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連邦議員選挙

ジョン・H・オルドリッチ

 
2001年2月27日、米国連邦議会上下両院合同会議で、就任後初の演説を行うジョージ・W・ブッシュ大統領 (c AFP/CORBIS)

1997年1月7日、第105連邦議会の開会に当たって宣誓就任する下院議員 (AP/Wide World Photos )

  2004年の選挙で、マスコミの関心は大統領選挙に集中するが、米国民は大統領以外にも大勢のさまざまな公職者を選出することになる。中でも連邦議員選挙は、大統領選挙に匹敵するほど競争が激しく、重要性も高い。現在、連邦議会における2大政党の勢力はかなり接近している。下院(全435議席)では、共和党がわずか12議席の差で過半数を占め、上院では共和党が100議席中51議席を占めるという僅差で多数党となっている。

 連邦議員選挙が重要性を持つのは、議会が政策策定に中心的な役割を果たすからである。議院内閣制と異なり、米国では連邦議会と大統領の権限が分かれている。法律はすべて連邦議会が作成し、連邦議会で承認されなければならない。また、もう1つ議院内閣制と異なる点として、党規がそれほど厳密に守られないことが挙げられる。議員には、それぞれが最良と考える政策、そして自らの再選に最も有利となる政策に投票する自由がある。従って、議会の指導者らは、党規に沿って結束した政党の支持に頼らず、議員1人1人を説得しながら連合を築いていかなければならないため、連邦議会での採決の結果は、両党にとって毎回大きな重要性を持つ。

 各公職について個別の選挙が行われるため、連邦議会の多数党と大統領の所属政党とが異なる可能性もある。そのような状況を「分割政府」と呼び、米国では頻繁に誕生している。過去24年のうち16年間は、下院の多数党と大統領の政党が異なっていた。下院では、1994年以降、共和党が過半数を占めている。上院でも1994年から2000年まで、すなわち8年間のクリントン民主党政権のうち最後の6年間は、共和党が過半数を占めた。

 2000年の選挙では、共和党が大統領選挙に勝利するとともに、下院でも過半数を維持した。しかしながら、上院では両党が同数の50議席を獲得した。合衆国憲法により、上院では賛否同数の場合、副大統領(この場合共和党のディック・チェイニー)が決定票を投じることが定められているため、共和党がわずか1票の差で多数党となり、2000年の選挙は、共和党が連邦政府全体を支配する結果となった。

 2001年6月、ジェームズ・ジェフォーズ上院議員が共和党を離党したため、上院は民主党が多数党となり、再び分割政府が誕生した。しかし、2002年の中間選挙で、民主党はこのわずかなリードを失い、再び共和党に完全支配を許した。

 

連邦議会議員の選出方法

 連邦議会の下院と上院は、ほぼ同等の権限を持つが、議員の選出方法はかなり異なる。米国共和制の創設者たちは、下院議員に、一般市民の近くにいて、市民の希望と抱負を立法に忠実に反映させることを望んだ。従って、下院は、比較的人数が多く、頻繁に(2年ごとに)選挙が行われる。当初は、2年間の任期も長過ぎるとの意見があった。今日では、頻繁に選挙が行われるために現職議員が常に再選を目指すことになり、そのため何が再選に有利かということばかり考えて、何が国家のために良いかをめったに考えない、という懸念の方が大きい。

 下院の各議席は、地理的な選挙区を代表しており、各議員は、「小選挙区」から相対多数制、すなわち最多票を獲得した候補者が当選する制度によって選ばれる。50州に、それぞれ少なくとも下院の1議席が割り当てられる。残りの議席は、各州に人口に応じて配分される。例えば、アラスカ州は、人口が非常に少ないため、下院に1議席しか持たない。一方、最も人口の多いカリフォルニア州の議席数は、現在53である。

 上院は、各州を代表するためにつくられたもので、当初、上院議員は州議会によって選ばれていた。上院議員が州民の直接投票で選出されるようになったのは、1913年に憲法修正第17条が可決されてからである。上院議員は各州から2人ずつ選出され、任期は6年である。2年ごとに上院の議席の3分の1が改選される。従って、事実上、上院議員は有権者によって相対多数制で選ばれ、各州が小選挙区となっている。

2002年11月、下院新人議員の記念撮影の前に、ケンドリック・ミーク下院議員(民主党、フロリダ州)と握手をするキャスリーン・ハリス下院議員(共和党、フロリダ州)(Doug Mills/The New York Times)

2002年8月、ジョージア州ディケーター市で、支持者に感謝の言葉を述べる民主党のデニース・マジェット下院議員候補 (AP/Wide World Photos)

 相対多数制による選挙は、特に小選挙区制の場合、2大政党による政治体制を生む可能性が非常に高い。これは、第3政党の候補者が当選する可能性が極めて低いからである。有権者は、当選の望み薄と思われる候補者を支持して票を「無駄にする」ことを避けようとし、従って、勝利を目指す候補者は、可能性のない政党と関係を持つことを避けようとする。「周辺層を代表する制度」がないため、少数派の声は、支持の少ない分派ではなく、2大政党のうちの1つに含まれる傾向がある。米国の歴史を通じて、有力政党の数が2党を上回ったことはない。今日、いわゆる「候補者重視」の選挙の最盛期にあっても、第3の政党および候補者が立候補することは多いが、当選することは極めてまれである。2002年の選挙において無所属で当選したのは、下院435議員中わずか2人、上院では100議員中ただ1人であった。それ以外の議席は、1860年以来米国の2大政党となっている共和党と民主党の議員が獲得してきた。

 

連邦議員選挙の要因

 米国の歴史の大半を通じて、連邦議員選挙は「政党重視」で行われてきた。有権者のほとんどは、長年にわたっていずれかの政党を支持しているため、政党の路線に基づいて投票をする傾向が強かった。連邦議会議員は、選挙区の住民の大半が当該議員の所属政党を支持しているという理由で再選されることが多く、何十年にもわたって議員を務める例も見られた。現職議員としての個人的な選挙運動が、こうした支持に及ぼす影響は、わずかな場合が多かった。近年では、候補者の人柄や綱領が、政党に基づく支持以外の要因となっている。

 事実、1960年代以降、国政選挙はますます候補者中心となっている。テレビを利用した選挙運動を行い、多額の資金を集め、世論調査をはじめ近代的な選挙運動を効果的に行うことにより候補者は、個人として有権者に印象付けることができた。その結果、有権者は、政党に対する支持に加えて、候補者の長所・短所に関する印象を考慮するようになった。

 候補者重視の選挙は、現職議員にとって非常に有利である。概して、現職候補の方が対立候補より、テレビや新聞で報道される機会がはるかに多い。マスコミに登場することが多く、公共政策に対する影響力も大きな現職候補は、対立候補よりもずっと多額の選挙資金を集めることができる。こうした理由などで、再選を目指す現職候補は、当選の可能性が極めて高い。2002年には、下院議員398人が再選出馬したが、落選したのはわずか16人であった。また上院では、再選出馬した現職議員26人のうち、落選はわずか3人であった。上院の再選率88%、下院の再選率96%という数字を見ると、連邦議員選挙は、候補者重視であるだけでなく、現職候補重視であると言える。

 資金においてもマスコミの報道においても有利な現職候補は、有権者の間での知名度が高いのに対し、対立候補は往々にして知名度が低いため、現職候補が当選することになる。世論調査によれば、回答者の10人中9人は、地元選出の現職下院議員または上院議員の名前を知っているが、最も有力な対立候補の名前を知っている人は、選挙戦の末期においてさえも半数強にすぎない。対立候補は知名度がほとんどないため、資金集めに非常に苦労する。その結果、強力な候補になれそうな人でも、現職候補に対抗して出馬することをあきらめ、「当選の見込みの少ない候補者」が出馬しても選挙運動資金が集められない、という残念な状況が繰り返される。

図1: 政治活動委員会による連邦議会下院選挙運動への献金額(政党別、1983〜2000年)
(出典:U.S. Statistical Abstract)

図2: 政治活動委員会による連邦下院議員の現職候補と対立候補への献金額(政党別、1983〜2000年)
(出典: U.S. Statistical Abstract)

 政治活動委員会(PAC)が連邦議員候補に提供した資金の額は、連邦議員選挙における資金と政党と現職候補の重要性を表している。1983年から2000年(データが入手可能な最終年)までの2大政党へのPACによる献金額を図1に示す。このグラフは、同期間中に選挙献金が全般的に増えたことを示している。また、 1994年まで、すなわち民主党が多数党であった期間においては、民主党へのPAC支援の方がはるかに大きかった。過去3回の選挙期間には、共和党へのPAC支援が民主党への支援に追い付いている。現在では、両党の争いは接近しており、両党へのPAC献金はほぼ同額である。

 図2は、同一期間における現職候補と対立候補へのPACによる献金額を示す。どの選挙でも、現職候補の方が資金集めにおいてはるかに有利であることが明らかである。また、過去20年間に、現職候補へのPAC献金が大幅に増えている一方で、対立候補への献金の増加率ははるかに低い。このグラフを見ただけで、現職候補の再選率が非常に高い理由がわかる。

 対立候補が有権者に知られるようになると、2人の候補に対する有権者の姿勢がより公平となり、2人のうち、より強力なメッセージを持つと思われる候補に投票する可能性が高くなる。

 連邦議員選挙で最も有権者にアピールする要素は何か? これも変化してきており、特に最近の選挙では大きな変化が見られる。

 最近まで、連邦議員選挙の結果を決定する要素は、主として、各選挙区の具体的な利害関係や関心事項であり、全国的な課題ではなかった。この傾向は、「中間選挙」において特に顕著であった。大統領の任期の中間に行われる中間選挙は、大統領選挙戦に生来伴う全国的課題の重視という要素に欠けるからである。こうした選挙の地方性は、候補者重視の選挙によく適合し、候補は各自の選挙区に合わせたアピールができた。しかし、1994年の選挙が、重要な転換点となった。この選挙では、共和党が上院で議席の過半数を獲得し、下院では民主党から52議席を奪うという驚異的な成果を上げて、40年ぶりに下院でも過半数を占めた。共和党のリーダーであったニュート・ギングリッチ下院議長の戦略の1つは、「米国との契約」という10項目の立法プログラムであった。「米国との契約」は、選挙戦の初期に共和党下院議員候補の大半の支持を得て、選挙後はさらに重要性を増した。ギングリッチ議員は、新たに多数党となった共和党が、この契約に基づく法案をわずか100日間という驚くべきスピードで下院を通過させることを約束し、おおむね成功した。これによって共和党とそのリーダーシップの評価が上昇した。そして、それが基準となり、中間選挙において、全国的な課題と全国的な党綱領らしきものが含まれるのが標準的になった。

 1998年の中間選挙はまた、1994年の選挙と同様に意外な結果をもたらした。1998年には、現職大統領の所属政党民主党が、下院で反対党から5議席、議席を勝ち取った。共和党は連邦議会の過半数を維持したものの、実質的には1998年の中間選挙で敗北したと見なされた。共和党員の多くは、この「敗北」の原因は、党が争点について全国的に明確な姿勢を取らなかったためである、と考えた。2002年中間選挙では、民主党が過半数を取り戻すことができなかったが、このときも、真偽は別として、民主党幹部の多くは、「全国的な党綱領」の欠如が敗北の原因であったと考えた。

 

2004年の連邦議員選挙

 過去10年間の連邦議員選挙の紆余曲折は、選挙結果の予想を困難にしている。最も重要なことは、従来の選挙戦手法はもはや最も効果的な手法ではなく、有権者の決断のプロセスが変化しつつある、という点かもしれない。それでも、2004年の選挙で注目すべき点はいくつかある。

 2004年の最も差し迫った問題は、民主党が下院で過半数を取り戻すだけの議席を獲得できるか、ということである。上院で改選される議席数はわずか34であり、そのうち19議席は現在、民主党議員が占めている。前回は共和党議員の議席の方が接戦となる例が少なかった。また今回、22議席の選挙はジョージ・W・ブッシュが2000年に勝った州で行われる。従って、民主党が上院の議席を勝ち取る望みは薄く、上院では共和党支配が安泰であると思われ、従って関心は下院に向けられる。

 両党とも、下院選挙に向けて、最強の候補を立て、資源を投入しようとしている。下院では、新たな候補の開拓が極めて重要であり、特に州議会議員のような、選挙経験のある候補が有利である。しかしながら、同様に重要な要因として、党の指名した大統領候補が、下院議員候補の当選の可能性にどの程度影響を及ぼすか、という点が挙げられる。特に現職議員が再出馬しない議席では、これが極めて重要な要因となる。経験豊富で有能な下院議員候補と、同一政党の大統領候補による強力な選挙運動の組み合わせが実現するなら、両党間で過去最大の議席の移動が起こる可能性もある。

 この何十年かの間に、「大統領のコートテール(便乗人気)の大きさ」、すなわち大統領と同政党の連邦議員に投票する有権者の数は、減少してきている。大統領への票と連邦議員への票の関連性が、比較的低くなっている。また、2000年の大統領選挙では、両候補の得票数がほぼ同じであったため、いずれの党にとっても大統領選挙の票が連邦議員選挙に有利に働くという状況はあり得なかった。現職大統領の再選出馬が予想され、連邦議会で両党の議席数が極めて接近している状況では、議会における両党の勢力が、大統領選挙の票によって決まることも考えられる。ブッシュ大統領が、イラク戦争中とその直後の高い支持率を維持できれば、上下両院で共和党の支配を強化できる可能性がある。逆に、例えば経済問題が原因で支持率が急落した場合には、10年間続いた下院における共和党の過半数支配も大統領と同様の道をたどることが考えられる。

 連邦議員選挙において全国的な課題がますます重要性を増しているとすると、2004年における最も重要な全国的要因は、大統領候補とその政策活動である。これは、最も予測が困難な側面である。本稿執筆時点で、民主党の指名争いの行方は予想がつかず、大勢の候補の中からまだ誰も有力候補として浮上していない。現時点では、民主党の指名候補が、リベラル派か中道派か、戦争支持派か反戦派かを予測することはできない。ブッシュ大統領が予想通り再選出馬すれば、再び指名候補となることはまず確実である。

 2004年には、国内政策が中心的課題として再浮上する可能性が高い。しかし、テロとの戦いが、引き続き最大の外交政策課題となりそうである。大統領選挙で国際問題が大きな重要性を持つのは、ソ連の崩壊以来のことであり、両候補がどのように議論を展開し、国民がどのように反応するかは、極めて不確実である。しかしながら、現時点では、米国の経済が、有権者にとって主な関心事項になると思われる。しかし、ここでも、今後経済が強力な回復を見せ(そして回復していると見なされ)、共和党に有利な状況となるか、あるいは経済が停滞または後退を続けて、民主党にとって復活のチャンスを作るかどうかは、不透明である。

 要約すると、過去10年間、両党の議席数が接近していることから、2004年の選挙には、上下両院における過半数支配の行方がかかっている。どちらの党が議会を支配するか、あるいはどちらも支配しない状況となるかによって、米国の政策の方向が大きく変わることになり、従って、米国の民主主義の行方がかかっている、と言える。その不透明さをさらに複雑にする要素として、連邦議員選挙の結果が、大統領選挙の両候補に対する国民の反応によって決まる可能性、また民主党候補が誰になるか、その候補がどのような公約を打ち出すか、そして国民がどう反応するかによって決まる可能性が挙げられる。こうした状況はすべて、2004年の選挙をとりわけ興味深いものとしている。


ジョン・H・オルドリッチ(John H. Aldrich)は、デューク大学のファイザー・プラット政治学講座教授。専門は、米国の政治と行動、法定説、方法論。著書および共著に、Why Parties?, Before the Convention: Strategies and Choices in Presidential Nomination Campaigns,Linear Probability, Logit and Probit Models などのほか、選挙に関するシリーズがある。シリーズの最新刊であるChange and Continuity in the 2000 and 2002 Elections が、最近出版された。また多くの専門誌に執筆している。

* 本稿はUnited States Elections 2004 に掲載の"Congressional Elections" の仮訳です。