
2005年7月26日
ワシントンDC
ワシントンポスト − ロビン・ライト、グレン・ケスラーケスラー 私から始めます。3月に日本に行った時に驚いたのは、日本人記者が「国務長官は本当にご苦労が多いでしょう」と言ったときのことです。長官はちょっと笑って、「いいえ、素晴らしいことです」とおっしゃいました。私は端的に言って、なぜ素晴らしいのだろうかと思っています。何が素晴らしいのですか。
ライス長官 そう、なぜなら、非常に注目に値する時だからです。まず、国務長官の仕事は本当にいい仕事です。ジョージ・シュルツ元国務長官はかつて私に、これは政府で最高の仕事だと思う、と言いました。彼は行政管理予算局局長や財務長官などいくつかのポストを務めましたから比較する視点を持っています。そして、この仕事は政策実行のために働くことができ、さらに米国を代表して政策を提示できるという、2つが結びついたものだと思います。私は外交を非常に楽しんでいます。私は外国の外務大臣やその他外国政府の代表者との1対1の外交が好きです。難しい問題を解決しようと努力する戦略的な問題解決に、本当に喜んで取り組んでいます。
それが1つですが、さらに私は、外国に出かけわが国の政策や原則について話したり、米国を代表したりすることも好きです。わが国は素晴らしい国家でこれを代表することは私の誇りです。ですからこれは素晴らしい仕事なのです。
ケスラー 手短かに付け足します。ご友人の1人は、長官が大統領補佐官(国家安全保障問題担当)時代、鍵盤を24鍵で弾いていたけれど、今は鍵盤全体で弾いている、と言っていました。
ライス長官 何て素晴らしい、上手なたとえでしょう。
ケスラー そんな風に感じられますか。
ライス長官 そう、2つの仕事はそれぞれ異なるものです。それは間違いありません。大統領補佐官のときは、本当に大統領のスタッフであって、そこにおける責任は非常に違います。それは大統領の役割を準備することです。そのかなりの部分は、事務処理が正しいことを確かめ、すべての考え方を(大統領が)理解したかを確かめることです。現在の仕事はこれとは非常に異なります。国務省では、代表者として、国務長官として行動するがゆえに重要である、というばかりではなく、私が率いるこの組織が大組織だからです。そして私はこの組織を気に入っています。私は大きな組織を率いる責任体制が好きです。スタンフォード大学のプロボスト(教務・予算の最高責任者)時代には、仕事に関わるすべてに満足しました。国務省では、ハイレベルの経営監査と呼ぶ予算審査をかなりの数審理してきました。私は自分の意思決定をするとき、われわれが原則的にしようとしていることと、それを政策を通していかにして実施するか、その問題にどの資源を振り向けるか、そしてわれわれの人員がそれらの問題をいかに実行しているかを、自分の中で結び付けられるように意図するからです。もしもこのオフィスがいかに機能するかという詳細に興味がなければ、そうした仕事を行うことはできません。そしてこの仕事を本当に楽しんでいます。ここで気に入っているのは、予算とハイレベルの経営監査です。
ケスラー その発言について引用してはいけないでしょうか。
ライス長官 もちろん、いいですよ。それは長官の大きな仕事です。私は重要だと考えています。
ライト 長官はご自分のアプローチを「実践的理想主義」と定義づけました。「実践的理想主義」が何であるか、長官が直面している特定の問題に関してそれがどのように使われているかを、政策の素人にも分かる言葉でご説明いただけますか。
ライス長官 米国外交は常に、私の考えでは正しい形で、理想主義という1つの傾向を保持してきました。つまり、米国は価値を重んじ、原則を重んじてきたのです。それは、どんな解決法であれ利用できるものを利用するというのではなく、それを原則と価値という状況設定の中で行っているのです。そして現代のように世界が非常に急速に変化し、米国がテロリズムと過激主義から実存的な挑戦のようなものを受けている時、価値観に基づいた統率をすることはとりわけ重要です。そして自分の政策の中心に、これほどまで価値観を置くことができた大統領は、近年われわれの記憶にはなかったと思います。
そうすると、われわれすべての責任は、それらの価値観に根付いた政策を取り、それを常に目標に向かって前進できるよう、日々機能させるということです。なぜなら、世界で進行している、あるいはわれわれが実際に追求している重要な変化が1週間のうちに、あるいは1カ月間、もしかしたら1年間のうちにさえ起こるとは誰も信じていないからです。ですからこれは、それらの理念と政策結果の間のつながり、日々の現実の政策とのつながりなのです。
ライト 具体的な事例をお話ししていただけますか。 スーダン。 インド。 あるいはイラン。
ライス長官 そうですね、広い意味での中東問題を取り上げてみましょう。民主主義に関して、米国は多くの議論を重ねてきました。われわれ1人1人が、米国が宣言してきたことに関して、大統領が2回目の就任式で宣言したのは、民主主義は事実上、常に正しい選択であり、自由の価値は普遍的な価値であり、例外はなく、中東を含め、世界のどんな文化圏にもあり、どこも除外することはできないという米国の政策の強力な中心部分でした。
明らかに各国は違ったスピードで、そうした基本的な国家に向かって動いており、それぞれの国が違った場所から出発します。サウジアラビアはエジプトではありませんし、エジプトはヨルダンではありません。イラクのようなところの状況は異なります。なぜなら、そこでは国際的な独裁主義者であり無法者であるサダム・フセインは打倒されたからです。
ですから挑戦のひとつは、それらのひとつひとつの事例、見つけた状況を取り上げ、これから広がる状況として受け入れるのではなく、その目標に向かって実行可能な方法を見つけることです。
それはエジプトのような国では、エジプトに行って反対派に会い、そこで行われていることを支援するプログラムを行うことを意味しますが、ムバラク大統領がいた所という状況下では、1歩、より開かれたシステムに向けて重要な1歩を前に踏み出すのです。
ケスラー 過去6カ月で最も感動を受けた出来事を4つ挙げていただけますか。 長官の4大ハイライトは何でしょうか。
ライス長官 感動的な出来事でしょうか。
ケスラー そして長官の4大政策も合わせてお願いいたします。
ライス長官 私はそれほど内省的な人間ではありません。本当に、そうではないんです。
感動的な場面。カイロでの演説。私は初めてのイラク行きのことを考えています。これまで何度もありました。本当に数多くありました。そこに行くこと、そのイメージです。そこに出かけ、初めて目にすること、私がイラクに行くというとき、バグダッドは偉大な都市で、イラクは偉大な文明国です。もちろんそれについて本を読んで、知っていました。でもそれは、民主的で安定したイラクは中東における変化の基本的な柱になるだろう、という意味です。
初めてアフガニスタンを見ることを考えます。アフガニスタンには1度も行ったことはありませんでした。私はソ連の専門家でした。おそらくアフガニスタン領土の隅々まで、地図や歴史で知っていました。しかし、人々に話したことを思い出すのですが、9・11が起きたとき、その数日後にわれわれはキャンプデービッドに行き、地図を広げてこれがアフガニスタンだ、と認識しました。つまり、ようやく何かが分かり始めていたのです。この場所は危機の弧、強国が死へ向かうところ、と表現されてきましたが、ここがいかに大変な場所かを考えました。その後アフガニスタンに行き、それからパキスタンに行き、インドに行って、世界には元からの同盟国である民主国家インドばかりでなく、安定し過激主義を根絶して民主的なパキスタン、そして安定しパキスタンと良好な関係にあるアフガニスタンもあることを心に描き、あの救済の弧の約束を目にしたのです。
私にとっての意味は、こういう場所に行くと、掲げられた目標を達成することの戦略的重要性がはっきりと浮かび上がってくることです。そしてもちろん多くの浮き沈みがあります。何もうまく行かない日もあれば、イラクの選挙投票日やレバノンの路上抗議行動のように、ものごとが急激に非常に正しく進むこともあるのです。
目標は屋台骨が傾かないようにその平準をなんとか保つことで、大きな歴史的変動には多くの紆余曲折があることを認識し、残したいと思う種類の世界のためにその基礎柱を適切な場所に打ちこむという方向で、日々励むのです。やるべきことのすべてを達成するのではありません。3年半でそれは無理です。しかし現政権が基礎を築けば、将来の米国の政権や同盟国が後々これらの結果を実現できるでしょう。
ケスラー それに関してですが、カイロでの演説を挙げられました。それがなぜ感動的な場面だったのですか。 それが杭や柱を設置することだったからでしょうか。
ライス長官 それは、米国の政府高官がアラブ世界の中心でその演説をすることが重要であると私が真に信じているからです。群衆にはエネルギーがあり、すべてを好む人ばかりではないことは知っています。私は学者です。私は議論、論争、意見の相違は仕事の活力源だとする世界で育ってきました。ですから誰かが「あの演説のあの論調は気に食わない」と言っても気にしないのです。でもあそこにはエネルギーがありましたから、米国が意味するもの、大統領が就任演説で述べたことへの認知はあったと思います。
ライト その問題に関し、別の角度からうかがいます。これまでのところ何が最大の成功であったと思いますか。 そして、必ずしも最大の失敗ではなくてもよいのですが、一番仕事の多いところはどこでしょう。 注釈をつけると、長官はロシアの専門家であるのに、ロシアと私たちとのかかわりは世界の他の諸国より、より弱い、あるいは影響力が少ないように思われるのですが。
ライス長官 まず私にとって、成功を数えたり、失敗を記録したりするのはまだ早すぎます。
ライト 今までに、ということで。
ライス長官 ロビン、私はそういう言葉では考えないのですよ。私は、なぜ大きな事件がそのように展開していくのかを理解しようと試みることで、ほとんどの人生を過ごしてきた政治学者です。そして私の守備範囲や時間の尺度が恐らく違うのでしょう。
ライト しかし何が。
ライス長官 あなた方が1日単位で記事を書かなければならないことは、私も分かっていますから、これは難しいでしょうが。
ライト どんな記事がお望みなのかお話していただけませんか。いずれにしても、ロシア問題については、長官は世界の多くの地域に深く関与しているので、ロシアにもかかわりがあると思います。現時点で、本当に特筆すべきことは...
ライス長官 好ましいことに、実際に米国はロシアと多くの問題でかかわっています。すべての国が政策の標的としてのみ見られるべきではありません。時には政策のパートナーを持つことも、実際あるのです。私はロシアとたくさん話し合います。ロシアは「中東カルテット」のメンバーです。彼らは中東問題に取り組む上での非常に活発で建設的なメンバーなのです。米国とロシアは、ヨーロッパとイランに強いかかわりを持っています。米国はロシアと不拡散政策に関して強いかかわりをもっており、それには大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)への参加同意も含まれます。
ここで興味深いのは米国とロシアの共同作業の程度です。確かに、ロシアの現在の国内政策の方向には失望するものもありますが、私にはこのことを、ロシアに行ったときに実行したごとく、ただ公に取り上げただけでなく、大統領を含めたロシア政府の幅広い分野の人々と、ロシアにおける民主的発展の将来の方向について数多くの議論をしました。しかし6カ月間でロシアの発展の方向が変わることを私が期待するでしょうか。いいえ、期待しません。ロシアは大きく複雑ですから、時間をかけることで民主的発展こそロシアが自ら欲する姿になる唯一の方法であることが分かるだろうと私は思います。
自分はただ腰をおろして成功と失敗を数え上げているのではないと私が言っても、それは信じ難いという人々がいることは理解できますが、それは私のこの仕事に対する見方ではないのです。私のオフィスの壁に並ぶ長官(肖像画)を見たことがありますか。ジェファーソン。彼が最初の国務長官です。誰もが自分の壁にジェファーソン像を掲げています。しかし、マーシャル。マーシャルが46年と47年、そして48年あるいは49年に直面したこと、あるいは、その様子は残念ながら、47年にマーシャルが実行した結果は、あまり素晴らしいものには見えないでしょう。あるいは、ディーン・アチソン、彼は国務長官としては過小評価されていると私は思っています。
ですから私がここにいる間に実行してみようと思っていることは、大きな戦略的目標に向かって歩みを進め、いくつかの基礎を築き、できればいくつかの問題を解決し、さらに前進するよう、それを次の国務長官に引き継ぐことです。
ライト いくつかの紛争地域に話を切り替えてもよろしいですか。
ライス長官 ええ。
ライト 特定の紛争地域です。シリアはその1つですが。
ライス長官 しかし、グレンのもうひとつの質問に先に答えましょうか。
ライト お願いします。
ライス長官 政策に関わる質問でしたね。
ケスラー ええ、お願いします。
ライス長官 米国は、イランに関する政策をヨーロッパと一致させることができました。それは非常に重要であると私は思います。6者協議再開に向けた北朝鮮への共通アプローチを取り巻く5者には新しい軸があると私は思います。ジェームズ・ウルフェンソンの任命とウォード中将のガザ撤退への関与については、明らかに非常に困難なプロセスであるため、国際的な支援が得られると思います。そして私の考えで恐らく最も重要なことは、これは当然のことですが、われわれは欧米関係においては、現在の動きを分析するところから、ある大きな目標のために実際に欧米関係を機能させるところまできたという点です。NATOの空輸をダルフールまで行い、例えばレバノンにおけるフランスとの非常に強力な関係のように、フランスから苦労のすえに支援を獲得したのは画期的なことです。ですから前進はある程度あったと思います。
ケスラー 種をまいていると。
ライス長官 ロビンは「3ヤードと砂ぼこり」の話をご存知ですね。
ライト それはフェアじゃありません。
マコーマック いいじゃないですか、皆さんは仲良しですから。
ライス長官 構いませんよ。でもオハイオ州立大学は何度も(フットボールで)優勝しているんですね。
ライト ええ知っています。いじめればいいでしょう。本紙の編集者はオハイオ州立大学の出身なんです。それでは詳細に移りましょう。
ライス長官 はい。
ライト シリアです。いまだに残るレバノンとの問題。イラクへの経済ボイコット。明らかな過激派への加担。米国はシリアに関して何をしているのですか。メッセージは送られているのでしょうか。 国連安保理決議1559違反を理由に、安全保障理事会に訴えるという、より強硬な行動を取るつもりですか。
ライス長官 われわれが、まずしたことは、フランスと共同で、シリアはレバノンから撤退せよという国際的な意見形成を働きかけたことです。シリアがレバノンでの出来事に、国境にいるレバノン人にかけている圧力も含め、見苦しい方法で影響を及ぼし続けようとしていることに疑いはありません。
米国は国際社会と共同して、それが受け入れ難い方向であることを引き続きシリアに説得していきます。そしてそれは、われわれが1カ月後、あるいは6週間後にどんな立場にいるかの予測を試みる必要はありません。しかし政権にいる私や他の人に対して日々なされる提案は、シリアの行動はパレスチニアを傷つけ、イラクを傷つけ、レバノンを傷つけているということ、そして彼らは国際的システムで起きている状況と調和していないということを、われわれのメッセージを聞くシリア人にのみならず、複数のチャンネルを通して、継続的に圧力をかけて訴えてほしいということです。
ライト 長官が「もうたくさん」と言う瞬間はあるのでしょうか。米国は第一次ブッシュ政権でパウエル、アーミテージ、バーンズを派遣しました。米国はメッセージを送り、統一行動を取りました。レバノンは反発し、長官が「もう、たくさんだ」といって何かを行動に移すという瞬間はあるのでしょうか。
ライス長官 そうですね。
ライト 私の意味するところは。
ライス長官 シリア軍がレバノンを撤退したというのは少なからぬ達成だと私は思います。
ライト ええ、それはまったく。でもこれはやはり長官の要求に反していますね。
ライス長官 ええ、でももう一度思い出して見ましょう。ハリリ前首相の暗殺以来、多くのことが起きました。シリア軍はレバノンを撤退し、レバノンには新しい政府が樹立されました。そして今、次の段階はシリアがレバノンの主権を尊重するのを確かめることで、われわれはその段階に関して働きかけます。しかし「何かをするのですか」というあなたの質問には、シリア軍のレバノン撤退は好ましいことだと思う、と答えましょう。
ライト 現在までにすべての諜報機関や軍隊は撤退したと信じていらっしゃいますか。
ライス長官 いいえ信じてはいません。でもシリア軍がレバノンを去ったことは信じています。検証チームがいて、そこに他にどんな要素がありうるかをわれわれに報告することになっています。われわれはハリリ前首相暗殺の調査を今なお待っています。ですから数多くの段階があるのです。
ケスラー それは間もなく明らかになるのでしょう。
ライス長官 もう間もなくですが、まだスケジュールなど詳細は分かりません。
マコーマック 皆さん、あと約5分ほどですよ。
ライト ウズベキスタンついて。間もなくカリモフ大統領に会うために、特使あるいは誰かを派遣しますか。
ライス長官 今後の検討課題です。米国がウズベキスタンで行っているのは、まず、当面の問題、例えば難民問題です。この問題に関しては国際的に良い協力が得られています。
われわれがウズベキスタンに対して非常にはっきりとさせていることは、米国との関係はアンディジャンでの事件の調査の透明度次第だということです。それとウズベキスタンと話し合うために誰かを派遣すべきかどうかは、検討課題です。米国はウズベキスタンのみならずあるゆる近隣諸国とも話し合っています。その地域には他にも、わが国との関係に問題があるが、良好な関係を持ちたいと思っている国もあります。
ライト しかしわれわれはまだウズベクK2基地を保持したいですね。
ライス長官 ええもちろん基地の使用は好ましいことでしょう。しかし同時に、米国はその戦略的利益と民主主義における利益を、何らかの方法で切り離し得るとは思っていません。そしてウズベキスタンがそれを混同しているとも、私は思いません。ラムズフェルド国防長官は今日キルギスタンに行っています。昨日だったかもしれません。
ケスラー 昨日です。
ライス長官 昨日でした。
ケスラー 今日どこかは分かりませんが。
6者協議について。クリス・ヒル国務次官補の前任者ジム・ケリーは自分に柔軟性が与えられていないこと、彼が必要と思う交渉の柔軟性がないことにいつもいらだっていました。クリス・ヒルは、このプロセスを前進させようというかなりの柔軟性を持っているようです。どんな理由で違いがでたのですか。 何がここで変化したのでしょうか。
ライス長官 さあ分かりません。つまり、ジムがどう感じたかについて、彼とはまだ1度も話し合ったことはないのです。重要なことは、6者協議が結束するということで、ここで達成しようとすることについて結束を続けるということであり、それをするために過去数カ月間、多くのことをしてきたのです。それは2月10日以降の北朝鮮の行動が、国際社会とりわけ他の5者が、北を単にテーブルに着かせるというだけではなく、交渉の準備をして北朝鮮をテーブルに着かせるために結束することを決意しなければならない、という状況を真につくりだした、という事実にも一部関連しています。ですから過去数回前の6者協議とは、われわれはやや異なる立場にあるとは思います。
クリスは優れたタフな交渉者ですから米国は彼を派遣したのです。クリスは原則がどこにあるかを心得ています。彼は北朝鮮との間で、どこに米国の関心事があるのか分かっています。そして誰もが、もしできればそうした制約の中で、彼がそれを成し遂げると信頼しています。彼とは毎朝話し合っています。今朝は5時45分、昨日の朝も5時45分に話し合いました。それが、彼が私に電話をかける、約束の時間なのです。
ケスラー それで、彼は今日は何と言っていましたか。
ライス長官 彼によれば、交渉はすべてをテーブルにさらけだすという感じで、北朝鮮もテーブルにさらけ出したいのだが、それはこれからという所で、雰囲気は本当にビジネスライクだ、ということでした。これはいいことで、雰囲気はこれまでは、必ずしもビジネスライクであったわけではないからです。彼はまた他のすべての国と2者会談を連続して行っています。われわれは達成に向けて非常に結束していると感じている、と思います。そしてそれから彼らは現地時間の明日から事前協議を行います。ですから、彼は、柔軟性があります。彼は優れた交渉者です。
ケスラー 国務省内部ではランクの低い人達から、7階のスタッフは非常に大きな力を持ち、下からの政策には反対し、上から政策を押し付けがちだ、という不満が出ています。これにどう答えますか。
ライス長官 まず、私は会いたいという人には誰に対しても非常にオープンな方針を持っています。デスクオフィサーの話も聞きました。私自身が各局に直接出向き、職員と話をし、彼らの働きに感謝したりしています。
私には、次官補という私の仕事を補佐する非常に強力な幹部職員がいます。彼らがこの建物では政策の真の中心です。私に何か書類がくるときは、その次官補を通過します。私は彼ら次官補が、自分たちのレベルで決定できることは決定することを期待しています。つまり、ボブ(ゼーリック副長官)が注目すべきことなのか、ニック(バーンズ次官)なのか、私なのかという点です。
非常に多くのことが飛び交うわれわれの住む世界では、国務省のすべてのデスクから出される問題ひとつひとつを取り上げることはできません。できませんし、そうしようとも思いません。人々は、今ではそれを理解してくれていると思います。しかし、もしも次官補に解決すべき問題がある場合には、彼らがこのオフィスに数時間のうちにやってくることを私は期待しています。数日ではなく数時間以内です。時には数分です。時にはスタッフ会議の直後、ということもあります。それが私のやり方です。私は常に、自分のスタッフを通してではなく、幹部職員を通して仕事をしてきました。しかしこうしたスタッフは、次官補と切り離されているわけではありません。それが直線型の責任体制です。ですからデービッド・ウェルチやクリス・ヒル、コニー・ニューマン、ダン・フリード、そしてクリスティーナ・ロッカやショーンには私はよく会いますし、それが私にとっては常に望ましいやり方です。
ライト カレン・ヒューズが指名承認のための公聴会を終えました。長官がなさりたいことは、われわれは考え方として分かります。間もなくヒューズ氏がオフィスに加わるわけですが、彼女にどんなプログラムを期待するのかを、具体的かつ明確にお話しいただけませんか。
ライス長官 そうですね、この会話はおそらくカレンとしたいのではないですか。
ライト そうです。
ライス長官 彼女がここに来たときにですね。
ライト はい、実はそうしたいのです。
ライス長官 カレンと私はメッセージを広報し得る重要性や、外部に存在する多くの神話的なものの取り扱いなどについて長い議論をしました。私は実際に人物交流プログラムの熱心な支持者で、できうる限り活発な交流プログラムを、また市民社会、ビジネス・グループ、女性グループなどに特化した交流プログラムを企画したいと思っています。すでに行っているものもありますが、もっと増やしたいと思っています。
カレンはいろいろ試みて、これは独り言ではなく会話であるという考えを実行に移し、よりよく意見の聞ける方法があるかを確かめるでしょう。ですからプログラムの企画は私の仕事ではありません。そのために私は、プログラムの企画をする最高の人材を獲得したと思います。でもこれらはわれわれが達成したいと思っていることの一部に過ぎません。
ライト でもどういう方法で。
ライス長官 私の責任は、広報文化交流を手がける最高の人材を獲得し、「カレン、これがわれわれが達成したいことです」と言うことです。私は以前大きな組織を管理していましたが、そこで2つのことを学びました。とりわけ、私が38歳で(スタンフォード大学の)プロボストになった時、それ以前には学部長の経験は皆無でした。突然、自分以外の人の仕事のすべてをすることになり、ここには2つの問題があると思いました。
第1に、自分以外の人の仕事をすべて行っては、あまりうまくできないでしょう。第2に、良い人材は決して他人のためには働いてくれません。私はここで、自分の人生で大きな責任を負ってきた非常に地位の高い人々のチームを組織しています。そして私の責任は彼らに「これが、われわれが達成しようとしていることです」と言うことなのです。そして私は、われわれが達成したいことに同意する人々をチームに集め、この人々に、はい、いいですよ、やってください、と言う努力をしてきました。デービッド・ウェルチ、中東で最高のプログラムを作りましょう、あるいは広報文化交流であればカレン・ヒューズ、また経済政策なら上院の承認があればジョセット・シャイナー、というように。それがこのように大きな組織を動かす方法で、それがわれわれが意図していることです。
マコーマック 最後の質問です、グレン。
ケスラー 分かりました。それでは、私は「27問からなる日本式質問」をしたいですね。
ライト ほんとですね。日本人記者がしたような形もありえますね。
ライス長官 次官補に関する、別のもう1点です。次官補がそれほど重要なもう1つの理由は、ここで起きることを単に管理するばかりでなく、彼らは外務大臣や国家元首を訪ねることのできる高官であり、それゆえボブや私の手足でもあるのです。実際、私はいつもどこにでも行けるわけではありませんから。
ケスラー 出かけていらっしゃいますよ。
ライス長官 そんな風に見えるだけですよ、グレン、なぜかというとあなたはいつも私と旅をしていますからね。そして、これらのことができる実際に権限をもつ人物を持たねばならないのです。
さて最後の質問ですね。
ケスラー 選ぶとすれば争点は10だけです。イランと北朝鮮の双方のケースにおいて、どちらの国も核計画を本気で放棄しないと米国の現政権は確信しているので単により広い柔軟性を示しているに過ぎない。また協議が必然的に失敗しても、現政権は協議の失敗を非難されることなくこれらの国を孤立させる政策に戻ることができる、と主張する人々に何とおっしゃいますか。
ライス長官 そういう人々は考えすぎだと思います。われわれはイラン問題の解決を望みますか。 北朝鮮問題の解決を望みますか。 もちろん、です。それらを解決する唯一の方法は、達成しようとすることが明白であるか否か、という戦略をわれわれは持っています。つまり、燃料サイクルの技術的能力を持たないイランであり、核兵器計画と野望を放棄し、その廃棄を開始する北朝鮮です。
しかし、米国が力点を置くのは、イランの事例においてはヨーロッパと、北朝鮮の事例では6者協議におけるその他の国々と共同して、まずは共通の目的にまで引きよせ、その後は最終的に北朝鮮あるいはイランが出口はないと気づくまで、その共通の目的を前方に押し進めるという外交です。
私は強く思うのですが、最初にヨーロッパに行ったとき、気づいたのは、イラン情勢における問題点は米国である、という立場になぜかわれわれが入りこんでいるということで、ヨーロッパが米国とイランの間を調停しようとしている、奇妙な状況でした。あれは気持ちのいいものではありませんでした。
ですからその旅に加え、その後の大統領のヨーロッパへの旅、そして私のヨーロッパへの再度の旅を通し、イランにはEU3国会談に出てくる以外、実質的に出口を残さないという共通の立場に至るまで、われわれは全力で努力しました。それこそ真の外交とは何かということで、私が自分のほとんどの時間を問題解決に費やす方法は、シリア、あるいはイラン、北朝鮮に残された唯一の道となる状況をつくりだす努力をすることです。それを、米国とイラン、あるいは米国と北朝鮮、米国とシリアの間の問題である、というような状況にこれらの国の1つが入りこめれば、こちら側から少し、あちら側から少し、と良いとこ取りしようとする可能性もあります。それは望ましい立場ではありません。
ある人が、外交術とはあらゆる人を、自分の政策は彼らの政策であるという場所にまで連れていくことだと言いました。外交の中には、自分の政策と彼らの政策が同調する場所を探すものもあります。そしてそれこそわれわれが多くの時間を費やしているものだと私は思います。
ケスラー それでは長官がヨーロッパにいらしたとき、米国はいかにして長官が気づいたその場所に入りこんだのですか。その点だけ理解したいと思います。つまり、長官はグループの一員のようなものだったわけですね。
ライス長官 ええ、いつかは分かりませんが。時間の経過につれ、それは、徐々に侵食されてその場所に到達したのです。時折起こることですが、その後で立ち戻り、修復しなければなりません。
ライト 最後に1つだけ質問します。現在起きている問題で、長官が重要と思われ、ワシントン・ポストを利用して立場や展開を明らかにしたいと思われることはありますか。
ライス長官 いいえ。でももしあったらお呼びしましょう。
ライト 約束してくださいね。
ライス長官 わかりました。
ケスラー どうもありがとうございました。


駐日米国大使