
2006年3月13日
米国大使館農務部
- 米国で食品の安全性を規制・監督する省庁はどこですか。
- 米国で残留物質の規制・監督を行う省庁はどこですか。
- 残留農薬基準は、どのようにして決められているのですか。
- 使用を制限されている農薬はありますか。
- 米国政府による農産物中の残留農薬監視プログラムにはどのようなものがありますか。
- FDA による規制監視はどのように行われていますか。
- 米国での農薬規制・監視に関して、どのように連邦政府と州政府が連携しているのですか。
- 米国政府による動物用飼料の監視プログラムにはどのようなものがありますか。
- 食品残留農薬の基準値はどのようにして設定されているのですか。
- 残留基準値および規制適用除外の情報はどこで得ることができますか。
- EPA による古い残留基準値の再評価はどのように行われていますか。
- 農薬使用量に関する情報は公開されていますか。
A 米国では、食品の衛生と安全性を確保するため、保健福祉省食品医薬品局(FDA)、農務省食品安全検査局(FSIS)および環境保護庁(EPA)の3つの政府機関が主要な役割を担っています。
この3つの政府機関は、それぞれ所管している法律に基づいて、基準の設定や検査を実施するとともに、緊密な連携 プレーにより食品の安全性を確保しています。
FDA
FDA(Food and Drug Administration)の中で食品行政を担当しているのが、食品安全・応用栄養センター(Center for Food Safety and Applied Nutrition)です。ここでは「連邦食品・医薬品・化粧品法(FFDCA)」に基づいて、食品の定義と規格基準、表示などを策定するほか、食品添加物や動物用医薬品の安全性と有効性を評価し、必要と認めたものには使用基準や残留基準を設定します。また、使用実態の継続的なモニタリングや新しい学問的なデータに基づく再検討なども行っています。
さらにFDAでは、水産食品の安全性を確保するために、1995年12月に、米国内で製造加工されるすべての水産食 品にHACCPを法制化する規則を公布し、1997年12月から施行されています。この規則は、諸外国から米国に輸出される水産食品にも適用されています。
また、2004年1月までに、果物・野菜ジュースにも安全で衛生的な加工および輸入のための手法として、HACCPの実施を義務化する規則を適用しています。
FSIS
食肉・家きん肉(加工品を含む)に関しては、FSIS(Food Safety and Inspection Service)の所管になります。FSISは連邦食肉検査法(FMIA)と食鳥肉検査法(PPIA)に基づいて、食肉・家きん肉およびそれらの加工品の定義や規格基準、 表示を策定するほか、家畜の疾病検査、農薬や動物用医薬品などの残留検査を実施しています。さらに、食肉処理工場内および加工工程における微生物汚染を防止するための、指導・監視も行っています。なお、食肉・食鳥肉の加工工場には、1998年1月からHACCPの導入が義務づけられています。
このように、食肉や家きん肉(加工品を含む)については農務省のFSIS、その他の食品についてはFDAが、それぞれ安全性を規制・監督しています。
EPA
EPA(Environmental Protection Agency)は「連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法(FIFRA)」に基づいて、農薬の登録と使用基準の設定を行っています。また、農薬の登録に際しては、「連邦食品・医薬品・化粧品法(FFDCA)」に基づき、 残留基準も定めることになっています。この2つの法律は連動して実施されるので、残留基準が抹消されると自動的 に農薬の登録も取り消されます。またEPAでは、農薬の使用状況やその他の化学物質による汚染状況もモニタリングしています。
A EPA は農薬の登録と使用基準、残留基準を設定しています。新しい農薬の登録の際には、EPA はFIFRA 法のもとに、表示されている使用法にしたがって使用した場合に、人間の健康と環境に対して不適当なリスクがないことを保証し ます。その農薬が食品や飼料に使用されると考えられるときには、登録者は食品の許容レベルの設定をEPA に申請しなくてはなりません。米国内で販売される食品・食料や動物用飼料に存在する農薬の許容レベルまたは法的な最大限レベルを設定することによって、EPA は食品安全性の確保します。FFDCA法の408条と409条に基づく許容基準の設定(または許容基準設定不要の決定)がEPA によってなされてはじめて、農薬が登録されます。408条は農場を出るまでの間の生鮮農作物・穀物に対する農薬の許容レベルの設定にかかわり、409 条は食品添加物にかかわる規定です。トマトのような生鮮農作物に存在する残留農薬がトマト・ペーストのような加工食品に濃縮されるような場合には、その農薬は食品添加物とみなされるため、409 条で規制されることになります。
使用基準はEPA によって監督されますが、EPA によって設定された食品中の残留基準はFDA が監督します。FDA は、食肉・食鳥肉・ある範囲の卵製品を除くすべての国産・輸入食品について監視を行っています(ひとつの州内から州外に出ない食品は州が監視します)。食肉製品の監視は農務省の食品安全検査局で行います。FMIA とPPIA のも とに、食品安全検査局は州間を移動する、または輸入製品などの輸出入されるすべての食肉製品を検査します。特に問題が発生した場合には、検査官は病原微生物や違法な医薬品や化学物質の残留について検査することができ ます。
生鮮野菜や果物については農産物流通局(AMS)、穀物については連邦穀物検査局(FGIS)が試料を採取して残留農 薬のデータを収集しています。その結果は必要に応じてFDA に報告されます。各州の規制担当部局も食品安全性の監視に携わっています。また、自州内で生産・販売される食品に関する独自の残留農薬規制を持っている州もあります。違反が発見されたときには、FDA はその原因を調査し、必要に応じて回収が行われます。
A 米国や日本をはじめ各国とも、残留農薬基準を設定する場合の基本的な考え方はほぼ同じです。残留基準を設定す るにあたっては、まず、農務省が実施している食品別摂取量調査(日本では国民栄養調査がこれにあたります)の結果から、国民が1人1日当たりその農薬が使用されている農産物をどのくらい摂取しているか調べます。次に、農薬の登録に際して、EPA(環境保護庁)が提出を要求している作物残留試験のデータから、農産物ごとにその農薬の最大 残留量を求めます。これは、EPAにより勧告された施用方法に基づいて(その農産物の病害虫を防除するために必要な最高濃度および最大回数、かつ散布後最短の時期に収穫することにより最大残留量を示すデータが得られるよ うに設計されています)、最悪のケースを想定した実験を行って、最高の残留濃度を調べるのです。そして、現実的には考えられないことですが、農産物ごとに最大残留量の上限まで農薬が残留しているものと仮定して、各農産物の摂取量にそれを掛けあわせ、その農薬の摂取量を試算します。この量が、ADI(1日摂取許容量)よりも少なければ、EPAは残留基準を定めます。もしも、ADIを上回る場合は、使用基準を見直すか、場合によっては残留基準の設定を却下します。
各国は、国内の試験データを科学的に評価して、独自にADIを決めますが、結果的には国際的なADIと同じになる場合もありますし、それより厳しくなることもあります。1995 年1月にWTO(世界貿易機関)が発効してからは、SPS協定(衛生および植物検疫措置の適用に関する協定)により、「関連する国際基準がある場合には、加盟国は原則としてそれに基づき措置をとる」こととされています。そのため、国民の健康などに危害をおよぼすおそれがないと科学的に判断されたときには、各国はFAO(国連食糧農業 機関)/WHO(世界保健機関)の合同食品規格委員会(CAC=CODEX委員会)の定める国際残留農薬基準を採用することになっています。ただし、食習慣などの違いにより、国際残留農薬基準を採用すると、試算されたトータル摂取量がADIを超えてしまうような場合には、国際基準より厳しい基準を定めることができるとされています。
A EPA は、使用できる農薬を登録する際に、それらの特定の病害虫および特定の環境における使用条件を登録 します。さらに、一般人が使用するには危険性が高いと思われる農薬は、現在使用されているか使用が中止されてい るかにかかわらず、「制限使用農薬」(RUP)として分類されています。使用制限農薬は、認定農薬使用者または その直接の監視下にある者のみが使用を許され、使用の記録を保管することが義務付けられています。この農 薬の制限使用に関する情報は連邦規則集(Chapter 40, Part 152.160-175)に記載されています。現在使用さ れているか、使用が中止されている使用制限農薬は、使用制限製品(RUP)レポートとして一覧になっています。 http://www.epa.gov/opprd001/rup.
Q 米国政府による農産物中の残留農薬監視プログラムにはどのようなものがありますか。
A 米国では、3 つの政府機関が農薬規制の共同責任を負っています。環境保護庁(EPA)は農薬の使用を登録 (すなわち承認)し、特定農薬の使用により食品中、食品表面の残留をもたらした場合の許容値(食品中、食品 表面への残留が許される上限値)を設定します。米国農務省(USDA)の食品安全検査局(FSIS)が責任を負う 食肉や家禽、一部の卵製品を除き、輸入食品および州際通商で出荷される国産食品における許容値の強制はFDA が担当しています。FDA は、特定商品/農薬の組み合わせの発生率/濃度データの収集も行い、そのマ ーケット・バスケット調査、1日摂取量調査を実施しています。1991 年以降、USDA の農業市場流通局(AMS) は、関係州との契約を介して、生の農産物および種々の加工食品向けの残留検査プログラムを実施しています。FSIS およびAMS は、独自に農薬残留データを報告しています。USDA のスタッフがこのデータ収集プログ ラムにおいて許容値の違反を検出した場合は、FDA に通知します。
A 米国政府による農産物・食品中の残留農薬監視プログラムのうち、規制面からの監視プログラムはFDA によ って行われています。FDA は、国産食品および輸入食品の各ロットからサンプルを抽出して残留農薬を分析し、 EPA による許容値設定に実効性をもたせています。国内サンプルは可能な限り物流システムの生産現場近く で採集されます。輸入サンプルは米国との商取引に入った時点で採集されます。この際には、生の農産物に重点が置かれ、洗わない状態で丸ごとの(皮をむかない)生の商品として分析します。また、加工食品も対象とし ています。違法な残留農薬(EPA の許容値を超えているか、当該食品/農薬の組み合わせに対して許容値が 設定されていない)が国内サンプルに発見された場合、FDA は、没収や差し止めなどさまざまな制裁措置を発動することができます。輸入製品では、違法な残留農薬が発見された場合、輸入港で出荷停止になる場合があります。違反出荷が一度発見されると、特定の荷主や栽培者、地域、国において同じ季節の以後のロットにも 同じ状況が存在すると考えられる理由がある場合は、輸入品の「検査なしの拘留」(以前は自動拘留と呼ばれた)の措置がとられる場合があります。
このプログラムでの収集サンプルの種類および数の立案においては、最近の発生状況およびFDA の残留農薬データの再審査、農薬使用に関する地域情報、当該食品の食品としての重要性、州境を越えて取引きされる国産食品および輸入食品の量に関する情報、当該農薬の化学的特性および毒性、生産量/農薬使用パターンなどを検討材料にします。
Q 米国での農薬規制・監視に関して、どのように連邦政府と州政府が連携しているのですか。
A 農薬の申請をする際には、連邦法だけでなく、州ごとに異なる法令および規制に準じて申請をしなければなり ません。一般的に、各州は、農薬に表示されている事項に違反して農薬が使用されないように、表示事項が遵守されていることを監視し、必要な場合に措置を取る際の、第一義的な法的責任を有しています。この、農薬に関して第一義的責任を有する機関は州によって異なっています。通常は州の農務省が持っていますが、州によ っては州の環境省その他の機関の場合もあります。
FDA の地域事務所は、FDA の残留農薬監視の有効性を向上させるために、多くの州の担当部局と連携してい ます。そのために、FDA と各州当局との間では、覚書または正式なパートナーシップ契約が締結されています。 このような契約は、対象範囲を拡充し、取り組みの重複を排除するにより効率的な監視の手立てとすることを目的としています。その結果、農薬の規制活動に充てられる連邦政府および州政府の労力を最大限に活用する ことを可能にしています。この契約は、データの共有、共同計画、FDA 審査のための州によるサンプル収集から、特定原産地(輸入品または国産品)の個々の商品または生産物の収集、分析、追跡するFDA/州政府によ る責任分担まで多岐にわたってカバーしています。
Q 米国政府による動物用飼料の監視プログラムにはどのようなものがありますか。
A 人が摂取する食品の監視に加えて、FDA は、国産および輸入飼料のサンプル抽出と残留農薬分析も実施して います。FDA の動物薬センター(CVM)は、試料汚染遵守プログラム(Feed Contaminants Compliance Program)のもとに監視を行っています。残留農薬を違法に含む動物用飼料は複数分野の動物(実験用動物、 ペット、野生動物など)に害を及ぼす恐れがありますが、CVM の監視は、家畜および家禽など、最終的に人の食用となるか人の食品を生産する動物の飼料に重点を置いています。
Q 食品残留農薬の基準値はどのようにして設定されているのですか。
A 農薬は食品生産において広く使用されています。農薬は、果実、野菜、穀物その他の食品の内部または表面に少量残存することがあります(残留物と呼びます)。食料供給の安全性を保証するために、米環境保護庁 (EPA)は、食品中、食品表面に残存する農薬の量を規制しています。ここでは、EPA による食品残留農薬の上限値(基準値と称する)の設定方法について簡潔に記載します。
農薬登録
「農薬」には種々の成分が含まれ、あらゆる病害虫の予防、駆除、除去あるいは減少を目的とする殺虫剤、殺菌剤、殺鼠剤、防虫剤、除草剤、抗菌剤、プール用化学薬品といった製品に使用されます。米国では農薬が市 販・使用される前に、EPA に申請された農薬を徹底的に査定して人の健康および環境に害を及ぼさないようにします。査定に合格した農薬は承認あるいは登録されて、EPA が定める人の健康および環境の保護のための要求事項に従って販売および使用が許可されることになります。
EPA による食品の安全性を保証するための基準値設定
食用作物への農薬の使用を許可する前に、EPA は、許容値または最大残留基準値(農薬で処理された食品中 または食品表面への残存が許される残留農薬の量)を設定しています。基準値は規制措置が取られる残留レベルです。すなわち、残留量がこのレベルを超えていることが判明した場合、当該商品は政府による没収などの規制措置の対象となります。
許容値の設定に際しては、EPA は、農薬が「ほぼ確実に害を及ぼすことなく」使用可能であるという安全性の書類を作成します。この書類の作成のために、EPA は以下の項目を検討します。
- 農薬および分解産物の毒性
- 農薬の使用量および使用頻度
- 市販・調理時点までの食品中、食品表面の農薬(残留物など)の残存量
このようにして設定された許容値が安全であることをEPA は保証します。許容値は、米国内で栽培された食物 をはじめ、米国に輸入される食品に対しても適用されます。
基準値の適用が除外される生産物
農薬のなかには基準値設定の要件が免除されるものがあります。EPA は、規制を免除しても安全であると判断 した場合、適用除外を許諾します。この際にも、EPA は、基準値の設定と同様に毒性、暴露データを審査します。 また、いかなる残留物も安全とされるレベル未満であることを監視取り締まりの際に保証できるように、残留農薬の検出と濃度測定のための検査方法も設定します。
Q 残留基準値および規制適用除外の情報はどこで得ることができますか。
A EPA による残留基準値の設定または規制適用除外の認可をする際にはその決定前に、国民が新規農薬の基準値について意見を述べる機会を設けています。EPA は連邦広報に事前通告を掲載し、基準値または規制適用除外の申請書の受理を公示します。これは出願通知と呼ばれ、申請人による要約が収載され、公示期間が 定められています。
パブリックコメントおよびあらゆる科学的データを審査をした後、EPA は、新たな基準値または規制適用除外に 関する決定を行い、連邦公報に公表します。この公告には、農薬がもたらすリスクに対するEPA の評価、基準 値または規制適用除外の制定を認める安全性の所見が含まれます。基準値の公表後、60日の異議申立、審理請求期間が設けられます。
基準値および規制適用除外の一覧は、連邦規則集(CFR)Chapter 40, Part 180 にまとめられています。CFR は1年に1回、7 月に改訂されます。したがって、毎年、新しい許容値または変更された基準値に関する情報は 連邦広報の通知から入手可能です。
Q EPA による古い残留基準値の再評価はどのように行われていますか。
A EPA は、食品品質保護法(FQPA)に署名調印した1996年8月3日付けで有効であった農薬、その他の成分の許容値および規制免除の一切を再評価しています。この取り組みは、現存する許容値および規制免除が FQPA の定める安全基準に適合していることを保証するためのものです。許容値および規制免除の再評価は 2006 年までに終了予定ですが、既に3 分の1 は、法の定めるところにより1999年8月までに終了していま す。
この作業において、EPA は最大リスクを有すると思われる農薬を最優先としています。この再評価作業は膨大で、450を超える農薬およびその他の成分に基準値を設定し、または基準値設定から適用除外を決定します。 FQPA 通過時点では約9,700の基準値が有効なものとして存在していました。これはひとつの化学物質に関して基準値が多数存在(ひとつの化学物質が種々の食用作物において使用されるため)しており、これが再審査 を複雑にする一因となっています。
A 米国農務省・農業統計局が主要農産物の農薬使用量に関する調査結果を報告しています。報告書は、ウェブサイトで閲覧できます。http://usda.mannlib.cornell.edu/reports/nassr/other/pcu-bb/#field.


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