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2009連合サマー・トップセミナーにおけるジェームス・ズムワルト駐日米国臨時代理大使の講演

(草稿)

2009年7月29日、東京

 高木会長、そしてご出席の皆様。本日ここにこうしていることを光栄に思います。オバマ大統領によるアメリカ経済を回復するための試みについてお話する機会を頂き、感謝致します。また、本日の講演は、アジア太平洋地域で最も重要な関係であることに疑いの余地がない、強固な日米関係についてお話しをさせて頂く良い機会です。

経済動向と展望

 米国経済と世界経済が昨年秋以降、急激に収縮したことは、皆さんのご存知のとおりです。米国における実質GDP(国内総生産)は、2008年の第4四半期と今年の第1四半期で平均年率6%程度落ち込みました。この景気低迷の莫大なコストの一つに、2008年の初頭から、約600万件の雇用が喪失したことが挙げられます。大統領は、高収入の仕事をより多く創出する必要性を理解しており、今後24ヶ月の間に、350万件の新規雇用を作り出すと公約しました。

 しかし、悲観的な失業率の先にある最新のデータは、米国における経済収縮の速度が落ちてきた可能性があると示唆しています。とりわけ、1月以来、個人消費は安定し、改善し始めています。今後数ヶ月のうちに、オバマ政権の景気刺激策により、個人消費は増えるでしょう。9月以降、慎重な姿勢を崩していなかった企業では、昨年秋の急激な販売不振の後に累積した不要な在庫を減らす動きに進展が見られ始めました。米国連邦準備理事会(FRB)は、個人消費と住宅需要は安定すると予測しています。バーナンキ議長は、米国の(いわゆる)「ホリデー・シーズン」が到来する秋には、個人消費が上向くとの期待から、企業が在庫を増やすだろうと予想しています。

 米国の輸出についてですが -- 貿易の自由化が労働者と我々の経済にどのようなメリットをもたらすかは少し後で触れますが -- 外国の、特に中国における、経済活動の回復を示唆する最近の徴候が確かだとすれば、輸出にも好影響があると思われます。

 景気回復が軌道に乗ってからも、実体経済活動の成長率はしばらくの間、長期的な潜在力よりも低く推移する可能性があります。これは、経済を本当に健全な状態に回復させるためには、我々の政府はまだやらなければならないことが多くあるということを示唆しています。我々は、景気回復は徐徐にしか勢いを増さず、経済状況、特にビジネスの状況は、不確実なままである可能性が高いと考えています。アナリストは、米国経済は、今年の夏後半に回復し始めると予測しています。失業率は確かに高い(9.5%)ですが、この統計は、経済実績の変化に遅れる傾向があります。政権は、これらの景気刺激策が雇用を増やし、企業の景況感や消費者の信頼感を改善し、米国経済のパーフォーマンスを改善させると確信しています。いずれにせよ、今年後半に再び経済成長がプラスに転じても、米国が失った600万件の雇用をすべて回復するには、多くの人の予想よりも長い時間がかかるかもしれません。しかし、我々の経済は回復します!

経済発展

 世界経済を最近の記憶では最悪の不況に陥れた去る9月の経済・金融危機以来、米国政府は、その経済を支援するための大胆な方策を講じてきました。また、これまで我々は日本等のパートナーと共に世界経済を回復と成長の軌道に戻すために努力もしました。そして、我々は、前進しています。

 大統領とガイトナー財務長官は、信用を修復し、景気縮小の悪循環と金融破綻に歯止めをかけることにより、経済を救済するために我々の金融システムの健全性を修復する、金融安定計画を発表しました。この計画は、企業に資金を提供する銀行、証券会社、ならびに保険会社を支援するものです。政権の強力な指導力およびうまく据えられた政策は、期待通りの結果を生んでいます。同計画中の重要な方策の一つは、7,000億ドルの不良債権救済計画(Troubled Asset Recovery Plan/TARP)です。米政府が、市場の安定を促進し、アメリカ人の家族と米国経済を守るために、金融機関から不良債権を買い取るものです。我々は、まだ金融問題の解決に至っておりませんが、米国の銀行は、収益改善を報告しています。更に、大手銀行に対する透明性のある健全性検査(ストレス・テスト)は、金融制度の信用に貢献しました。健全性検査の結果公表以降、米国の銀行は、800億ドル超の資本を調達し、300億ドル超の無担保社債を発行しました。これらは回復の良い兆候です。

 オバマ大統領がとったもう一つの重要な方策は、今年2月の米国経済再生法(American Recovery and Reinvestment Act)の法制化への署名です。同法は、雇用を生み、全米の老朽化した施設の再建に投資するものです。同法は、我々が回復を始める上の、強力な出発点です。世帯やビジネスは、すでに430億ドル以上の即時減税を受けています。また新たに640億ドルが、州政府や地方政府への支援、社会福祉の拡充、ならびに教育、住宅、交通プロジェクトに対する支出を通して経済に送られました。

 大統領は米国議会と共に、中産階級アメリカ人が彼等が家に留まり、ビジネスを維持し、彼等の社会を強化するのを保護し、支援しています。例えば、「住宅取得支援」再融資制度は、家族が自分の家に留まることができるようにしています。それは、変動金利型住宅ローンからの救済が必要なアメリカ人に対し、借り換え融資の提供はもとより、金利を引き下げるものです。「家族の住宅保護支援法」("Helping Families Save Their Homes Act”)は、「住宅取得支援」制度を拡大し、数百万人のアメリカ人による差し押さえの回避を支援するものです。同制度は、再融資支援策を通じて、ホームレス化との戦いを支援するために22億ドルを供給し、住宅市場の安定化を支援してきています。その結果、16万人の住宅所有者がこれらの制度による援助を受け、自宅に住み続けることができています。

 また、大統領は、中小企業を支援しています。彼は、これらの企業に対する融資を後押しするための150億ドルの計画に着手しました。この支援は、中小企業が労働者を引き続き雇用し、製品を造り、サービスを提供することを可能にします。中小企業は、労働人口の約70%を雇用している米国経済のバックボーンです。これは、日本でも同じです。これらの米国の中小企業は、日本企業に商品を販売し、資材を日本企業から購入します。この貿易が、輸出関連産業が米国内の高給職を支えることにより、彼等のビジネスを成功に導いている要因です。

 最後に、オバマ大統領は、経済的説明責任を修復する必要性を認識しています。金融制度の信用を改善するために、大統領は、現在よりも安全で安定した金融制度に向けた基金を設立するための全面的な規制改革の一式を明らかにするつもりです。彼は、市場にコミットしています。しかしながら、その規制改革は、市場主導の効率性の利益を生み出すと同時に、過度の市場主導による危険を防ぐものでなくてはなりません。大統領のチームは、この新たな金融規制および監督のための基礎を構築中です。それは、現在よりも簡潔で効果的に施行され、消費者および投資家を保護し、革新に対し報奨し続けます。最も重要なことは、それが、金融市場の変化に適応し、進化できるところです。

指針

 オバマ大統領の主な焦点は、経済回復を刺激し、米国が強く更に繁栄した国家になるのを促進することです。今後のことに目を向けると、我々は、米経済を回復させるために必要な、実質的な方策を講じます。これらの方策の中で最も注目すべきものは、もちろん米国経済再生法です。同法律は、ルーズベルト大統領によるニューディール以来の最も包括的な経済刺激策である米国経済再生法は、国内の計画に7,870億ドルを注入します。この大胆な計画は、教育、医療、ならびに公共事業に恩恵を与えています。同様に、政権は、「勤労奨励納税」制度の下、連邦税の減税や広範囲に亘る失業手当を提供します。同計画はまた、地方の事業を支援し、米国経済を刺激するために、州および地方政府に対して数十億ドルを提供します。

 米国経済は、すでにそれが経済再生法に対してプラスに反応しています。政府監査院は、景気失速の影響を緩和する再生法が計画よりも迅速に機能していると報告しました。

 全米で、次々に成功事例が見られます。ニューヨークでは、教育プログラムの大幅削減を回避するために学区が連邦政府の財源を使うことができたことで、当局は、再生法の財源が14,000人の教員の職を救ったものと見積もっています。ミシガンは、再生財源の一部を32,000家屋の断熱に使い、各家庭のエネルギー消費を平均25%削減し、概ね1,500人を雇用する予定です。カリフォルニアでは、再生財源が、州立大学が計画していた授業料の値上げ幅を縮小します。これらは、再生法に帰すべき多くの成功事例の中のごく幾つかに過ぎません。

雇用の創出

 もちろん、オバマ大統領が経済危機に対応するため最優先とするのは、失業の増加に歯止めをかけ、アメリカ人を仕事に戻すことです。米国経済再生法 は、医療や教育、そして環境に配慮した再生可能なエネルギーやインフラ整備への長期的な投資を通じて、雇用の創出を促進しています。景気対策には他にも、代替エネルギーの生産を増やし、建物や家の近代化や環境対応を促し、ブロードバンド技術を全国に拡大し、医療システムのコンピュータ化(IT化)を行うなどの目的があります。この景気対策は、将来的に持続可能な経済成長につながるような優先分野への投資を行いつつ、約350万件の雇用の維持または創出を実現します。

労働組合の役割

 オバマ大統領は、就任して間もなく、米国の労働組合を強化し、米国の労働者が労働組合を結成するための手続きを容易にする措置を取りました。

 オバマ大統領は、今年はじめに行ったスピーチで「労働運動は問題の一部ではありません。私にとってそれは解決策の一部です」と宣言しました。この発言は、強い労働運動の存在を支持する大統領の信念と一致します。大統領は、今年1月の就任以来、労働者より企業を優遇してきた政策を 転換する4つの重要な大統領令を発令しています。これらの大統領令は、労働組合に加入している労働者が連邦政府の公共事業プロジェクトで働くことを可能にし、連邦政府と契約を交わしている請負業者に、契約に変更があった場合でも既存の従業員に仕事を提供するよう義務付け、またこれらの請負業者が労働組合の活動に反対するために支出した費用を償還することを禁止しました。

 更に、大統領の「従業員自由選択法」(Employee Free Choice Act)への支持や、(両親が共に労働組合員だった)ヒルダ・ソリス氏の労働長官への指名は、彼がアメリカの働く人々のニーズを理解していることを改めて示しています。従業員自由選択法につきましては、5月に、連合の指導部の方が米国大使館の経済部の者にお話に来られましたが、この法案は、目下、米国議会の両院で審議中です。

貿易と投資のための市場開放の維持

 世界経済の困難な状況は、持続的な経済成長を生み出す、強固でダイナミックな世界貿易体制の恩恵を強調しています。国レベルでは、この経済危機にどう対応するか、慎重になる必要があります。同様に、世界レベルでは、既に達成された進展を基礎とし、実質的な進歩を実現するための新たな方法を探すために、我々全員が野心的かつバランスのとれたWTOドーハ開発ラウンドの妥結に向けて取り組まなければなりません。この交渉の成功裏の完結は、貿易を回復し我々の経済に新たな活気を与えるための手段をもたらします。米国の製造業による輸出は、製造業の6分の1の雇用を含む、600万近い雇用を支えています。

 私は、世界貿易の収縮を痛感しています。WTOは、国際貿易が今年、1940年代以来最大となる9%減少すると予測しています。貿易は、このような経済不況から世界を救い出すための有望な手段たり得ます。そして、オバマ政権が米国の通商政策を見直し、米国および世界経済の回復のための最善策を検討していることを私は断言できます。

 私は、我々の経済と世界経済は回復に向っているということを、ぜひ強調させていただきたいと思います。しかしながら、保護貿易主義は経済活動への重大な重しとなり、この初期段階の景気回復を失速させかねません。米国経済再生法は我々のWTOにおける義務に従って導入されます。オバマ大統領と他のG8各国の首脳たちは、これを踏まえてイタリアで、貿易と投資の更なる自由化のために、WTOドーハ・ラウンドの貿易交渉の早期妥結を求めました。また、彼らは、世界経済の回復に悪影響を及ぼす可能性のある、新たな保護主義的な措置を構築しないと繰り返し誓約しました。

 貿易は、米国の繁栄、日本の繁栄、そして全世界の繁栄に必要不可欠です。貿易は経済成長を刺激し、国内で良い雇用を支持し、生活水準を向上させ、アメリカ人が家庭に手頃な財貨・サービスを提供できるように役立ちます。オバマ政権はこうした要素を考慮し通商政策を策定中です。またカーク米国通商代表は正しいバランスをとるため、産業界ならびに労働者と緊密に取り組んでいます。

日米二国間関係

 日米関係以上に貿易がもたらす恩恵を証明できる二国間関係はないでしょう。日本は米国にとって第4位の貿易相手国であり、第2位の対米直接投資国です。日本企業はこれまでに米国に2,300億ドル以上の投資を行ない、そして米国企業は日本に1,000億ドル以上を投資してきました。約60万人のアメリカ人が日本企業で働き、およそ25万人の日本人が米国企業で働いています。付け加えるならば、これらの米国企業は商品を日本企業に販売し、資材を日本企業から購入します。我々の労働者は、繁栄のために、1日7億5,000万ドルを誇るその貿易関係において、日本を必要としており、逆もまた然りです。

 このような数字は、単に我々二国間の関係の深さを表すだけでなく、我々が世界経済における重要課題に共同で取り組んでいくための強固なパートナーシップも証明しています。これは、日本が2010年に、そして米国が2011年に議長を務める、APEC-アジア太平洋経済協力会議-で明らかになるでしょう。この連続したリーダーシップは、APECを組織として強化し、アジア太平洋地域における共通の貿易・投資目的を推進するために日米両国が協力して取り組む機会を与えてくれます。

 日米関係について少しばかり触れされてください。オバマ大統領、クリントン国務長官、そして先月の上院公聴会での国務省東アジア・太平洋担当次官補のカート・キャンベルも、日米関係は米国の外交政策の礎であると言明しています。これは、強固で活力のある日本との関係を維持することが米国の国益にかなう、ということを表しています。

 米国にとっての日本とのパートナーシップの重要性は、世界第2位の経済大国としての日本の経済力に加え、影響力のある外交パートナーであり、国連など国際機関の活発なメンバーであるという日本の位置付けに基づくものです。さらに、日本と米国は、民主的な統治体制や法の支配、健全で自由な市場経済原則、人権といった共通の価値観を共有しています。これらの共通の信条が、グローバルな規模での協力に向けた幅広い機会を我々に与えてくれます。

 また日本と米国は、強固な安全保障関係からも利益を享受しています。冷戦が終結したとは言え、地域の緊張状態は依然続いています。過去50年以上にわたり、日米の安全保障関係は地域の平和維持を促進し、日本と周辺国が成長し繁栄する環境に貢献してきました。

まとめ

 本日の私の話をまとめさせていただきます。現在の経済状況は、実際何年もかけて作られた構造的問題の結果ですし、回復には時間がかかるでしょう。しかし、我々は、経済を回復させるために貿易・投資関係を推進するという関心を共有しています。中小企業の育成への強いコミットメント、労働市場改善へのコミットメント、自由で開かれた貿易・投資環境の維持へのコミットメント、そして世界の経済的福祉の改善に対する強いコミットメント。このような我々の経済のバイタリティの根本的な源は依然として残っていると確信しています。日本と米国は、新たな技術を開発する研究を促進する創造性や創意工夫を促進し続けます。我々の人的資源と先進技術は、我々両国の経済を継続的に促進し、そしてそれが世界経済の発展・向上を促進していくことでしょう。

 ご清聴ありがとうございました。