
米国食肉協会(American Meat Institute)
2005年7月
概要
肉牛を対象とするBSEの全頭検査の有用性が盛んに議論されている。家畜の疾病監視のために牛の小集団を検査することは有益だが、すべての牛を対象にBSE検査を実施することは科学的、または実際的に意味をなさない。なぜなら、BSEの検査法では若齢牛の感染を発見することができず、米国の牛の大多数はBSEの感染を発見し得る月齢に達する何年も前に処理されるからである。
若齢牛を検査をすることで安心が確保されるように思えるが、このように費用が高く効果のない試みは、子供を対象にアルツハイマー病の検査をするようなものである。最も効果的な戦略は、検査対象を、より高齢で、よりリスクの高い牛群に絞ることである。忘れてならない最も重要なことは、牛の年齢や原産国がどこであれ、これまでにBSEの感染体が牛肉から検出されたことはないという事実である。
検査の果たす役割
対象を限定した牛のBSEサーベイランス試験は、米国農務省のBSE予防戦略の有効性を監視するために導入したファイアウオールのひとつである。米国農務省は次の条件に当てはまる牛を対象に検査を実施している。(1)神経障害の症状が見られる。(2)歩行不能状態で病気の可能性を示している。(3)BSEを発症している可能性のある月齢に達している(30カ月齢超)。
米国の牛群にBSEが存在した場合、米国のシステムは高い確立でそれを検出するであろう。米国のシステムは科学的根拠のあるアプローチである。検査結果が常に陰性を示す牛のグループを検査することは意味をなさない。
BSE検査の限界
牛がBSEを発症するのは、通常、若齢時に汚染された飼料を介して感染したことによる。米国では、そのような汚染を防止するための厳格な規制が定められており、米国農務省によると順守率はほぼ100パーセントである。
BSE感染の検出は、牛が高齢になり、感染体が脳および神経の組織に蓄積し始めるまでできない。これらの組織は牛から除去されるので、食料供給に入ることはない。
米国では、牛の大多数(80パーセント超)が30カ月齢未満で、と畜されている。
BSE感染牛を検査で特定できるのか
確実に特定できる。しかし、この検査では、臨床症状を呈する3カ月から6カ月前でないと病気を検出することができない。これらの技術的限界と、米国で処理される牛の月齢中央値のおよそ3倍もの月齢の牛にBSEが発症するという事実を合わせると、若齢牛の検査は科学的な説得力を持たないことが明らかとなる。獣医師でカナダ・米国国際BSE検証チームの一員であるウィル・ヒューストン博士は「若齢牛の(BSE)検査を推奨することは、獣医学上の医療過誤とも言えるだろう。それは人間を診る医師が不必要な検査や手続きの費用をメディケア(医療健康保険制度)に請求することとまったく変わらない」と語っている。
検査されない場合の人間のための主な安全対策
科学者や公衆衛生の専門家は、いわゆる「特定危険部位(SRM)」と呼ばれる、感染の可能性のある部位を除去することが、公衆衛生保護の観点から最も効果的な方法であることを認めている。米国においてこの作業は、連邦政府検査官の間断ない監視の下で効果的に実施されており、検査官は作業が行われている間中、加工工場に滞在する。また法律で食用として消費されるすべての牛からSRMを除去することが義務付けられている。
SRM除去は他の国々でも適用されている標準的処置か
国際獣疫事務局(OIE)の規定によると、BSE発生国はすべて、牛肉を輸出するためにはSRMを除去しなければならない。
検査費用
費用は大きな問題である。各検査につき、検査キットの費用だけでも20ドルから30ドルかかる。人件費と輸送費を含んだ場合、費用は2倍を超える可能性がある。スイス政府担当者はスイスでの費用を1頭あたり60ドルと見積もっている。米国でと畜されたすべての牛を対象に、全頭の義務付け検査を実施した場合の費用は、年間で10億ドルを超えるであろう。この費用は業界と消費者が負担することになるであろう。
検査で得られる成果
検査の実施は、連邦政府が米国内の牛群の健康状態を監視し、米国におけるBSE予防計画の成果を評価することを可能にする有益な手段である。2003年に米国農務省は、ほぼ2万1000頭の高リスクの牛を検査した。これは、OIEが勧告する頭数の40倍を超える。米国における唯一のBSE陽性例が発見されて以来、2004年6月から農務省のサーベイランス強化の一環として、12−18カ月の間に40万頭を超える牛が検査された。この拡大サーベイランス期間中に農務省は高リスクの牛を対象に月に約2万頭を検査している。
最終見解
BSEの全頭検査を行うことは、真の公共利益のために利用され得る資源の浪費である。検査では若齢牛におけるBSE感染を検出できないことから、そのような検査の実施は、実際には消費者の誤解を招くという専門家もいる。検査結果は常に陰性を示し、食品の安全性の確保をさらに確実にすることにはならない。
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