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*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

貿易障壁の撤廃が成長を助け、貧困を食い止める

ジョン・W・スノー財務長官
2005年9月25日
世界銀行・IMF合同委員会



 世界銀行・IMF合同委員会は、世界の成長と開発途上国にとって非常に大きな機会が訪れた際に開催されるが、米国のメキシコ湾岸で自然が猛威を振るった今回のような惨禍や大きな課題に直面した際にも開催される。

 今回のような自然災害が起こると、何人も恐ろしい自然の脅威からは逃れられないのだと思い知らされる。私たちはこの場を借りて、ハリケーン惨禍の被災者に対する世界各地からの支援に心からお礼を申し述べたい。

 米国政府は被災地復興と被災者の生活再建への支援を表明している。また、そのために必要な財政支出も行う。救援活動と復興には多額の費用がかかるだろうが、ブッシュ政権は財政赤字の削減という方針から逸れることはない。米国経済は力強く、今後も大統領の優れた経済政策の継続によって好調を維持するであろう。私たちは近隣諸国を支援し、財政赤字を削減していくことができるだろう。

 ハリケーン「カトリーナ」、そしてその後の「リタ」の襲来によって改めて認識させられたのは、昨年12月のスマトラ沖地震と大津波の被災者をはじめ、自然災害に見舞われやすい国々に、国際社会が必要な援助を継続して行う必要があるという点だった。また、世界では何億もの人々が、安全な住居と健康的な食事を得ることすらままならない状況にあることを改めて考えさせらた。

楽観的な見方をとる理由

 直面する課題は大きいが、広範なマクロ経済の領域では楽観的な見方を取ってもよい。原油価格はなお極めて大きなリスク要因だが、世界の成長見通しは依然として明るい。先進国の経済成長は、途上国の貧困との闘いには極めて重要である。先進諸国の経済が好調であれば、途上国からの輸入増加という「プル要因」になるうえ、開発援助のための財源も生み出す。もっと具体的にいうと、仮に米国以外の経済協力開発機構(OECD)諸国が過去10年、米国並みの成長率を達成していれば、政府開発援助に800億ドル(1995年の対GNPの政府開発援助比率が一定として試算)を上乗せできていたはずだ。

 途上国でも高い経済成長が続いている。実際に、もし現在の成長率予想が維持できれば、世界の貧困人口の割合は1990年の28%から2015年には10%に低下し、2000年の国連「ミレニアム宣言」で定めた目標を大きく上回ることになる。また、HIV/AIDSがまん延しているサハラ以南のアフリカを除くと、社会の進展を示す各種指標はかつてないほどのペースで改善している。例えば、途上国の5歳以下の幼児死亡率は1980年以降、低下し続けているほか、普遍的初等教育を実施している国は記録的な数にのぼる。

 貧困層を減らすには民間主導の経済成長が欠かせないとの認識を踏まえ、世界銀行が先ごろ発表した報告書「ドゥーイング・ビジネス」は、「なすべきことは多いものの、多くの政府が投資を妨げている障壁を取り除く努力を続けている」と指摘した。昨年は99カ国が、財産権の強化から財とサービスの輸出入コストの削減にいたる185件の改革を実施し、ビジネスの環境を改善させた。成功例はアジアではインド、中南米ではブラジル、アフリカではルワンダなど、どの大陸でも見られる。

援助国の対応

 援助国は開発援助の大幅な拡大、感染症への新たな対策、さらには海外支援の効率性、実効性改善に改めて努力するなどの対応をとってきた。米国政府は「ミレニアム・チャレンジ・アカウント」や「大統領エイズ救済緊急計画」、先ごろ発表した「マラリア・イニシアティブ」や「アフリカ飢餓撲滅イニシアティブ」など多くの新たな対策に乗り出している。拠出金については、米国は政府開発援助(ODA)を2000年の100億ドルから2004年には190億ドルにほぼ倍増させた。最近ではグレンイーグルズで開かれた主要国首脳会議の席上、米国は2004年から2010年までの期間にサハラ以南アフリカ諸国への援助を倍増することを提唱した。

 2002年のモンテレー開発資金国際会議で表明したように、米国は今後とも高い実績を上げている国、すなわち援助によって成長を加速させ、貧困を削減できている国への支援を増やしていく予定だ。また、世界銀行や国際開発機関は、拠出金が最も効率良く活用されるよう、援助の具体的な成果を測定する努力をさらに強めていく必要がある。

 しかし、私たちにできる最大の貢献は、世界の成長のペースを維持していくことである。米国では、欧州や日本の内需主導型の成長を後押しするため、また主要新興国の為替相場の柔軟性を高めるため、既定の財政再建路線は今よりはるかに大胆な財政政策に引き続き対応しなければならない。したがって、国民総所得に対する援助の比率でいえば、分母、すなわち国民総所得を持続的に増やすことを念頭に置くべきである。

アフリカ行動計画

 楽観的になる理由は多いものの、今日までアフリカは、アフリカ以外の国々が享受してきた成長拡大と貧困削減の恩恵を共有してこなかった。アフリカはどの「ミレニアム開発目標」(MDG)も達成できないと思われる大陸である。アフリカの貧困者比率の増加に対しては何年も前から多くの対策がとられてきたが、グレンイーグルズ・サミットではそれ以上に積極的な道筋が示された。首脳全員がアフリカの貧困、飢餓、疾病との闘いを支援するため、新たに多大なコミットメントを表明した。また、G8は援助国の追加援助をより協調して行うための対策改善でも合意した。これを担当するのが世界銀行のアフリカ行動計画(AAP)である。AAPは、世銀グループと開発コミュニティーが国、分野、プロジェクトごとに測定可能な成果を達成することに集中できるよう、具体的で監視可能な行動を定めている。

 アフリカ行動計画の成果主義に基づく手法は称賛に値する。特に私たちは、貧困削減に不可欠な要素として生産性の改善を通じた経済成長を強調している点、また社会基盤の整備、金融部門の改革、ガバナンス(統治)の改善を重視している点を支持している。アフリカ行動計画は援助によるマクロ経済への影響も考慮している。対アフリカODAの大幅増額表明を受け、私たちは世銀に対し、資金の吸収能力や追加資金の流入によるマクロ経済への影響といった問題について国際通貨基金(IMF)と引き続き緊密に連携するよう求めている。

債務免除と今後の課題

 重債務貧困国の債務については、「HIPCイニシアティブ」の要件を満たす国が抱える世界銀行・国際開発協会(IDA)、アフリカ開発銀行・アフリカ開発基金(AfDF)、IMFに対する債務残高を100%免除することで合意したが、これは絶好の機会であると同時に大きな課題ともなっている。ここ40年ほど、最貧国の多くは医療や教育そして基本的な開発ニーズを満たすためのプロジェクト向けの融資を受けてきた。その結果、これらの最貧国では学校建設といった、重要だが近い将来の収入確保が期待できない数多くのプロジェクトで債務が膨らみ、次の世代に返済義務を先送りしてしまった。非常に重い債務負担を免除することで、これらの国は生産者から購入者への財の移動に役立つ社会基盤の整備に資本を投入し、また人材にも投資して経済成長を実現することに精力を傾けることができる。

 また、世界の経済見通しに明るい兆しが出ている一方で、多くの国が成長を妨げる障壁をつくり続けている。前述の世銀報告書「ドゥーイング・ビジネス」によると、昨年は多くの国がビジネス環境の改善に向けて前進したものの、20カ国ではむしろ環境が悪化した。特に、アフリカではほかの地域に比べ起業家がより多くの障壁に直面し、改革への努力が最も乏しいことが懸念されている。世界銀行研究所が発表した今年のガバナンスに関する報告書も心配な内容で、規制内容や法の支配、腐敗の取締まりといった重点分野で悪化している国が多いと指摘している。さらに、公的財政運営の改善をめざした世銀のプロジェクトは非常に限られた成果しか上げておらず、プログラム型融資と予算支援プログラムに伴う受託者リスクが確認される例が増えている。

 債務免除の合意は、こうした懸念に対処するだろう。過去の債務返済を相殺するための援助国の追加資金は、ガバナンスが重視される現行の国際開発協会およびアフリカ開発基金の結果重視型資金分配システムに基づき、国際開発協会対象国のみに分配される予定だ。しかし、腐敗のまん延による影響を防ぐにはそれ以上の対策が必要である。「パリ宣言」で採択した調和化目標は、目指すところは素晴らしいものの、維持すべき高い国際基準を定めた現行の世銀方針と文書化要件を満たさない調達システムを採用する動きとは闘わなければならない。また、世銀とIMFは、受入国が歳出、調達、財政の説明責任システムを改革するのに役立つ結果重視型アプローチ、「公的支出および財政に関する説明責任プログラム」をさらに支援する必要がある。最後に、国際金融機関は腐敗防止策でもっと多くのことができるはずだが、途上国全体の強力なリーダーシップと協力がなければ効果は限られるだろう。モンテレー会議で合意をみたように、途上国は今後、良好なガバナンスと健全な政策、法の支配をもって自ら経済を発展させる責任を負うことになる。

貿易障壁の撤廃

 おそらく米国政府が成長拡大と貧困削減に向けて取りうる最大の措置は、ドーハ・ラウンドの交渉に基づく貿易障壁の撤廃である。米国民は現在、世界で最も規制の少ない貿易圏に属していることで恩恵を受けている。世銀の「グローバル・モニタリング・レポート」によると、米国は低所得国、最貧国、サハラ以南アフリカ諸国からの輸入品に対する貿易制限が最も少ない国のひとつである。これは米国の消費者のみならず、輸出国や財を供給する生産者、より収入の多い新しい仕事に就いて生活水準を引き上げたい個人や世帯にも利益になる。

 ドーハ開発アジェンダ(DDA)では、途上国が貿易自由化の恩恵をより多く受けることができるよう、世界経済の枠組みの中に途上国を取り込んでいくことを特に重視している。世銀が示しているように、途上国が世界的な貿易自由化から得ると想定される収入増加分のおよそ4分の3が、途上国自身の障壁撤廃によるものと考えられている。つまり、途上国が自由化の恩恵を得るには、彼ら自身も貿易障壁を大幅に取り除く必要があるということだ。このため私たちは、DDAにおける意欲的な成果、特に農業および非農産品の市場アクセス、そしてサービスにおける成果に対する世銀とIMFの支援を歓迎している。

 サービスの自由化はドーハ・ラウンド最大の成果となる可能性があり、ドーハ開発アジェンダに不可欠の要素である。サービス貿易による収入増は、モノの貿易のみの自由化による収入増をはるかに上回ると推定されている。世銀の試算によると、途上国が4分野の主要インフラ・サービスを開放した場合、2015年までにはモノの貿易の自由化のみの場合の4.5倍の収入増が期待できるという。

 金融部門の自由化は経済成長と貧困削減には特に重要だが、これまでの提案の中身と量は満足にはほど遠い。流れが変わらない限り、ドーハ・ラウンドはサービス貿易の自由化にさしたる進展もないまま終わり、発展と貧困削減の機会を逃すことになりかねないと懸念している。このためすべての参加国、とりわけ最大の受益者たる途上国は、金融を含むサービスにおける効果的な市場アクセスの提供を世界貿易機関(WTO)に確約すべきである。

 米国は、途上国が交渉に参加し、コミットメントを実行に移し、貿易の機会から広く恩恵を受けられるよう支援すると表明している。そのため、私たちは2000年以降、貿易能力構築のための2国間援助をほぼ倍の9億2000万ドルとした。全体として私たちは、「貿易のための援助」は「統合フレームワーク」(IF)やIMFの「貿易統合メカニズム」(TIM)といった既存のメカニズムを活用することで最も効果が得られるという前提に賛同し、また強くこれを支持している。この観点から私たちは、加盟国が開発戦略の一環として世銀に支援を求めた場合、現行の貿易関連能力構築のためのプログラムの枠内で継続的に支援していくという世銀のコミットメントを支持している。また、世銀とIMFはWTO加盟国を含む他の援助国と緊密に連携し、地域や国ごとの貿易ニーズに合わせた援助活動に取り組むことができると確信する。

 ブッシュ大統領が最近の国連演説で述べたように、貿易障壁の撤廃は最貧国の貧困克服のカギとなる。だからこそ大統領は、「米国は諸外国と足並みを揃え、財とサービスの自由な移動を妨げる関税、補助金その他の障壁を完全に撤廃する用意がある」と述べた。加盟国すべてがこの課題に進んで取り組むことはないと思われるが、私たちは開発委員会の他のメンバー国とその国民に対し、出身国の所得水準にかかわらず、香港での次回閣僚級協議までに抜本的で大がかりな貿易自由化策を打ち出すよう強く求める。それによって、ドーハ・ラウンドがめざす成長と発展の潜在力が実現しうるのである。

結論

 世界経済の成長は概ね軌道に乗っており、世界中の人々に恩恵をもたらしている。しかし、そこには不均衡があり、国際金融機関とその株主は個別に、また協力してその是正に取り組まなければならない。こうした不均衡には、何億もの人が依然、極度の貧困にあえぐ世界が含まれる。私たちは今年、同じG8参加国を含む多くの国々とともに、低開発国、特にサハラ以南アフリカ諸国の生活水準向上に向けての追加支援策を行った。この面での努力が続くことを願うとともに、国際金融機関に効果的な関与を働きかけている。しかし、援助の受入国自身が投資と持続的成長のための環境整備に向けて必要な措置をとらなければ、また、私たち全員がドーハ・ラウンドを成功裏に終結させるための準備をすぐに始めなければ、成功への努力は今後とも限られたものになるだろう。