
コンドリーザ・ライス国務長官
フランス、パリ
2005年2月8日
ライス長官 どうもありがとうございます。暖かい歓迎のお言葉に感謝します。また、完璧なホスト役を務めてくださっているフランスの皆様にお礼を申し上げます。私はここに到着したばかりですが、もっと長く滞在できたらと思います。パリは素晴らしい都市であり、パリを訪れることは素晴らしい体験です。私は、シラク大統領、バルニエ外務大臣をはじめとする皆様との会談に期待しています。また、ピアニストとして、私は明日、フランスの素晴らしい音楽学校のひとつを訪問することを楽しみにしています。
パリ政治学院を訪れることは、私にとって特別に喜ばしいことです。この素晴らしい教育機関は、130年以上にわたって、思想家や指導者を養成してきました。私は、政治学者として、皆様の重要な業績に感謝しております。
米国とフランスの歴史は、密接に結び付いています。その歴史は、価値観の共有、犠牲の共有、そして成功の共有の歴史です。同様に私たちは未来も共有することになります。
私は、ここパリを初めて訪れた1989年のことをよく覚えています。それは、フランス革命と人権宣言の200周年記念式典に出席するジョージ・ハーバート・ウォーカー・ブッシュ大統領に同行する栄誉に浴したときです。その同じ年に、米国民も200周年を祝いました。米国憲法と権利章典の200周年です。
この両国が祝典を共有したことは、単なる偶然ではありません。フランスと米国の両共和国の建国者たちは、同じ価値観、そしてお互いによって影響し合いました。彼らが共有した自由と民主主義と人間の尊厳という普遍的な価値観は、何世紀にもわたって世界各地の男女に影響を与えてきたものです。
自由を擁護する米国の歴史は、米国の建国当時までさかのぼるものです。米国の初代国務長官トーマス・ジェファーソンは、「われわれに命を与えた神は、同時にわれわれに自由を与えた」と言っています。米国の建国者たちは、彼らもすべての人間と同様に欠点のある存在であり、人間のつくった政府は必ず不完全であることを認識していました。米国の自由を生んだ偉大な人々でさえも、時には自由の約束に反することがありました。ジェファーソン自身も奴隷を所有していました。
従って、米国の建国者たちが、人民の、人民による、人民のための民主主義制度を確立し、その中で、最も重大な制度の欠点があっても、国民、特に我慢できない愛国者たちが、それを矯正できる方法を作ったことは、私たちにとって幸運なことでした。人間の欠点は、民主主義の理想を損なうものではなく、むしろさらに貴重なものとし、また現代の我慢できない愛国者たちに、その理想を達成する努力を強化させるものです。
その努力において、偉人も普通の人々も、さまざまな男女が人間の営為の力を立証してきました。私自身が影響を受けた例を挙げれば、ローザ・パークスという黒人女性が、ある日、バスの後部座席に座らせられることが嫌になり、座席を移ることを拒否しました。これがきっかけとなって、米国南部各地に自由の革命が広がりました。
ポーランドでは、レフ・ワレサ氏が、虚偽と搾取に耐えられなくなり、壁に登って、権利を求めるストライキに参加しました。その結果、ポーランドは変容しました。
アフガニスタンでは、わずか数カ月前に、かつてはタリバンに抑圧されていた男女が、自由な国民としての初めての1票を投じるために、何マイルも歩き、川を歩いて渡り、雪の中で何時間も立ち続けました。
そしてわずか数日前にはイラクで、何百万ものイラク人男女が、テロリストの脅威を無視して、自由を求める声を明確にしました。個々のイラク国民が、命の危険を冒しました。ひとりの警官は、自爆犯の上に自分の体を投げ出して、同胞の投票権を守りました。イラク国民は自由な票を投じ、イラクの新たな歴史の幕を開けました。
こうした例は、人間の尊厳は個人の自由な選択によって体現される、という基本的な真実を実証するものです。
私たちは、東ドイツの普通の男女によってベルリンの壁が崩された画期的な年である1989年に、その真実の力を目の当たりにしました。しかし、1989年11月のあの自由の日は、自由な西側諸国の全面的な支持がなければ決して実現することのなかったものです。
米国とヨーロッパの人々は、その共通の歴史において何度も、受け入れがたい現状を受け入れることを拒否し、自らの価値観を行使して自由のために奉仕することによって、自他のために最大の成果を達成してきました。
私たちは力を合わせて多くのことを達成しています。今日、ドイツは、民主主義国家としてNATO内で統一され、もはやヨーロッパの中心に圧制が忍び寄ることはありません。NATOと欧州連合は、その後ヨーロッパの最も新しい民主主義諸国を仲間として迎え入れており、私たちは、拡大する力を平和のために利用しています。また、わずか10年前には、ヨーロッパ南東部が混乱の渦中にありました。今日、私たちは、バルカン半島諸国の永続的な和解と、ヨーロッパの主流への全面的な統合に向けて、努力を続けています。
こうした実績を達成できたのは、ひとえに米国とヨーロッパが、政権の根本的な性質をその外的な行動から切り離すことはできない、という信念を固持したからです。独裁者が社会の平和を内部から破壊したならば、国境の平和を保つことはできません。腐敗と混乱と虐待が支配する国家は、必ず近隣諸国を脅かし、地域を脅かし、さらには国際社会全体に脅威をもたらします。
私たちの協力は始まったばかりです。今、私たちは、自由を支持する国際的な力の均衡を形成する歴史的な機会を与えられています。私はここで、「力」という言葉を広義に使っています。それは、軍事よりもさらに重要であるからで、確かに経済力は、思考の力、思いやりの力、そして希望の力であるからです。
私がここヨーロッパを訪れているのは、米国とヨーロッパが、両者の世界的な理想を促進するために、そのパートナーシップの力をどのように使えるかを話し合うためです。2月21日にはブッシュ大統領がヨーロッパに到着し、その対話を継続します。大統領は、欧米間の結び付きを強化する決意を固めています。大統領が先日の就任演説で述べたように、「われわれがこの世界で達成しようとしていることはすべて、米国とヨーロッパの緊密な協力関係の維持を必要とする」のです。
私たちの最大の業績はこれから達成されると私は信じています。9・11後の世界における課題は、冷戦時代に私たちや先達が直面した課題と同様に困難なものです。私たちが再び抑圧と威嚇と不寛容に打ち勝つには、同様の大胆なビジョン、道徳的な勇気、そして断固たるリーダーシップが必要となります。
私たちの義務は明らかです。自由の分水嶺の正しい側にいる私たちには、不運にも正しくない側に生まれた人たちを助ける義務があります。
この義務は、私たちが新たな状況に適応することを要求するものであり、私たちはそれを実行しています。NATOは、加盟国を増やしているだけでなく、そのビジョンをも拡大しています。欧州安保協力機構は、健全かつ自由で平和な大陸において機能しているだけでなく、ヨーロッパ以外でも活動しています。米国と欧州連合の協力計画は、これまで以上に広範なものであり、欧州連合自体と同様、今も拡張を続けています。
私たちは、今日直面している、絡み合う複数の脅威については意見が一致しています。それは、テロ、大量破壊兵器の拡散、地域紛争、破綻した国家、そして組織犯罪といった脅威です。
しかしながら、そうした脅威にどう対処するかという点については、意見が異なることもあります。実際に意見の相違はありました。しかし、過去の相違から先に進む時が来ています。私たちの関係、そして私たちの同盟関係の新しい章を開く時が来ています。
米国は、ヨーロッパと協力して共通のアジェンダに関する作業を進める準備ができています。ヨーロッパも、米国と協力して作業をする準備ができていなければなりません。最終的には、歴史は、私たちの過去の意見の相違ではなく、新たな成果に基づいた評価を下すでしょう。
私たちの将来の成功のカギは、共通の脅威に基づくパートナーシップを超えて、欧米社会だけにとどまらない共通の機会に基づく、さらに強固なパートナーシップを築くことです。
私たちは、その成功を確信することができます。それは、私たちが自由の順風を受けているからです。アフガニスタンの村からウクライナの広場まで、パレスチナ占領地区の街頭からグルジアの街頭、そしてイラクの投票所まで、自由が広がりつつあります。
自由が、私たちの機会と課題を定義します。私たちは、その課題に立ち向かう決意を固めています。
まず、私たちは、より広範な中東構想を通じて、政治的な多元主義、経済的な開放性、そして市民社会の発展を奨励するために協力をします。
その構想の主眼となるのが、「未来のためのフォーラム」です。これは、モロッコからパキスタンまで広がる、20数カ国の国々と民主主義諸国との発展パートナーシップです。このフォーラムの使命は、政治、経済、および教育改革を支援し促進することです。昨年12月にラバトで開催された第1回会合は、大きな成功を収めました。
このように米国とヨーロッパの努力を融合した大胆な改革構想以外にも、この両者は並行した作業を進めています。欧州連合には、「バルセロナ・プロセス」による近代化推進の、10年に及ぶ経験があります。
欧州連合の各加盟国も、アラブ世界とイスラム世界で自由な民主主義の考え方と制度を育むために、何年も努力を続けています。
自由を推進しているのは、欧米の政府だけではありません。米国とヨーロッパに本部を置く各種の非政府機関が、この改革の過程に多大な努力を投入しています。
欧米の市民は、民間人としての活動を通じて、自由な社会の価値観を体現しています。欧米諸国の政府だけでなく、各国の社会が、女性の権利や少数民族の権利を前進させています。
また、政府だけでなく、各国の社会が、自由なメディア、独立した司法制度、そして労働組合結成の権利を取り入れています。私たちの自由な社会にあふれる活気が、改革の過程を活性化しています。これは楽観に値する要因です。
私たち自身の民主主義への道が常に平坦ではなかったように、中東の民主主義改革も起伏のある困難な道となることを、私たちは認識しています。社会によって、前進の方法が違います。自由は、その本質上、その地で生まれたものでなければなりません。自由は選択されたものでなければなりません。自由を与えることはできず、まして強制することはできません。大統領が述べたように、自由を拡張するには何世代もの年月がかかるのは、そのためです。しかし、アラブ世界とイスラム世界における自由の拡張は、先に延ばすことのできない緊急の仕事でもあります。
2番目に、私たちは、アフガニスタンとイラクにおける民主主義の前進を定着させ促進することによって、最近の成功をさらに推進しなければなりません。昨年10月、アフガニスタン国民は、投票をすることによって、アフガニスタンを民主主義の軌道に乗せました。そして今からわずか9日前には、イラクの国民が、政府を選ぶだけでなく民主主義の未来を選択する投票を行いました。
私たちは皆、イラク選挙の投票率の高さに感銘を受けました。指にインキを付けたイラクの男女ひとりひとりが、自爆犯や迫撃砲や斬首刑の脅威にもひるまず、市民としての基本的な権利を行使したのです。
どの国の歴史においても、国民が、その基本的な人間性を落としめる現状を受け入れることを拒否する時が来ます。国民が、自らの人生をコントロールしようとする時が来ます。イラクの人々にとっては、その時が来たのです。
民主主義的な、統一されたイラクを築くためには、まだ成すべきことが多く残っています。それは、イラク国民が率先して実行しなければならないことです。しかし、欧米パートナーシップを形成する私たちも、イラクの人々から私たちに提起された課題に対処しなければなりません。
イラク国民は、驚異的な勇気と決意を示しました。私たちは、それに匹敵する団結と寛大さを彼らに示さなければなりません。
私たちは、イラク国民が政治制度を形成する過程を支援しなければなりません。また、イラク経済の復興と開発を援助しなければなりません。そして、イラク国民が完全に自分たちで警備ができるようになるまで、現地で警備を提供しなければなりません。
3番目に、私たちは、特にアラブ・イスラエル間の外交関係において、新たな成功を目指しています。米国もヨーロッパも、独立した民主主義的なパレスチナ国家とイスラエルのユダヤ国家が隣接して平和裏に共存するという、2つの国家による解決策を支持しています。
そして、私たちは皆、パレスチナ自治政府の改革の過程を支持しています。民主主義改革は、真の和平の基盤を拡大するものだからです。私たちが、1月9日に行われたパレスチナ人の歴史的な選挙に際して彼らを支持したのは、そのためです。
また、ヨーロッパと米国は、ガザ地区および西岸の一部から撤退するというイスラエル政府の決意を支持しています。米国もヨーロッパも、こうした撤退は、まずはロードマップへの前進、そして最終的には、私たち自身の、私たちの明確な目的である真の和平への前進の機会である、と考えています。
私たちは、機会を実績につなげる行動を起こしています。私は、シャロン首相とアッバス大統領との会談を終えてきたところです。私は、2人の意見が、今がチャンスでありこれを逃してはならない、という点で一致していたことに感銘を受けました。私は、2人に対して、この勢いを利用すること、このチャンスをつかむことを促しました。そして、今日行われた、パレスチナ、エジプトの両大統領、イスラエル首相、およびヨルダン国王の会談は、明らかに前進への重要な一歩でした。
米国も各当事国も、今後の困難について、幻想を抱いてはいません。克服すべき深い亀裂がいくつかあります。私は、双方に対して、テロをなくす必要性、パレスチナに新しい民主的な経済・政治・安全保障機関を確立する必要性、イスラエルが自分の義務を果たし、提示された困難な選択をする必要性、そして私たち全員が -- 米国、ヨーロッパ、中東地域の全員が -- イランとシリアに対して、私たちの求める和平を破壊しようとするテロリストに対する支援を停止しなければならない、と明言することの必要性を強調しました。
成功は保証されていませんが、米国は決意を固めています。これは、今後何年間も見られないと思われる、和平の最大のチャンスです。私たちは、イスラエル人とパレスチナ人がこのチャンスをつかむよう援助しています。ブッシュ大統領はこれに専心しています。私も個人的に専心しています。私たち全員が、このチャンスをつかむことに専心しなければなりません。
来月ロンドンで、トニー・ブレア首相が、パレスチナ人による民主主義改革の推進と制度構築を援助するための重要な会議を招集します。私たちは皆、その努力を支持しています。
そして私たちは、いつか近いうちに、イスラエル人とパレスチナ人の間に、またイスラエル人とすべての近隣のアラブ人の間に和平が成立し、私たちもその恩恵を分かち合えるように、今後も責任を分担していきます。
また来月には、G8・アラブ連盟の会合がカイロで開催されます。この会合は、中東の和平と民主主義に対する支持基盤を拡張する潜在力があります。昨年5月のアラブ首脳会議におけるチュニス宣言は、「民主主義的慣行の強化、政治および公共の生活への参加の拡大、および市民社会のあらゆる構成要素の強化を通じて、加速する世界の変化のペースに追いつく」という、アラブ諸国の「固い決意」を宣言しました
この決意が、今回の会合におけるアラブ諸国参加の基盤となっているならば、良い結果につながることは間違いありません。
レバノンにおける私たちの努力も、欧米のパートナーシップが自由の支持を真剣に考えていることを表しています。米国とフランスは共に、国連安全保障理事会決議1559を提起しました。これは、レバノン国民の全面的な主権を回復する国際的な活動を加速させ、かつては活気に満ちていた同国の政治が完全に元の姿に戻れるようにするためのものです。
その過程における次のステップは、この地域における4つ目の民主的な自由選挙です。すなわち今春の外国の干渉のない公正かつ競争的な議会選挙です。
レバノン、パレスチナ占領地区、アフガニスタン、イラク、そしてさらに広範な中東および北アフリカ地域全体で、政治的な対話の性質が変化しつつあります。普通の市民が、これまでには見られなかったやり方で、自分たちの考えを表現し、共に行動しています。このような市民は、抑圧ではなく、寛容と機会と平和に満ちた未来を求めているのです。
賢明な指導者たちは、改革を歓迎しています。私たちは、彼らとその社会が民主主義的な将来を求める時、彼らを支持しなければなりません。
西側諸国が冷戦に勝利したのと同じ理由で、中東でも改革者と調停者が勝利を収めるでしょう。それは、最終的には、解放は抑圧より強く、自由は圧制より強いからです。
今日の過激なイスラム教徒は、人間の精神の潮流に逆らっています。彼らは、残忍な行動をとることができ、その冷酷な残忍性は大きく報道されます。しかし、こうした人々は、世界的な偉大な宗教の主流から外れた特殊な過激グループです。彼らは、未来に対して反乱を起こしているのです。イラクのテロリズムの顔であるアブ・ムサブ・アルザルカウィは、民主主義は「邪悪な原理」であると言いました。私たちの敵にとっては、「自由、平等、友愛」も邪悪な原理となります。 彼らは、人々を解放することではなく、支配することを望んでいます。平等ではなく、服従を要求しています。彼らはいまだに、自分たちと意見の違う者を殺すことは許される、と考えています。
しかし、彼らは間違っています。人間の自由は前進を続け、私たちはその前進の障害を除くことに貢献しなければなりません。私たちは、それぞれの社会が自由の約束を果たす独自の道を見つけることを支援することによって、それを実現することができます。
私たちは、自由を目指す社会が、健全な開発戦略と自由貿易を通じて、貧困を減少させ経済を発展させる努力を援助することができます。また、家族を引き裂き、個人を破壊し、世界の大陸全体の発展を不可能にする、HIV・エイズの流行やその他の伝染病との闘いに、積極的に、かつ思いやりをもって対処しなければなりません。
最終的には、私たちは開発途上国を自立した成長と安定への道に導く方法を学ばなければなりません。つまり、汚水処理工場を建てたり学校の建物を修理したりすることは、報道の自由、独立した司法制度、健全な金融制度、複数の政党、そして真の代議政体といった、一定水準の社会に不可欠な要素を確立することとは別だからです。
開発と透明性と民主主義は、相互に強化し合います。法の支配の下で自由を拡大することが、前進の実現のために最も期待されるのは、そのためです。自由は、新の富を生み出す創造性と活力を解放します。自由は、腐敗のない制度へのカギであり、対応性のある政府へのカギとなります。
皆さん、今私たちは、欧米同盟の、かつてないチャンスを迎えています。私たちは、世界的な自由を21世紀の組織化の原理とすることによって、正義と繁栄、自由と平和のために、世界の歴史的な前進を達成することができます。しかし、世界的なアジェンダには、世界的なパートナーシップが必要です。ですから、私たちは、共通の努力をさらに拡大しようではありませんか。
米国が、ヨーロッパの結束の強化を何よりも歓迎するのは、そのためです。より安全な、より良い世界を築くためのパートナーとしてのヨーロッパが力を増すことは、米国にとっても利益になることです。従って、それぞれが意見と経験と資源を出し合い、それを民主主義的な変化のためにどのように利用するかを話し合い、決定しようではありませんか。
私たちは、世界の現状に対処しなければなりません。しかし、世界の現状を容認する必要はありません。フランスの自由、米国の自由を築いた勇敢な人々が、世界の現状に満足していたとしたら、今私たちはどのような状況になっていたでしょうか。
彼らは、歴史とは単に発生するものではなく、作られるものだということを知っていました。歴史は、信念と献身と勇気をもって、自らの夢を貫く男女によってつくられるのです。
大西洋を越える私たちのパートナーシップは、断ち切ることのできないきずなに支えられて、この闘争に耐えるだけでなく、今後ますます発展するでしょう。私たちは、相互を深く思いやり、相互に尊敬の念を抱いています。私たちには力があります。しかし、自由と繁栄をいまだ達成できずにいる人々のために自らの価値観を行使するとき、私たちは最も強い力を発揮することができます。
絶好のチャンスが私たちを待っています。自由のために、今、共にこのチャンスをつかもうではありませんか。
ご静聴ありがとうございました。
問 私は、ベンジャミン・バルニエと申します。本校のジャーナリズム専攻の学生です。私の質問はごく簡単なものです。イラクのシーア派は、イスラム教が立法の唯一の基盤となることを望んでいます。これは良いことだとお考えになりますか。そうではないとすると、政教分離を維持するために、連合諸国には何ができるとお考えになりますか。
ライス長官 とても良いご質問をありがとうございます。私は、イラク国民が極めて政治的なプロセスを開始すると考えています。彼らは、新しい指導者を選出したところであり、これから政府を任命した上で、この機会を利用して、シーア派、クルド人、スンニ派、トルコマン人、およびその他の少数民族を含むイラク社会の構成要素をすべて結束させる制度や手段を探さなければなりません。
民主主義の過程とは、意見の相違を平和的に克服する過程です。イラクの多数民族であり、おそらくこの選挙で大勝したシーア派は、彼らを圧制と恐怖の下に置いたイラクの同胞に対して同じことをしない、という責任を知っているはずです。彼らは、スンニ派と接触すること、クルド人と接触することに言及しています。
彼らは、イラクには異なる宗教的伝統、異なる政治的伝統、異なる民族グループがあり、今それらが皆、統一されたイラクとならなければならないという事実を受け入れることになると思います。
一部のシーア派が、大多数のイラク人が神権政治あるいは聖職者による政治を受け入れないであろうことは理解している、と述べたことを、私は心強く思います。従って、彼らは今後イスラム教の適切な役割を見つけていくことでしょう。多くの社会がそれを達成しており、しかも民主主義制度の下で達成しています。
私たちが理解しなければならないのは、イスラム教と民主主義は本質的に対立するものではないということです。この2つは、例えばトルコに見られるように、共存することができます。また、イスラム教がどのような役割を果たすことになるにせよ、それは他の宗教的伝統に対して寛容なものとなること、また少しでも神権政治に近づくような制度を望まない多くの集団の存在を認めるものとなることを、私は確信しています。イラク国民には、そのような伝統はなく、私は彼らの結論が、私たちを驚かせるような優れたものとなることを期待しています。
これは困難な過程となるでしょう。そして、彼らの交渉や議論が決裂するのではないか、ゴールに到達しないのではないかと心配になる時が来ることは確実です。それが政治のプロセスというものです。私たち自身の政治のプロセスにおいても、1789年に、建国に関わった人々の一部が、憲法制定会議を退席したことがありました。ですから私は、イラク国民もこの時期を乗り切り、民主主義的な統一されたイラクを築くものと考えています。
司会者 ありがとうございました。もうひとつ学生からの質問をどうぞ。
問 こんにちは、国務長官。私は、アン・ギャバノーと申します。行政学大学院5年生です。多国主義が今後とるべき形態について、米国はどのように考えているか、というのが私の質問です。例えば、米国は、マデリーン・オルブライト氏がポーランドで発足させた民主主義会議のような地域的な、あるいは特定の目的のための連合を通じて行動した後に、国連による措置を使う方が適切であると考えていますか。
ありがとうございます。
ライス長官 どうもありがとうございます。私たちは、使用可能な手段はすべて利用しなければなりません。米国は、国連の創設国のひとつです。私たちは、国連が強力かつ活動的、効果的であることを望んでいます。そして米国は、多くの課題を国連に提出しています。例えば、現在レバノンで起きていることで、シリアに関して注意を喚起することを可能にした決議を準備する上で、国連は助けとなり、極めて重要な役割を果たしました。
国連は、イラク国民を支援する多国籍軍の一部として現在イラクにいる連合軍のために権限を与える上で、極めて重要な存在となっています。国連、そして特に国連のバレンズエラ、ピレリ両氏は、イラクの選挙でイラク国民の支援に大きな成果を上げました。彼らはアフガニスタンでも非常に活発に活動しました。 このように、枚挙にいとまがないほど、国連は、意思決定機関としても、またそうした決定の実行手段としても、重要な存在です。
そのほかにも重要なフォーラムがいくつかあります。時にはNATOを通じて行動することができます。 OSCEを通じて行動できることもあります。また、特定の利害を持つ国々から成る、特定の目的のための地域別の連合を形成することが適切である場合も増えています。その例を3つ挙げます。
その第1の例として、米国と、ロシア、中国、韓国、日本が、北朝鮮と6者協議を行っています。これらの国々は、この地域の隣国として、朝鮮半島の核武装を確実に防ぐことを望んでいるからです。
これは、地域の問題に対処するための特定の目的のための対応の一例です。ちなみにこれは、国際的に極めて多大な影響を及ぼし得る問題に、近隣諸国で対処をしようとしている例です。
2番目の例としては、津波の発生当初・・・津波が襲ったときに、地域に海軍を配置していた米国、日本、インド、オーストラリアの各国が中核的なグループを形成し、海軍の持つ能力を使って、津波の発生当初から被災地に援助が提供できるようにしました。
そして、3番目の例は、「大量破壊兵器拡散防止構想」という非常に大規模な連合である特定の目的のためのグループです。これはフランスも参加しているもので、国際法および国家法を利用して、大量破壊兵器に関連する危険な貨物の輸送を阻止することを目的としています。
このように、私たちは国連と安全保障理事会に敬意を払っており、そうした機関を利用することを望んでいます。しかし、それ以外のメカニズムが同様に重要となる場合もあります。私たちは、どのような形態を利用するかだけでなく、どれだけ効果を発揮できるかによって評価されるべきであると思います。
司会者 ありがとうございました。もちろん、フランス語で質問されてもけっこうです。
どうぞ。
問 (男性通訳を介して)こんにちは、長官。私は、フランス民主主義イスラム評議会の会長です。バグラム出身のフランス市民として、私は・・・ここには左からも右からも何人かの人たちが集まっており、彼らは民主主義を生きている、私たちの知っている人たちであり、私たちは彼らに好意を抱いています。彼らは誠実に話をする人々だからです。フランス人、米国人を問わず・・・アラブ人の立場に立ってみると・・・彼は西側の国に住んでいます。彼は民主主義を生きています。彼は自由に生きています。
長官は、アラブ世界またはイスラム世界を歴訪される間に、表現の自由または民主主義が尊重されている国がひとつでもあると、一瞬でもお考えになりますか。ブッシュ大統領が、自分は世界を圧制と神権政治と独裁から解放するためにここにいるのだと私たちに言うとき、アラブ人は皆、米国が彼らのために築こうとしている国に再び暮らすことを夢想します。
残念ながら、そして私の質問は、ブッシュ大統領と米国によって保護されるに値するアラブまたはイスラム国家がひとつでもあるか、ということです。努力をしているアラブ国家がひとつでもあるでしょうか。長官のお答えをお願いします。
問 (女性通訳者を介して)こんにちは。私は、フランス・イスラム評議会の会長です。私は、民主主義国家の市民として、理解をしたいと考えています。ここには政治的に左からも右からも大勢の方々が集まっています。彼らは、私が代表する・・・失礼しました・・・私の知っている、私が好意を抱いている方々です。それは、彼らが真実を語る人々だからです。アラブ諸国の中でひとつでも、この世界のアラブ諸国の中でひとつでも、真にブッシュ大統領による保護に値する国がありますか。
ライス長官 もう少し長かったように思いますが、ご質問は理解しました。アラブの人々についてお話ししましょう。アラブの人々には、現在彼らが直面している未来よりも明るい未来を迎える権利があります。アラブ諸国は、世界の中で、現状を容認していてはならない地域のひとつです。
適切な教育を受けていない大勢の人々がいます。アラブの有識者が国連に提出した報告書によると、アラブ22カ国全体のGDPが、スペインのGDPに及びません。これは、多くの面で文明の発祥地の一部であった文化、すなわちアラブ諸国の文化にとって、許容しがたいことです。なぜこうした状況になっているのでしょうか。
このように、自由がないこと、自由の欠如が、この地域に極めて多大な悪影響を及ぼしてきました。そして残念ながら、私たち西側の者は、そうした自由がないことに、あまりに長い間目をつぶってきました。
大統領は、ロンドンのホワイトホールでの演説で、自由を犠牲にして安定を得ようとした60年間に及ぶ努力の結果、そのいずれも得られなかったことについて語りました。その代わりに得たのは、敵意に満ちた徹底的な憎悪のイデオロギーを生むような絶望感でした。それは、ある晴れた9月の朝、米国のビルに飛行機を衝突させ、あるいはマドリッドで電車の駅を爆破し、また地域と背景は異なるものの、ロシアで無力な子どもたちを人質にとった、憎悪のイデオロギーです。これが中東の未来であってはなりません。
従って、われわれの安全保障の面からも、道徳的な良心からも、これ以上この地域が、自由のもたらす繁栄と人間の尊厳から孤立させられていてはなりません。ですから、これはブッシュ大統領が何を保護するかという問題ではありません。私はこれを明確にしておきたいと思います。
先に申し上げたように、これは軍事力の問題ではなく、思想の力、自由を否定されることに耐えられなくなっているこれらの社会の人々を支持することのできる力の問題です。
従って、これは米国だけでなく、過去に誰かが人間の尊厳と人間の自由を支持してくれたために幸運にも自由な世界に住むことができる者全員にとって、大きな目標です。私たちの祖先が、それをしてくれたのです。
今、私たちがこのように解放と自由を享受できるのはそのおかげです。私たちが圧制を打倒し自由な世界で暮らすことができるように、過去に、誰かが私たちのために立ち上がったのです。そして、私たちも、新たな未来を求める中東の人々のために、同じことをしなければならないのです。
司会者 ありがとうございました。右側の方、どうぞ。
問 パリ政治学院の講師で(聞き取り不能) 長官、私は、化学・生物兵器の拡散についてお聞きしたいと思います。核兵器に関しては、IAEAおよびNPTという多国間制度が、不完全ではあるものの、少なくとも存在していますが、化学・生物兵器に関してはそのような多国間制度がないからです。
化学・生物兵器については、多国間の検証制度を確立するためにどのような措置が計画されているのでしょうか。米国の現政権が4年前に誕生して以来、そのような作業はすべて行き詰まっていると理解しています。
ライス長官 ありがとうございます。私たちは、化学・生物兵器の問題に、非常に積極的に対処しようとしています。しかし、ご存知の通り、それは容易なことではありません。
検証の問題について述べられましたが、この問題は、化学・生物兵器に関しては特に深刻かつ困難な課題です。それは、生物兵器や化学兵器を製造する手段が、全く無害な、いわゆる軍民両用プロジェクトの製品に使われるものと同一であることが多いからです。例えば、プールの浄化に使う塩素が化学兵器の原料となったり、ガンの治療法を研究する実験施設が生物兵器の製造に使われたりします。また、こうした兵器は、極めて狭い場所で製造することができ、容易に隠ぺいできます。
相手が非常に閉鎖された国で、外国を欺き検証を阻止しようと努力している場合には、特に困難な状況となります。ヨーロッパ諸国、米国、そして世界各地の友好国・同盟国をはじめとするほとんどの国は、開放された社会であり、検証をめぐる問題ははるかに少ないと、私は確信しています。こうした諸国が兵器を作らないと宣言した場合には、「ルモンド」にしろ「ニューヨークタイムズ」にしろ、誰かが実情に関する情報を必ず発信します。問題は、周囲を欺こうとする閉鎖された独裁社会です。
私たちは、各種の条約に加盟し、各種の条約の下で積極的に活動してきました。しかし、さらに努力を強化し、例えば、生物・化学兵器計画の存在を示すと思われる証拠を発見した場合には、その国の責任を追及する準備ができているようにしなければなりません。
これは非常に深刻な問題です。生物兵器や化学兵器はテロ組織にとって、はるかに扱いやすい、という点からも深刻な問題です。米国は、わずかな量の炭疽(たんそ)菌が、どのような影響を及ぼし得るかを体験しています。従って、これは非常に深刻な問題です。こうした一部の国家の閉鎖性を考慮すると、これは情報活動に関わる極めて大きな問題ですが、すでに国際条約が存在しており、私たちはその枠組み内で努力を続けていきます。
司会者 皆さんのご想像通り、ライス長官のスケジュールは非常につまっています。あとひとつだけ質問の時間がありますので、短い質問をひとつだけお願いします。
問 私の名前はフランソワ(聞き取り不能)。私はパリ政治学院で経済学を教えています。
司会者 もう少し大きい声でお願いします。
問 長官が、この非常に興味深いスピーチを行う場所として、この国を選ばれた理由をお聞かせください。
ライス長官 どうもありがとうございます。
まず何よりも、フランスには、討論と知的な刺激という優れた伝統があります。ここは、そうした討論を育む素晴らしい機関です。そして、米国とフランスが過去に、共通のアジェンダをどのように推進するかを巡って、時に対立してきたことは周知の事実です。
良いニュースとしては、米仏両国は時として意見を異にする状況があり、そうした状況が注目されがちですが、大枠では両国は諸問題について引き続き協力してきています。
私は、米仏関係は理論上よりも実際の方がはるかに良好である、と言うことがあります。これは、実際に両国が成し遂げていることを見れば明らかです。例えば、レバノン問題やアフガニスタンにおける協力関係、ボスニア・ヘルツェゴビナ、さらに広範囲のバルカン地域での協力からコソボ問題に対する対応、そして拡散に対する安全保障構想などです。このほかにも枚挙にいとまがありません。例えば、テロとの戦いや、両国が共同で行っている情報活動や法執行活動などは、両国の深く広範囲な、そして積極的な関係を示すものです。そしてこの関係は、世界平和のために大変効果的なものです。
両国間に意見の相違があったとしても、それは友好国としての相違です。そして、私たちが共通の価値観を持つだけでなく、こうした価値観に基づいて築かれる共通の未来を持つことを忘れない限り、これまでにも増して強い関係を築く、言うなれば米仏関係や米欧関係におけるエネルギーの再生を見ることができる、と私は考えています。私たちの行く手には素晴らしい可能性が待っているからです。
この点に関して、最後に私の個人的な回想を語らせていただけるならば、私は1989年に幸運にもこの地を訪れました。ところで、先ほど、私の初めてのパリ訪問が1989年だったと申しましたが、実際には1979年に、ロシアでの語学研修に向かう途中、初めてパリを訪れていました。この地を訪れるのはいつでもとても喜ばしいことです。
1989年に私はフランス革命200周年記念に出席するため、ここにおりました。この年は、特筆に値する年でした。私は、幸運にも、冷戦が終わる時に、ホワイトハウスのソビエト問題専門家として、東欧の自由化、東西ドイツの統一、ソ連の平和的解体の始まりに遭遇することができました。これらは、それまで決して実現することはないと考えていた出来事でした。まして自分自身が関わるチャンスがあるとは夢にも思っていませんでした。
しかし、そのときに私は、自分が、1946年、1947年、1948年、そして1949年に下された正しい決断の果実を収穫する幸運に恵まれていただけだったということに気付きました。それは、第2次世界大戦が終結し、各国の指導者らが、自由と独立の前進に対する数々の脅威 - 戦略的脅威に直面したときに下した決断です。
1946年には、ヨーロッパの大半が荒廃し、ソ連からヨーロッパに共産主義が流れ込むのではないかという現実的な懸念がありました。1947年には、ギリシャとトルコで内戦が勃発しました。1948年に、チェコスロバキアで危機が発生し、民主主義政府が崩壊しました。同じく1948年、ベルリン危機によって、ドイツは分割され、この状態が永久に続くと思われていました。そして、1949年には、ソ連が予定より5年早く核実験を行い、中国では内戦の末、共産主義政権が誕生しました。こうした歴史を思い起こしてください。
当時の指導者たちは、どのように正しい決断を下したのでしょうか。どのようにNATOを結成したのでしょうか。どのようにヨーロッパ統合を支えたのでしょうか。そして、50年後にドイツの統合を実現させ、他のヨーロッパ諸国を圧制から解放し、フランスやドイツ、そして米国だけでなくポーランドやチェコ共和国、スロバキア、そしてバルト海諸国をもメンバーとするNATOが検討されるような環境を生み出すことになったアジェンダを、どのように前進させたのでしょうか。こうしたことをどのように実現させたのでしょうか?
それは、各国が同じ価値観を持った同盟として常に結束していたからです。確かに、過去に自由や独立のなかったところへ自由や独立が浸透していくのは、大変難しいことに思えます。イラクの自爆テロの写真を見ると、イラク国民が自由で安定した民主主義国家を建設しようとしていると想像するのは、大変難しいことだと思います。アフガニスタンの現状を思うと、まだこれからの道のりは長く困難なものであると思えます。しかし、ここ1カ月程、あるいはその少し前から、何かが変わってきています。
グルジアの「バラ革命」やウクライナの「オレンジ革命」に、またパレスチナの人々が、武装インティファーダに終止符を打ち、イスラエルとの平和共存を実現すべきだと主張する指導者を選ぼうとしていることに、感銘を受けない人はいないでしょう。アフガニスタンの人々が、女性がかつて顔を隠し、親族の男性が同行しなければ医療さえも受けることができなかった、開発の非常に遅れた社会に住むこの国の人々が、投票するためにほこりっぽい道に並んでいるのを見て、また今ではこの国の女性たちが投票し、公職に立候補するのを見て、感銘を受けない人はいないでしょう。そして、イラクの国民が脅威に立ち向かう勇敢な姿を見て、心を動かされない人はいないでしょう。
この世界で多くの変化が起きています。中東で多くの変化が起きています。そして私たちが、この偉大な同盟関係の下で協力し、私たちの価値観や努力や資源を、この大義のために投入するならば、これまで私たちが見てきたものは、自由が達成し得ることのほんの一部に過ぎないと言うことができるでしょう。
どうもありがとうございました。


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