大使 はい。おめでとうございます。日本シリーズでトレイが成功したのは素晴らしいことだと思います。これで、テキサス・レンジャーズのOBが、2年続けて日本シリーズで優勝したことになりますから、これには明らかに何か共通の理由があります。日本シリーズで勝ちたかったら、まずテキサス・レンジャーズに入りなさいということでしょうか。

 レンジャーズから核に話を戻したいと思います。日米の国防関係では、いわゆる非核3原則が実施されており、米国は核兵器を持ち込んではいけないことになっています。今から何年も前に、一種の「非核2.5原則」を導入することが話し合われました。それは、日本は核兵器を保有または製造しないが、米国が自国の軍事設備に、また自国の施設に核兵器を持ち込むことを許可するというものでした。時には緊急に必要になるかもしれないという意味で、このようなことは、今後の政策変更に向けて話し合われるべきことであるとお考えになりますか。それとも、単に公に知られていないだけで、いずれにしても米国は核兵器を持ち込んでいるのではないかという疑いが常にあり、それが公になった場合には、そうした疑いが解消すると同時に、米国はいかなる不測の事態に対しても持てる力をすべて投入して対応できることを示すことができるから、現状が維持されるべきであるとお考えになりますか。

シーファー大使 米国の方針としては、理由は明白だと思いますが、米国がどこに核兵器を保有しているかについて述べることはないと思います。しかし米国は、日本の非核3原則についても非常によく理解しており、その原則は、日本における米国の外交政策目標と相いれないものではなく、これらの非核3原則を変えることは、米国の見地からは、長い間このガイドラインの下での活動が可能だったこともあり、今それを変える必要性は感じていません。

 大使は、日本海、あるいは韓国のいう東海にいる日本の船舶が、頭上を北朝鮮のミサイルが飛んで行くのを見た場合にどうするかという米国側の質問に対して、日本側が回答していない、と初めて公式に述べられました。日米の防衛ミサイル、ミサイル防衛に関する協力が、この質問に対する回答を待たずに始まったのは、なぜでしょうか。

シーファー大使 ミサイル防衛はすでに始まっています。

 しかし、なぜ、その質問に対する回答を待たずに始まったのでしょうか。その回答なしに、いかにしてミサイル防衛を始めることができたのですか。

シーファー大使 第1に、両国共に、ミサイル防衛が自国の将来の防衛にとって重要であるという点で意見が一致していると思います。この種の質問は、今日の技術があればこそ出てくるものです。以前は、危機が発生した時点で、その結果として何が起こるかを知るために十分な時間があったため、この種の質問に答える必要はありませんでした。しかし、日本がミサイル防衛に参加すれば、米国だけのミサイル防衛システムではなくなるため、この種の技術的な質問が出てくるのであり、私たちは、この点について話し合いたいと考えており、また日本の駆逐艦にミサイルを撃ち落とす用意があるのかないのか、あるとすればどのような状況でか、という質問に対する答えを得たいと思っています。従って、それが将来私たちの取り組むことになる基本的な問題であり、答えを出すことができることを願っています。

 (聞き取り不能)

シーファー大使 いいえ、その質問が明らかになってきたのは最近のことなので、米国はまだ回答を求めていません。

 シーファー大使、国連決議1718を実際にどのように実施するかということに関する米国と日本の交渉の現状について質問があります。この協議は、先週の水曜日、ライス長官が東京を訪問されていた間に始まったものと思います。その協議の現状を教えてください。いつ結論が出るとお考えになりますか。また、不審船の検査に関する限り、実際に現場での活動、いえ、実際に海上での活動が開始されるのはいつになるとお考えになりますか。ありがとうございます。

シーファー大使 実際には、その協議は、ライス長官がここに到着する前から始まっていたと思いますが、長官は、米国が期待する制裁体制をより明確に提示することができたと思います。そして、彼女が、まずあらゆる人々に伝えたかったのは、これは海上封鎖ではないということでした。 米国は、北朝鮮に対して海上封鎖を実施すると言っているのではありません。そして、日本の政府関係者は、そのことに多少安心されたと思います。ほかにも長官は、この決議が、今回の危機への対応としてニューヨークで可決されたものであると述べました。そしてこの決議を実施するために行動する権限が各国に与えられています。私たちは、この状況ではどうするか、あの状況ではどうするか、という基本的な問題を処理していかなければなりませんでした。制裁措置として、日本がしたように、北朝鮮の船舶に対して基本的に港湾を閉鎖して対応することもできます。これは明確でわかりやすい対応です。一方、設備を設置することもできます。

 私たちには、メガポート計画と海上コンテナ安全対策という2つの計画があります。日本はその一方に参加しており、もう一方についても交渉中です。コンテナ安全対策の方が、私には説明しやすいものです。これは、公海上を航行する船の貨物コンテナに何らかの密輸品が入っていないか、検査官が調べるものです。このようなコンテナが北朝鮮から輸送されるのを見つけたら、これを検査してほしいというわけです。密輸品を探している人間が、検査に携わっている限りは、コンテナを検査するのが日本であろうと、香港であろうと、あるいは世界のどこであろうと、問題ではありません。

 公海上での制裁措置の実施に関して話し合われていることは、日本も発足当時から参加している、拡散に対する安全保障イニシアチブで実行してきたことに似ています。これは、基本的には情報を共有することによって機能しています。米国が日本やオーストラリアと共同で実施した訓練では、これは2〜3年前にサンゴ海で行われたものだと思いますが、日本がEP-3を飛ばしたのではなかったかと思います。日本がどのような形で寄与したかを正確には覚えていませんが、日本はその訓練に参加しました。私たちが話し合っているのはこういったこと、すなわち、情報を共有するという多面的な方法を持つことと、こうした制裁措置が実施されていることを確認するということです。そして、各国はさまざまな方法でこれに参加することができます。

 最終的に何らかの、意味のある形で設置された制裁体制に日本が参加することを米国は確信していますが、現時点では、それがどういう形態になるか正確にはわかりません。そして、米国が行おうとしているのは、制裁に参加する人々をまとめ、計画を進めるにあたり彼らが回答を必要とするすべての問題に対処していくことだと思います。しかしこれは、実行してほしいことを10項目提示して、そのうちひとつでも実行できれば満足する、というような、チェックボックスに印をつけるようなものではありません。私たちの目指しているのは、多国的なアプローチを取り、米国だけでなく国際社会全体にこの決議を実施してもらうようにすることです。そして、率直に言って、これについては、かなり成果を上げていると思います。先日、香港に入った北朝鮮船が、香港当局によって検査されたことをご存じと思います。これが、望ましい展開です。つまり、誰かにこれを検査してもらい、彼らがミサイル防衛や核技術、ミサイル技術などを他国に密輸しようとしていないことを確かめてもらうということです。

 大使がスピーチの中で提起された2、3の問題についてさらに詳しく質問をさせていただきます。第1に、こちらのサムさんが、日本の駆逐艦が北朝鮮のミサイルを撃ち落とすという仮定の状況を使って示唆した問題です。日本がその質問に答えるために憲法第9条を廃止または改正することについて、米国はどのような立場を取っていますか。また、核の問題に関して、麻生外務大臣をはじめとする人たちは、日本が核兵器を保有することを提唱するわけではないが、この問題についての議論がもはやタブーとされるべきではない、と言っています。日本が核兵器を保有すべきかどうかという問題を日本が議論することについて、米国には異議があるのでしょうか。

シーファー大使 日本では、世界中のどこと比べてもひけを取らないほどうまく民主主義が実践されていますが、民主主義の一部として、言論の自由と意見の交換があります。日本国民が何について話すか、また国民同士で、もしくは日本政府と、何を議論するか、ということは、日本人が決めることです。米国は、日本人の言うことについて、何が適切か、適切でないかという意見を述べる立場にありません。従って、私は、この問題に干渉するつもりはありません。

 第9条の問題も、日本人がその問題をどうとらえているかにかかっています。しかし、米国が第9条について大きな問題があると見ているという事実は認識していません。日本人が日本の憲法を解釈して、日本にとって脅威となる可能性があるミサイルが発射されて、日本に向かっているときにどうするかという答えを出すために、第9条を改正する必要があるかどうか、私にはわかりません。しかしそれも、日本国民と日本政府が考えなければならないことです。しかし私は、第9条の改正が、日本と米国が相互の利益のためにさらに協力を拡大する上で妨げにはならないと考えています。

 金融制裁措置について質問があります。金融制裁は、北朝鮮を窮地に追い込む上でかなり効果を発揮しており、北朝鮮が核実験を実施したのはそのせいであるという意見もあります。しかし具体的には、米国はどのような金融制裁措置を北朝鮮に対して実施したのでしょうか。それによってどのような効果が生じたのかを、具体的に説明していただけますか。一方、北朝鮮は「スーパーノート(偽造紙幣)」を製造していることも知られています。北朝鮮が米ドル札を偽造することによって米国は多大な被害を被っており、また日本には拉致の問題があります。拉致問題について小泉前首相は北朝鮮に抗議し、北朝鮮から謝罪を取りつけました。米国政府も、スーパーノートが米国に与えた甚大な被害について北朝鮮が謝罪することを望んでいますか。

シーファー大使 米国は、資産凍結を行い、資産凍結を行うようマカオに要請し、凍結した北朝鮮の口座は総額およそ2400万ドルに達しました。米国は、これらの口座が、資金洗浄、人身売買、麻薬売買、偽造など違法な活動に関係していたと考えています。私たちは、現在も、米国財務省とともに記録をたどり、これらの口座を追跡調査しているところです。ご想像に難くないと思いますが、実際に違法な活動に関与していたとすると、その追跡調査はある程度困難なものとなります。しかし、これは継続的な調査です。偽造や資金洗浄や人身売買に関与していなければ、何も心配する必要はないはずです。

 いかなる政府も、その通貨を偽造している相手と交渉ができるとは思えません。どのように交渉を始めればよいのでしょうか。「今年は10億ドルから20億ドルの通貨の偽造を許可してもいい。ついでに、ヘロイン1万トンの密輸も認める。われわれは1万5000人から2万人の人身売買を行う」。これは交渉ではありません。国際社会の誰もが守ることを求められる一定の基準がなければなりません。北朝鮮が9月19日の声明で述べたように、核兵器を放棄することを真剣に願っているならば、その2400万ドルがその考えに大きく影響を及ぼすことはない、と私には思えます。しかしながら、あまり核兵器の放棄を願っていないならば、交渉のテーブルに戻ることを避けるために、どのような手段でも使うかもしれません。そうではないことを私たちは願っています。米国は、北朝鮮が交渉に復帰することを願っており、米国や近隣諸国と共に交渉の席に着き、彼らの利益となり得る合意に達するよう努力してほしいと思っています。しかし北朝鮮は、昨年9月19日の合意で、核兵器の放棄に同意すると述べましたが、その後彼らが実行したのは、ミサイルを発射し核爆発実験を行ったことだけであり、これは核兵器を放棄するという目的に向かう道とは思えません。

 すみません、拉致についても話されましたか。拉致についても質問をされましたか。十分報道されていませんが、この国連決議に含まれており、それを称賛すべきだと思うことのひとつとして、人道主義上の懸念についての言及があります。そして、この問題全体の中で、取り組まなければならないと認識していることのひとつは、日本国民の拉致の問題です。国家が自らの利益のために、13歳の子どもを自宅から誘拐することを許すような国際制度は、正しく機能しているとはいえません。それは、あってはならないことです。そして、この問題には、この総合的なプロセスの中で対処しなければなりません。

 大使が引用されたシャルル・ドゴールの言葉については改めて触れませんが、私は、彼が国家主権の熱烈な支持者だったと思います。またヨーロッパには、ほかにも核兵器を保有する大国がありました。英国です。私の質問は大量破壊兵器輸出の問題よりも、北朝鮮に関係した質問です。ブッシュ大統領とシーファー大使ご自身は、中国とロシアの役割をどのように評価されていますか。海上輸送による部品の輸出についてお話がありましたが、陸上輸送はどうなのでしょうか。その対策として中国とロシアが実行しようとしていることに満足されていますか。

シーファー大使 中国は、国境における取り締まり強化の措置を取っていると思います。またロシアもそうだと思います。従って私は、この分野では実際に、ある程度前進が見られていると思います。

 質問が2つあります。ひとつは、検査に関することです。米国は、日本または香港を援助するため、または自国のために、軍用船に北朝鮮の船舶を検査させる用意がありますか。また、2つ目の質問として、沖縄からグアムへの海兵隊の移転に関して、国会が具体的な予算を割り当てていないことを米国は懸念していますか。

シーファー大使 遮断・検査などに関する最初の質問については、私たちは現在、作業の過程にあり、それについては決定的な答えは出ていないと思いますが、これは世界中で進行中のプロセスの一環です。予算の割り当てに関しては、予算サイクルから見て時期が良くなかったと思います。合意に至ったのは、昨年度予算サイクルの終了後だったため、来年3月に国会で成立する次の予算で、この問題がある程度扱われるのではないかと思います。日本の会計年度が、米国の会計年度と異なることを覚えておくことが重要です。米国の会計年度は9月に終わりますが、日本の会計年度は3月に終わります。従って、時期の違いがあります。それでも、日本側に、私たちの合意を実行する準備ができている、と私は信じています。そして、米国は、小泉政権からも、安倍政権からも、日本は合意した内容を実行する、という保証を繰り返し得ています。

 情報の機密保持ということに触れられましたが、米国はヨーロッパ諸国およびその他の諸国と協定を結んでいますが、過去50年間、日本との間ではそのような協定がありません。こうした状況の分析についてご意見をお聞きしたいと思います。例えば、情報の漏えいに対して懲罰を科すというようなことですが、日本が米国との間に協定を結んでいないのは、それが理由であると聞いています。

シーファー大使 日本国内における機密情報の取り扱い、ということについてのご質問ですか。

 私が言っているのは、GSOMIA、すなわち軍事情報に関する一般保全協定のことですが、米国はこれを結んでいません。日本はこれを結んでいません。それが私の質問です。

シーファー大使 私たち双方が、米国と日本が、機密情報を取り扱うより良い方法を確立する努力をすることが重要です。米国内で情報の漏えいが発生し、そのため私たちが活動を続けることが難しくなっています。日本でも情報の漏えいが発生し、そのために活動がより困難になっています。ですから日米双方が、機密情報の取り扱い方法を検討する必要があると思います。政府からの情報の漏えいを減少させる必要性を話すには、ここは最適な場ではないかもしれないことを承知していますが、ここで皆が一歩下がって状況を見てみると、この部屋にいる皆さんの中にも、米国のマスコミの中にも、日米両国に、あるいは世界における日米の立場に損害を与えようと考える人は誰もいないと思います。そして、私は、政府と意見の交換ができる自由で開かれた報道、自由で開かれたマスコミを持つ一方で、情報の詳細を守る、より良い機密保持制度を持つことができると思います。一般市民のプライバシーを保護しながら、世界中から情報を収集する能力を維持する制度です。私は、日米両国共に改善の余地があり、それは日米で話し合う価値のあることだと考えています。 そして、双方が、改善につながる何らかの改革を打ち出せるという希望を持っています。

 来年初めに国連事務総長となる潘基文(パン・ギムン)氏が、金正日(キム・ジョンイル)氏と会談する準備ができている、といわれています。国連だけでなく、朝鮮半島の両国が期待しているそうした動きについて、米国はどのようにお考えですか。

シーファー大使 潘基文氏がこの危機を緩和するためにできることがあれば、何であれ米国は歓迎すると思います。先日、潘基文氏が選出されたときにジョン・ボルトンが言った言葉が、私の記憶に強く残っています。彼は、「過去50何年かの間に、2つの国民が、同じ国民が異なる道をたどったことを、これほどはっきりと示すものはない。一方の政権は国際社会から孤立し、もう一方の政権は国際社会を指導する国民を生んでいる。そして私には、われわれが世界で実行しようとしていることの正しさを裏付けるものとして、これ以上強力な証拠は考えられない」と言いました。米国は、潘基文氏が国連のトップになることを歓迎していると思います。彼は、大局的な見方をすることができ、国連の歴史における極めて重要な時期にリーダーシップを発揮することのできる、非常に優れた政治家であると思います。そして私は、金正日氏を交渉のテーブルに復帰させようとする潘氏の努力を、米国は歓迎すると確信しています。

 昨年から、米国の経済報告に関して、日本人の一部の間では、それは日本の国内問題に対する内政干渉である、という意見が出始めています。また私は、ここに非常に興味深い本を持っていますが、これには「年次改革要望」についての記述があります。米国が取り上げる問題は、内政干渉であり、特に郵政民営化について述べられています。この著者によると、郵政民営化により、日本国民の貯蓄が米国に流れているということです。私が申し上げているのは、米国の行動や発言について、日本が国内問題への干渉であると感じている、という批判のことです。

シーファー大使 日本は、私たちが日本の国内問題に干渉しているとは感じていません。米国は郵政民営化を称賛しましたが、米国が郵政民営化を始めたのではありません。それは、米国の発案ではありませんでした。これは小泉前首相の考えであり、彼は首相になる何年も前から、またブッシュ大統領と会うずっと前から、この考えを持っていました。彼は、郵政民営化によって、日本はグローバル化した世界で競争力を高めることができると考えたのだと思いますが、それについては本人に聞いていただかなければならないでしょう。

 しかし、それにしても、世界のあらゆる出来事について米国は何らかの形で責任がある、という考え方には、時々いらだたしさを感じます。一方では「なぜ北朝鮮が核実験を行うことを許したのか」と言われ、他方では「なぜ国内の政治に干渉しようとするのか」と言われます。実際には、米国はそのどちらもしようとしていません。より安全で、より平和な世界に貢献しようとしているのであり、その分野で最も大きな貢献をする方法は、時に不安定になる世界を安定させる努力をし、民主主義と寛容と言論の自由と行動の自由と礼拝の自由を奨励する努力をすることである、と考えています。それは、こうした価値観は、米国の価値観ではなく、普遍的な価値観であると考えるからです。これらの価値観は、米国が考え出したものではありませんが、私たちにとって非常に役に立ってきました。また米国は、こうした価値観が日本にとってもかなり役に立ってきたと思っています。そして、これらの価値観が、世界各地の他の国民のためにも使われることを望んでいます。米国は、その分野でリーダーシップを取る意志があり、日本だけでなく世界各地で、世界の大きな部分の安全保障について負担を担う意志があります。私たちが喜んでそうしようとしているのは、これが自らの利益になると信じるからですが、同時に、国際社会のためにもなると信じているからです。そして、他の諸国がより大きな負担を引き受けたいということであれば、米国にとって非常に喜ばしいことです。私たちは皆、より平和で、より民主的な世界に向けて努力することを望んでいると思いますが、その作業は、日によって、困難なときと、容易なときがあります。

司会者 そろそろ時間になります。シーファー大使、本日は、お忙しい中を私たちのためにいらっしゃっていただき、本当にありがとうございました。どなたかの質問にありましたが、つい昨日、日本シリーズが行われ、トレイ・ヒルマン監督が日本ハム・ファイターズを勝利に導きました。ヒルマン監督は、大使が以前経営されていたテキサス・レンジャーズの出身です。これは、日米関係のさらなる促進に大きく貢献する出来事でした。大変良いニュースでした。大使がおっしゃったように、日米の2国間関係は、軍事関係だけではありません。さまざまな分野で、同時にいくつもの関係を持つことができます。良いマネージャーとして、今後、日米2国間関係をさらに緊密なものとするためにご活躍されることをお祈りします。それでは、日本の習慣に従って、大使にささやかなお礼を差し上げたいと思います。ありがとうございました。