
規制改革・民間開放会議におけるジェームス・P・ズムワルト経済担当公使の意見表明
(ハワード・H・ベーカー駐日米国大使の代理)
2004年11月22日
1. 挨拶と御礼
この度は規制改革・民間開放推進会議にお招き頂き、意見表明の機会をちょうだいしましたことに心より御礼申し上げます。皆様の熱心なご活動に対しアメリカ政府は最大の敬意を表するとともに、皆様が重要な役目を遂行されるにあたり、我々も何かお力になることができればと思っております。貴会議が、前身である総合規制改革会議の権限を強化した形でその任務を引き継がれ、規制改革・構造改革を様々な分野にわたり強く主張なさっていることを我々は歓迎しております。尚、この場をかりて、本日ベーカー大使自身が出席できないことを本人に代わりまして深くお詫び申し上げます。今日、こうしてEUと日本経団連の代表の方々と貴会議でお話しさせて頂けることをたいへん喜ばしく思います。我々は、規制改革と透明性の向上により日本経済の発展が継続し、日本の消費者ならびに投資家やビジネスにとって、よりよい環境となることを共に望んでおります。
さて、10月14日ワシントンDCにて米国通商代表部のジョゼット・シャイナー次席代表と藤崎一郎外務審議官が日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づき、今年度の両国の規制改革要望書(要望書)を交換いたしました。事務局の方から、皆様のお手元にお配りいただいている英語の原文と日本語の仮訳は大使館ならびにUSTR(米国通商代表部)のホームページにも掲載してありますので、そちらからも入手可能です。日米間では規制改革に関する問題のほとんどがこのイニシアティブの下で取り扱われていますが、中には日米投資イニシアティブで取り上げている点もあり、今日はそれらを含めお話しさせていただきます。
我々の今年の要望書には、日本の経済成長と市場開放を促進することを目的とした改革提言が含まれています。また、米国は、規制の透明性、通信、情報技術(IT)、医療、エネルギー、競争政策、郵政民営化など、小泉内閣が改革に重要であると位置付けた分野の問題に焦点を当てる努力をしております。
米国は、国際経済の発展のためには健全な日本経済が不可欠であり、構造改革ならびに規制改革が日本の潜在的経済成長力を高めるものと考えています。米国は小泉首相の思い切った経済改革の課題を強く支持しており、その 課題への取り組みにより促された最近の日本経済成長を歓迎します。改革によってもたらされたこの経済の明るい兆しは、改革をより一層推進する際の良いインセンティブとなると考えます。また、小泉総理大臣が2004年10月12日の国会における所信表明の中で、「構造改革なくして日本の再生と発展はない」と述べ、改革へのコミットメントをを再確認したことを我々は歓迎します。しかし、景気の回復の兆しが見えてきたからといって改革の手を緩めることのないよう日本に期待したいと思います。皆様の今日までの厳しい決断と大変な努力があってこそ、ここまで成果を出せたわけですから、これからも是非頑張って頂きたいと思います。
2. 規制改革の進展と展望
まずはじめに、日本の規制改革におけるこれまでの成果について、要望書の主な提言に焦点をあてながら述べさせて頂きます。
米国は、地方レベルでの構造改革および規制緩和を通じ成長を促進することを目指した画期的な取り組みである日本の構造改革特別区域制度(特区)を引き続き支援します。この特区の取り組みは、米国ならびに諸外国の企業にも恩恵をもたらし始めています。例えば、成田空港における国際物流特区は米国の国際宅配便会社にとってのビジネス環境を大きく改善しました。
電気通信の分野に関してはこの数年の間、日本政府が政策及び規制改革の促進に尽力したことで具体的な成果がもたらされています。DSL、FTTH、VoIPを含めた、数々の革新的な技術や安価な先進的サービスが実施された事からこれは明らかです。2004年4月より実施された電気通信事業法の改正もまた、この分野の競争的な環境を改善しました。
もちろん残されている課題はまだあります。例えば、規制機能を省庁の管轄から独立した機関へ移行し、規制及び政策判断への民間の参画を増やし、市場力を持つ事業者による弊害を避けるための支配的事業者に対するセーフガードを強化しなければなりません。2003〜2004年の相互接続料算定方法の構造的欠陥を解決することで、コストに基づき妥当な相互接続料金の実現を促進し、その結果効率的な競争を促進することも必要です。また、日本の電波管理政策および業務がより透明性を持って運営され、技術の革新と事業間の競争そして有効な電波利用を促進するよう求めます。
IT分野で日本はe -Japan戦略に掲げられた「2005年に世界最先端のIT国家となる」という目標を達成するため、ここ数年間に数々の規制障壁を除去し重要な進展を図ってきました。この結果、ブロードバンドが広く普及し、世界においても最も安価で最速のブロードバンド利用を可能にするなど目覚しい変ぼうを遂げました。また、民間、政府ともに、ITの利活用を拡大させ、手続のオンライン化を推進したため、日本の電子商取引市場は世界でも最も大きな市場の一つにまで成長しました。
本年の要望書には、知的財産権の保護を強化するためのいくつかの提言を盛り込んでいます。音声録音およびその他の作品の著作権保護期間を延長するべきである、といった提言がその一例です。また、オンライン上のデジタル・コンテンツの著作権侵害を阻止するためのより強力な施策を実行する、電子商取引を妨げる既存の法律や規制を排除する、オンライン取引の安全性を向上させる、といった提言もしています。さらに、市場アクセスの改善に向けて、電子政府の情報システム調達に関する改革を実施するよう日本に求めています。
より広義の提言としては、民間部門のイノベーションを奨励するための新たな法律や政策が国際慣行に沿い、民間部門の自主規制ならびに技術的中立性をを推進するよう日本に求めています。
エネルギー分野で日本は、電力小売市場においては2005年までに約63%(2003年の水準の2.4倍)、ガス小売市場においては2007年までに約50%(2003年の水準の1.25倍)まで自由化範囲を拡大するという明確な道筋を作りました。米国はこれに向けた日本の努力を支援し、透明で信頼性があり、公平で新規市場参入に有意義な機会を提供する真に競争的なエネルギー市場の確立のため追加的手段をとるよう日本に求めています。例えば、LNGターミナルに対し、意義ある第三者アクセスを提供するための改革を実行するよう提言しています。また、我々は貴会議と同様、コジェネレーションや他の電源を販売網に接続するための措置を講ずるべきであると考えています。これらの改革は、日本が国際的競争力を持つ水準までエネルギー産業コストを削減し、消費者や業務用ユーザーによる経済的な電力・天然ガスの利用を促進します。
医療分野においては、皆様よくご承知のとおり、日本は、ひっ迫する財政と急速な高齢化に対応するため、医療制度の改革を推し進めています。注目すべきは、日本における平均的高齢者の医療費は65歳以下のそれに比べて5倍以上で、それが過去10年間にわたり高齢者医療費を年率8%押し上げている点です。医療機器・医薬品の薬事規制と償還価格制度を改善する事が、日本の医療制度改革の鍵となる要素です。
本年度の要望書では日本に次のような提言をしています。
- 医薬品医療機器総合機構の立てた重要な目標を順守し、審査と承認を迅速に行うこと。
- 総合機構が製品審査の迅速化に成功したかどうかを評価する効果的方法を、業界との対話を通じ確立すること。
- 海外監査や工場査察が新製品の承認を遅らせないことを確保すること。
- 第三者認証機関による医療機器製造所の監査結果を受け入れること。
- 審査官の専門性を強化すること。
- 審査および安全対策に関連する不服申し立ての過程を確認し明確にすること。
また、医薬品研究や医療技術の進歩に報酬を与え、促進するためにより適切に加算を適応すること、ならびに革新的製品の価値を十分に認める医療機器・医薬品の価格算定ルールを確立することを米国は望んでいます。
日米投資イニシアティブの下、日本が医療サービス分野を営利企業に開放することを我々は提言しています。株式会社の所有と経営への参入を認めることは、競争を促進し生産性を高め、患者や医師により多くの選択肢を与えるとともに、新しい技術への投資を増加させることでしょう。これに向けた一歩として、病院や診療所が、営利企業に外部委託できる特定医療サービスの範囲の拡大を求めています。この経営選択を、各種撮影や慢性病の治療など、反復的で患者の安全性やプライバシーの面での危険性が低い医療行為を伴う他の分野に拡大することにより、患者・医師・病院ともに恩恵を受けます。
また、医療サービスの規制の枠組みを改革することに対して日本がとても慎重であることを我々は認識しています。最近、特区において株式会社の参入が認められたものの、その参入は、国民健康保険が適用されない限られた範囲の高度医療サービスの提供のみにとどまっています。さらに、最近決定された混合診療のための国民健康保険の部分的適用は非常に限られた診療と医療機関に限定されています。混合診療の禁止を解除し、特定の医療サービスの外部委託の範囲を拡大するなど、より柔軟性のある医療サービス特区を設置することにより、民間投資を誘致する可能性の高い日本のサービス市場を拡大し、医療分野における規制改革に拍車をかけます。
金融サービスに関しては、ノーアクションレター制度の改善、国内銀行と対等の立場で、外国銀行の支店が信託と銀行業務を同時に従事することを認めること、貸金業法が定めるディスクロージャーの要件を電子的通知により具備することを貸金業者に認めること等を日本に提言しています。
米国は、独占禁止法の強化に向けた最近の日本の努力を歓迎します。特に、法人措置減免制度の導入、および課徴金を引き上げる提案は、独禁法施行の強化と日本の独占禁止施行制度を国際的傾向に合わせるための重要な一歩となります。早急に改正案が通ることを我々は望みます。
透明性の向上と市民参加による規制の設定を促進するための貴会議のこれまでの努力を称えると共に、これからもその努力を継続していかれることを期待します。我々は、日本政府がパブリックコメント手続きの改善を検討していることを歓迎します。これは前々から望まれていたことです。現在の実施状況では本来パブリックコメント手続きを通して反映されるべき一般の意見が取り入れられていません。意見募集期間はあまりにも短く、また、省庁は提出された意見の大部分に耳を傾けていません。これを踏まえ、問題解決に向けたいくつかの提言をしています。
2008年までに日本の外国直接投資(FDI)を倍増するという小泉総理大臣の目標を我々は引き続き支持します。日本のような先進国の経済ではFDIの80%がM&Aによるものなので、投資家は新しい国境を越えたM&A手法の導入を求めています。外国企業との三角合併を認める法務省の最近の商法改正案は、我々の投資家にとって心強いことです。しかし、税制上の措置がかなり重要な点といえます。というのも、新しいM&A手法も株式交換が課税対象となればほとんど使われないかもしれません。日本への投資を促進するには効果的な新しい税の課税猶予が必要です。また、日米投資イニシアティブの下、我々は日本の教育制度がより国際化されるよう教育分野における規制環境の開放に焦点をあてています。
日本において必要とされる効率的な国際的法務サービスならびに法的係争を迅速かつ廉価に解決できるメカニズムを備えた法務環境を創造することは、日本経済の健全性、特に日本市場において安全で効果的な商取引活動を確保する上で重要です。米国は、2003年に日本がいわゆる「外弁法」を改正し、日本の消費者の利益のために、外国弁護士が日本弁護士と自由に提携を結ぶことを可能にしたことを称賛します。米国は、これらの改正事項が、自由化に向けた改正法の精神とその文言に則って実施されることを期待します。また、日本国民が紛争を迅速かつ廉価で解決することを助ける裁判外紛争処理手続(ADR)を整備するとする日本のコミットメントを歓迎します。
米国政府は、日本の新規制改革・民間開放推進3か年計画に流通関係の項目が入ったことを歓迎し、流通分野で規制改革を推進させる日本国政府の今後の努力に期待を寄せています。商品を迅速かつ安価に通関させ、消費者の手に渡るように動かすための有効な手続きは、経済効率向上への肝要な手段です。米国政府は通関手続きの改善や全国に及ぶ通関手数料の削減により、日本の国際港の競争力を高めるために日本国政府が取った方策を歓迎します。しかし、通関手数料を全国的にゼロまで削減し、小額商品の課税計算に関してCIF(運賃保険料込み価格)からFOB価格(本船積み込み渡し価格)方式へ移行するなど、さらなる努力を続けることを要望します。
小泉総理大臣は2010年までに日本への外国人観光客の数を倍増するという目標を掲げました。この目標を実現するための一歩として日本における国際空港の着陸料の設定に使用されている計算方法に透明性を導入することがあげられます。国際航空運送協会(IATA)によると成田国際空港と関西国際空港の着陸料は世界1高いということです。もしこれを引き下げたら ― ちなみに去年成田空港は230億円の利益を上げています ― この二つの空港に出入りする外国の航空会社のコスト削減につながり、運輸業界ならびにそれに付随するホテル業、商業、旅行業などの業界の発展促進にもなるでしょう。さらに、航空券に対するIATA運賃の70%割引下限の実施を取り止め、航空会社による運賃価格設定に関し、市場状況への対応をより柔軟に行えるよう30日前の運賃届出制を廃止し、またダブルアプルーバル(両当事国承認)制度も廃止するよう日本に要望しています。さらには、観光を促進し、経済の効率を向上させることにより経済に恩恵をもたらすべく、商品とサービスへの支払手段としてのクレジット・デビットカードの受け入れとセキュリティーの改善を日本に提言しています。
日本はようやく「ゾンビ企業」の再編に向けて進展を遂げてきました。日本のビジネスの再生には、より流動的な雇用市場ならびに確定拠出年金の拠出限度額のさらなる引き上げや働く女性を増やすため託児所の拡張など様々な措置が不可欠であると考えます。市場原理に基づく効率的な企業再生のためには、日本は法務手続きの迅速化と事業再生融資を受ける機会拡大のため、破産に関する制度を改革する必要があると考えます。
3. 郵政改革と農業
最も重要な事柄を最後に残したという訳ではないのですが、以前から規制改革の中で取り上げてはいたものの、今年、特に焦点を当てた分野である「郵政民営化」の重要性を強調させて頂きたいと思います。また、今年の規制改革イニシアティブで全く新しい分野として取り上げた「農業」についても触れたいと思います。
郵政民営化の複雑な取組みは、日本経済にとっても、また、日本の保険、銀行、宅配便市場における公平な競争を確保するためにも、重要な意味合いを持っています。我々は、民営化は市場原理に基づくべきであると信じており、従って、民間企業と比べて日本郵政公社が持つ優位性の完全撤廃を含むべきであると考えています。よって、米国政府は、経済財政諮問会議が日本郵政公社と民間企業の競争条件の同一化を要望している事を歓迎します。この目標を完全に達成するためには、いくつものステップを踏まなければなりません。それは、日本郵政公社に民間企業と同様の法律、規則および義務を課す事から、新しい4つの会社で相互補助が行われる事によって不公平な優遇が発生しないよう適切な手法をとる事にまで及びます。我々は、これらのステップが民営化の過程においてなるべく早い時期に実施され、また民営化を通して新たな優遇措置が作られないよう求めます。この競争条件の同一化が完全に整備されるまでは、日本郵政公社が保険や銀行の新商品の導入を一時停止するよう、米国政府は日本に引き続き要望いたします。
農業については、今年初めてこの分野に関する事項(主に植物検疫にかかわる事項)を規制改革要望書で取り上げました。なぜならば、日本が農産品の輸入を妨げるために技術障壁に依存する事が増えていると、我々は感じるからです。
4. 終わりに
最後に、貴会議の皆様におかれましてはすでに十分ご理解されていることと思いますが、この機会に再度、規制改革・構造改革のもたらす2つの根本的な恩恵、すなわち、市場の拡大と投資家の信頼について、述べさせていただきたいと思います。米国の経験では、透明性を高め、規制を減らせば減らすほどビジネスは経費を抑えることができ繁栄します。これからも経済成長の足かせとなる規制の緩和に向けて日米間でお互いの経験から学び、意見交換を続けていきたいと思います。
本日はこのような特別な機会を頂き、誠にありがとうございました。規制改革・構造改革を通して日本経済回復を支えるための皆様の熱意とたゆまぬ努力を米国政府は応援します。もし我々米国政府、大使館ならびに私に出来ることがありましたらどうぞ気軽にご連絡ください。
御静聴ありがとうございました。皆様からの質問を喜んでお受けしたいと思います。


駐日米国大使