
*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。
ホワイトハウス報道官室
2009年7月7日、モスクワ
どうもありがとうございます。オクサナさん、おめでとうございます。そして、2009年の卒業生の皆さん、おめでとうございます。私のようにクラスで将来の伴侶に出会う方がいるかどうかは分かりませんが、皆さんの誰もが素晴らしいキャリアを積まれることは確信しています。
本日ここにいらっしゃる何人かの方々に感謝の意を表させていただきます。まず、本日は、ミハイル・ゴルバチョフ元大統領がいらしていますから、皆さん、盛大な拍手をお願いいたします。ロシア経済学院のセルゲイ・グリエフ学長、そしてマックス・ボイコ理事長にお礼を申し上げます。また、学院の理事で同窓会長のアルカジー・ドボルコビッチさんは、昨日の私とメドベージェフ大統領との会談にも同席されており、メドベージェフ大統領のために素晴らしい仕事をされています。
おはようございます。ロシア経済学院の皆さんとお会いできることは、私にとって大変名誉なことです。ミシェルと私は、モスクワを訪れることができて、非常にうれしく思っています。私はハワイ生まれですから、ここに1月ではなく7月に来られてよかったと思っています。
ロシア経済学院がまだ新しい学校だということは存じていますが、本日私は、時代を超えたロシアの伝統に対する深い尊敬の念をもって、皆さんにお話をいたします。ロシアの作家のおかげで、私たちは、人間の経験の複雑さを理解し、永遠の真実を知ることができました。ロシアの画家、作曲家、舞踊家は、私たちに新しい美の形を紹介してくれました。ロシアの科学者は、病気を治し、新たな未開拓分野を切り開こうとし、宇宙開発に寄与してきました。
ロシアの国境は果てしなく続いていますが、こうした貢献は国内にとどまるものではありません。実際に、ロシアの伝統は、世界の隅々にまで影響を及ぼし、私たちに共通する人間性に訴えかけます。私の国も例外ではなく、何十年にもわたってロシア移民から恩恵を受け、ロシア文化の影響で文化的に豊かになり、ロシアの協力によって強化されてきました。そしてワシントンDCの住民として、私は、ロシア国民、具体的にはアレキサンダー・オベチキン選手(訳注:ナショナル・ホッケー・リーグの1チーム「ワシントン・キャピタルズ」のロシア人選手)の貢献の恩恵を受けています。私たちは、彼がワシントンDCに来てくれたことを大変うれしく思っています。
ロシア経済学院の学生の皆さんは、こうした偉大な文化的遺産を受け継いできたわけですが、皆さんが専門とされる経済の研究も、同様に人類の未来の基盤となるものです。プーシキンは、「詩と同様に、幾何学にも直感が必要だ」と言っています。本日は特に、まさに卒業しようとしている皆さんに向けてお話ししたいと思います。皆さんは、学問、産業、金融、政治などの世界において、リーダーになる用意ができています。しかし、皆さんが前進する前に、若い皆さんのこれまでの人生で起きてきたことを振り返ってみるのも有意義なことです。
メドベージェフ大統領や私と同様、皆さんはまだ若いので、大気圏内で水爆実験が行われ、子供たちが核シェルターへの避難訓練を行い、世界が核兵器による破滅の瀬戸際まで行った、冷戦の最も暗い時代を経験していません。しかし、皆さんは、世界が分裂していた時期に生まれた最後の世代です。当時はまだ、米国とソ連の軍隊がヨーロッパに集結し、訓練を受け、戦う準備を整えていました。前世紀のイデオロギーの深い溝がほぼ存在していました。天体物理学からスポーツまで、あらゆる分野での競争がゼロサム・ゲームと見なされていました。一方が勝てば、もう一方は負けなければなりませんでした。
そして、わずか数年後には、そうした世界が消滅しました。しかし、間違ってはいけません。この変化は、決してひとつの国家によってもたらされたものではありません。冷戦が終結したのは、多くの国々の長年にわたる行動の結果でした。また、ロシアと東ヨーロッパの人々が立ち上がり、冷戦を平和的に終わらせる決心をしたからでした。
冷戦の終結と共に、驚くほど大きな期待が生まれました。平和と繁栄、国家間の新たな取り決め、そして個人が享受できる新たな機会に対する期待です。大きな変化が起きる時期の常として、当時も、野心的な計画と無限の可能性が生まれました。しかし、言うまでもなく、物事が常に計画通り進むとは限りません。ロシア経済学院が開設された直後の1993年に、この学院の学生の1人が、変化の難しさについて記者に語る際に、一言でこのように述べています。「現実の世界は、紙の上の世界ほど合理的ではない」と。現実の世界は、紙の上の世界ほど合理的ではないのです。
混乱が続いた過去20年間、これが真実であることが世界各地で証明されてきました。大きな富が築かれましたが、それによって、圧倒的な貧困に苦しむ広範な地域がなくなることはありませんでした。貧困はロシアにも、米国にも、そして世界中どこにも存在します。投票をする人の数は増えましたが、依然としてあまりにも多くの政府が、国民の権利を守ろうとしていません。イデオロギー闘争は減少しましたが、それに代わって、部族間、民族間、宗教間の対立が起きています。コンピューターがあれば、1人の人間が、ロシア国立図書館に保管されているのと同じ量の情報を持つことができますが、そうした技術を利用して大きな危害を及ぼすこともできます。
新しいロシアでは、ソビエト連邦の解体後、それまでの政治的・経済的な制約がなくなったことが、可能性と困難の両方をもたらしました。一部には豊かになった人たちもいましたが、そうなれなかった人たちがさらに大勢いました。苦しい時もありました。しかし、ロシア国民は強さを発揮し、犠牲を払い、経済を成長させ、自信を深めることによって、苦労はしましたが、前に進むことができました。そして、苦しい時期もありましたが、今日、東ヨーロッパとロシアでは多くの人たちの生活が、20年前に比べて向上しています。
その前進を、ここロシア経済学院に見ることができます。この学院は、西側諸国の支援を受けて創設され、今では明確にロシアの学校となっています。ここは、ある着想がロシアのものであるか、米国のものであるか、ヨーロッパのものであるかではなく、実際に効果があるかどうかを基準に判断される、学問と研究の場です。何よりも、私たちは、まだ新しい世紀を自由に形づくることのできる若者である皆さんの中に、その前進を見ることができます。
皆さんの人生は、ちょうどこの過渡期に重なりました。しかし、この学校が創設された当時に問われた基本的な問題について考えてみてください。ロシアの未来はどのようなものになるのか。ロシアと米国はどのような未来を共有するのか。冷戦に代わってどのような世界秩序が生まれるのか。こうした問題にはいまだに明確な答えが出ていません。ですから、皆さんが…ロシア、米国、そして世界中の皆さんの世代が、答えを出さなければなりません。皆さんが決めることができるのです。皆さんに代わって私がこれらの問いに答えることはできませんが、米国の求める未来について率直にお話しすることはできます。
まず、はっきりさせておきたいのは、米国は、強く、平和な、繁栄するロシアを求めている、ということです。この信念の根本にあるのは、ロシア国民に対する私たちの尊敬の念であり、米ロ両国が競争を超えて共有する歴史です。過去に競争関係にあったにもかかわらず、米国とロシアの国民は、20世紀最大の戦いにおいては同盟関係にありました。最近ノルマンディーを訪れたときに、私はこのことに気付きました。ボストンやバーミンガム出身の兵士がどのような危険も顧みずにノルマンディーの海岸を急襲し、がけに登っていたとき、カザンやキエフ出身のソビエト軍兵士は、侵略を撃退し、東部戦線の形勢を逆転させるために、想像を絶する苦境に耐えていました。ジョン・ケネディ大統領が述べたように、「戦闘の歴史において、第2次世界大戦中のソビエト連邦ほど苦しんだ国家はなかった」のです。
私たちは、こうした過去に敬意を払うと同時に、強く活気あるロシアが将来にもたらす恩恵をも認識しています。皆さんの人生を決定するさまざまな課題について考えてみてください。核兵器や過激主義からの保護、市場と機会へのアクセス、保健と環境、安定と繁栄を推進すると同時に主権と人権を保護する国際制度、といった課題です。こうした課題は、世界的なパートナーシップを必要とするものであり、ロシアが大国として正当な立場に立つことによって、そのパートナーシップが強化されます。
しかしながら、残念なことに、旧来の前提、つまり古い考え方が優先されなければならない、という認識が時々見られます。それは、未来ではなく過去に根差した力の概念です。米国とロシアは敵対する宿命にあり、強いロシアあるいは強い米国は、相互に対立する形でしか自己の権利を主張することができない、という20世紀的な見方です。また、私たちは影響力の及ぶ範囲を奪い合う運命にあり、大国は相互の均衡のために競合するブロックを形成しなければならない、という19世紀的な考え方もあります。
これらの前提は間違っています。2009年においては、大国は他国を支配したり悪者扱いしたりすることによって、その力を誇示するのではありません。帝国が主権国家をチェスの駒のように扱うことのできる時代は終わりました。私がカイロでお話ししたように、私たちの相互依存性を考慮すると、ひとつの国家あるいはひとつの集団を他より上に置こうとする世界秩序は、必ず失敗します。力の追求は、もはやゼロサム・ゲームではなく、共に前進していかなければなりません。
私が、米国とロシアの関係を「リセット」することを求めたのはそのためです。これは、クレムリンとホワイトハウスの関係を一新するにとどまるものではありません。確かに、この関係の一新は重要であり、私はロシアの大統領および首相と大変良い話し合いを行いましたが…。これは、米国とロシアの国民が相互の利益を明確にし、前進への道を開く対話と協力を拡大する持続的な努力でなければなりません。
これは容易なことではありません。過去に敵対していた者同士が永続的なパートナーシップを築くのは困難なことです。何十年にもわたって私たちの政府や官僚制度に深く根付いてきた習慣を変えるのは難しいことです。しかし私は、この世紀を決定付ける根本的な課題に関して、米国民とロシア国民には、協力の基盤となる共通の利害があると信じています。私は、ロシアの国益を決める立場にはありませんが、米国の国益についてはお話しすることができます。そして、米国とロシアが共通の立場に立っていることを理解していただけると信じています。
第1に、米国の国益は、核兵器の拡散を止め、核兵器の使用を防止することにあります。
前世紀には、米国民とロシア国民が何世代にもわたって、国家を破壊する力を受け継ぐとともに、そうした力を使うことは私たち自身に破壊をもたらすという認識を受け継いできました。2009年に私たちが受け継ぐものは、これとは違います。皆さんも私も、米国とロシアの指導者たちが恐怖の均衡を尊重するだろうかと疑問に思う必要はありません。私たちは、この2国間の戦争は必ず恐ろしい結果をもたらすということを理解しています。しかし、この問いかけはしなければなりません。それは、ニューヨークとモスクワで罪のない市民を殺害した過激主義者が、私たちと同様に自制するだろうかという問いかけです。核保有国の数が10カ国、20カ国、あるいは50カ国に上った場合、これらの国々は、保有する武器を守り、その使用を控えるであろうか、と問いかけなければなりません。
これが、21世紀における核問題の中心的な課題です。核兵器を保有することによって国の威信が生まれる、あるいは、私たちは核兵器を保有できる国を選ぶことによって自らを守ることができるという考えは、幻想にすぎません。冷戦が終結してからの短い期間に、既にインド、パキスタン、そして北朝鮮が核実験を行いました。根本的な変化がない場合、今後20年間に核兵器がさらに拡散することはない、と心から信じることのできる人はいるでしょうか。
米国が核拡散の阻止と、究極的には核兵器のない世界の追求に力を尽くしているのは、そのためです。これは、核不拡散条約(NPT)の下での私たちの義務と矛盾するものではありません。これは、世界の2大核保有国としての私たちの責任です。この目標がすぐに達成されないことは分かっていますが、その目標を追求することによって、核兵器の拡散と最終的な使用を防止するための法的および道義的な基盤を築くことができます。
私たちは既に、この基盤の構築に向けて重要な措置を取っています。昨日、メドベージェフ大統領と私は、私たちの保有する核弾頭および運搬手段を大幅に減少させる新たな条約の交渉を前進させました。また、クリーンで安全、かつ平和的な原子力エネルギーの利用を実現する決意を新たにしました。これは、NPTの下でそれぞれの責任を果たしているすべての国家に認められなければならない権利です。また私たちは、4年以内に脆弱(ぜいじゃく)な核物質を管理するという目標の達成に不可欠な、核の安全保障面での協力を強化することで合意しました。
私たちが自らの責任を果たす一方で、他国にもその責任を果たしてもらわなければなりません。米国もロシアも、東アジアあるいは中東における核兵器開発競争から利益を得ることはありません。だからこそ、私たちは、核保有国になろうとする北朝鮮の活動に反対し、核兵器を入手しようとするイランの活動に反対するために、力を合わせなければなりません。メドベージェフ大統領と私が、イランおよび北朝鮮の弾道ミサイルを含む、21世紀の弾道ミサイルの脅威評価を合同で行うことについて合意したことを喜ばしく思います。
これは特定の国家を名指しで非難するものではなく、あらゆる国家の責任に関することです。私たちが団結できなければ、NPTと国連安全保障理事会の信頼性が失われ、国際法に代わって弱肉強食の世界の法則が支配するようになります。これは誰の利益にもなりません。私がプラハで述べたように、規則は拘束力を持たなければならず、違反は罰せられなければならず、言葉は意味のあるものでなければなりません。
これらの規則が正しく執行されれば、意見の対立の原因が取り除かれます。ヨーロッパにおけるミサイル防衛計画にロシアが反対していることは承知しています。ですから私の政権は、米国、ヨーロッパ、および世界の安全保障強化のために、配備計画を見直しています。また私は、このシステムが、イランによる攻撃の防止を目的としていることを明確にしています。これは、ロシアとは全く関係ありません。むしろ私は、私たち皆の安全性を高めるようなミサイル防衛構想に関して、ロシアと協力することを望んでいます。しかし、イランの核兵器および弾道ミサイル計画の脅威がなくなれば、ヨーロッパでミサイル防衛を進める原動力がなくなります。そしてこれは、私たちの相互の利益となります。
次に、世界で最も危険な兵器を管理することに加えて、米国の重要な国益につながる第2の分野は、暴力的な過激派を孤立させ、打ち負かすことです。
アルカイダとその仲間たちは、長年にわたり平和と正義の偉大な宗教を冒瀆(ぼうとく)し、あらゆる国籍、宗教の男女、子供たちを容赦なく殺害してきました。中でも、特に多く殺害されたのがイスラム教徒でした。こうした過激派は、アンマンやバリ島、イスラマバードやカブールで人々を殺害しており、その手は米国民やロシア国民の血に染まっています。彼らは、私たちの国民をさらに大勢殺害する計画を立てており、特にパキスタンとアフガニスタンの国境地帯にある避難所では訓練や活動が可能であり、恩恵を受けています。
米国が、アフガニスタンとパキスタンでアルカイダとその仲間たちを分裂させ、解体し、打ち負かすという明確な目標を立てているのは、そのためです。私たちは、基地を求めているのでも、これらの国家を支配することを望んでいるのでもありません。私たちが望むのは、ロシアを含むパートナー諸国と協力し、アフガニスタンとパキスタンの国民が自らの安全保障と繁栄を推進できるよう援助することです。従って私は、米国がロシアの領土を通って連合軍への補給を行うことに、ロシアの同意を得られたことを喜ばしく思います。タリバンの支配するアフガニスタンあるいはパキスタンは、米国にとってもロシアにとっても利益にはなりません。これまでとは違う未来のために協力する時が来ています。それは、過去の駆け引きと現在の対立を忘れ、皆で中央アジアの安全保障に貢献する未来です。
米国は、アフガニスタン以外でも、過激派を孤立させる機会を促すことに力を入れています。イラク国民がより良い未来を築くことを支援し、イラクのことはイラク国民に任せようとしています。イスラエルとパレスチナという2つの国家が、平和と安全の中で共存するという目標を追求しています。また、教育、保健、そして経済開発を推進するために世界各地のイスラム教徒と連携しています。こうした活動のそれぞれで、ロシア国民は私たちと共通の目標を持ち、その成功によって恩恵を受けると、私は確信しています。私たちは連携する必要があります。
これらの安全保障上の課題に加えて、私がお話しする第3の分野は、米国の国益が世界の繁栄にある、という点です。この部屋には大勢の経済学者や未来のビジネスマン、ビジネスウーマンがいらっしゃるので、この話には皆さんも大いに関心があることと思います。
現在私たちは、ここ数十年で最悪の世界的な景気後退のさなかにあります。世界がこれまでに経験してきた中で、富の創造と分配を促す最も大きな力は自由市場である、と私は信じています。しかし、過度に危険を冒す行為、規制の欠如、あるいは腐敗によって市場が暴走する状況になった場合、ミシシッピ川のほとりに住もうとボルガ川のほとりに住もうと、私たちは皆危険にさらされます。
米国は今、米国経済を活性化させ、規制制度を改革するために、前例のない措置を取っています。しかし、いかなる国家も世界的な危機の影響を受けずにはいられないのと同様、いかなる国も単独で世界の成長をけん引することはできません。皆さんが生まれてからこれまでの間に、根本的な何かが変化したのです。そして、この危機は、変化に伴うリスクを私たちに示してくれましたが、変化に伴う可能性はそのリスクをはるかに上回ります。
20年前には想像もできなかったのに、今は可能になったことを考えてみてください。インドのバンガロールに住む若い女性が、インターネットに接続して、世界のどこの誰とでも競争することができます。北京で企業を立ち上げた起業家が、世界中にビジネスを広げることができます。モスクワのロシア経済学院の教授が、ハーバードやスタンフォードの教授と協力をすることができます。これは私たち全員の利益になることです。なぜなら、インドで富が創造されれば、ほかの国の製品にとっても新しい市場が生まれるからです。中国で新しいアイデアが生まれれば、ほかの国の企業の革新が促されるからです。人々の間に新たなつながりが築かれれば、私たち全員が豊かになるからです。
米国民とロシア国民の間の協力を強化できる、とても大きな可能性があります。私たちは、自由で、公正で、より広い世界と統合された貿易を追求することができます。米国とロシアの両国で雇用を創出する投資を増やし、石油やガスなど従来の資源を利用するエネルギーだけでなく、成長を推進し気候変動と戦う新たなエネルギー源に関しても、パートナーシップを築くことができます。こうしたことのすべてを、米国民とロシア国民が協力して実現できるのです。
政府がこうした協力を推進することはできますが、最終的には、個人個人がこの協力を前進させなければなりません。なぜなら、どの国においても、21世紀の最大の資源は皆さんだからです。人、特に若い人たちが最大の資源です。そして、その資源を活用する国が、成功する国となります。その成功は、法の支配の下で機能する経済に依存しています。メドベージェフ大統領が的確に述べられたように、成熟した有効な法制度は、持続的な経済発展の一条件です。どの国の人々も、わいろを使うことなく事業をしたり教育を受けたりする権利を与えられるべきです。これは米国あるいはロシアの独自の考え方ではありません。米国においても、ロシアにおいても、アフリカまたは中南米においても、21世紀においては、人々や国家このようにして成功を収めるのです。
そこで、第4の問題、すなわち、米国の国益が国民の権利を守る民主的政府にある、ということについてお話しします。
米国は決して完ぺきではありません。しかし、米国が欠点を是正し、常に改善を続け、時と共により強くなることができるのは、特定の普遍的な価値観を守っているからです。言論と集会の自由により、女性、少数民族、および労働者が、それまで与えられていなかった完全かつ平等な権利を求めて抗議をすることができました。法の支配と平等な司法行政が独占事業を解体し、腐敗した政治組織の活動を停止させ、権力の乱用をやめさせました。独立メディアが、企業と政府のあらゆるレベルにおける腐敗を明るみに出しました。競争的選挙によって、私たちは進路を変えることができ、指導者たちに説明責任を求めることができます。米国の民主主義がこれらの権利を促進しなかったならば、アフリカ出身の祖先を持つ私が、大統領としてはもちろんのこと、米国民としても、皆さんにお話をすることはできなかったでしょう。なぜなら、米国の建国時には、私のような外見の人々には、何の権利もなかったからです。しかし、こうしたプロセスのおかげで、私は今、米国大統領として皆さんの前に立つことができます。
世界中で、米国はこうした価値観を支持しています。それは、その価値観が道徳的であるだけでなく、効果的でもあるからです。歴史を見れば、国民のために奉仕する政府は存続し繁栄すること、自らの権力のためにのみ奉仕する政府は存続も繁栄もできないことが分かります。国民の意思を代表する政府が、破たん国家となったり、国民を威嚇したり、他国に戦争を仕掛けたりする可能性は、はるかに低いものです。法の支配を促進し、自らの行動を監視し、独立した機関の存在を認める政府は、より信頼できる貿易相手国となります。そして、米国の歴史においては、民主主義国が米国にとって最も持続的な同盟国となっています。その中には、私たちのかつての交戦国で、今日では強力な安全保障と繁栄を享受しているヨーロッパとアジアの国々も含まれています。
ここではっきり申し上げておきますが、米国は、ほかのどの国に対しても、それがいかなるものであろうと、特定の統治制度を強要することはできませんし、また強要すべきでもありません。また、ある国をどの政党あるいは個人が運営すべきかを選ぶ立場にあるとも考えてはいません。この点に関して、私たちは、成すべきことを必ずしも実行してきたわけではありません。今日、私たちがここに集まっている今の時点も、米国は、民主的に選出されたホンジュラス大統領の復権を支持しています。彼が、米国の政策に強く反対してきたにもかかわらず、です。しかしそれは、私たちが彼の意見に同意しているからではありません。私たちが指導者に同意しているかどうかにかかわらず、国民が自らの指導者を選ぶべきである、という普遍的な原則を尊重しているからです。
この点を踏まえ、本日取り上げる最後の分野についてお話ししたいと思います。それは、すべての国家の主権を尊重しながら協力を促進する国際的な制度をめぐる米国の国益です。
国家の主権は国際秩序の基盤でなければなりません。すべての国家が自らの指導者を選ぶ権利を持つべきであるのと同様に、国家には、国境の安全を確保する権利、そして独自の外交政策を持つ権利がなければなりません。それは、米国の場合と同様、ロシアについても言えることです。いかなる制度であっても、こうした権利を委譲してしまえば、無政府状態に陥ります。だからこそ、私たちはこの原則をあらゆる国家に適用しなければなりません。そしてそれには、グルジアやウクライナのような国々も含まれます。米国が他国に安全保障体制を強要することは、決してありません。いかなる国家も、例えば北大西洋条約機構(NATO)のような組織に加盟するためには、その国の国民の過半数の支持を得なければなりませんし、改革を実行しなければなりません。そして、その同盟の使命に貢献することができなければなりません。ここではっきり申し上げておきますが、NATOはロシアとの対立ではなく、協力を求めるべきです。
さらに広く言えば、私たちは、あらゆる国家や国民の間で協力と尊敬を促進する必要があります。米国大統領として、私は、米国の安全保障を守り、米国の国益を推進するために、たゆまぬ努力を続けるつもりです。しかし、どの国家も、単独で21世紀の課題に対処することはできず、また自らの考えに基づいて世界に指図をすることもできません。その点については、ロシアと同様に、今では米国も理解しています。そのために、米国は、特に各国の国益が一致しない場合にそれぞれが平和的に自国の国益を追求できるような国際制度、普遍的な人権を尊重し、そうした権利の侵害を防ぐ制度、私たちが他国に適用するのと同じ基準を自らにも適用し、すべての国に明確な権利と責任を与える制度を求めています。
ルーズベルト大統領、チャーチル首相、スターリン首相が1回の会談で世界を方向づけることができた時代がありました。しかし、そのような時代は終わりました。今日の世界はもっと複雑です。世界のあらゆる地域で、何十億もの人々が意見を述べ、繁栄と民族自決に関する独自の基準を追求しています。過去20年間に、私たちは、市場が成長し、富が拡大し、そして破壊ではなく建設のために技術が使われてきた様子を目の当たりにしてきました。昔の憎悪が過去のものとなり、人々に相違点があるという錯覚が徐々に消え、人間の運命が、自らの運命を決めることができる、ますます多くの人たちの手にゆだねられるのを見てきました。今、私たちは、皆さんが体験してきた過渡期に続いて、各国が平和に存在し、人々が尊厳と安全と、子供たちのためのよりよい暮らしを求める願望を実らせることのできる新しい時代を到来させなければなりません。それが米国の国益であり、私は、それがロシアの国益でもあると信じています。
このような未来は、はるか遠くのことのように思えるかもしれません。変革は困難なものです。1993年にロシア経済学院の学生が述べたように、現実の世界は、紙の上の世界のように合理的ではありません。しかし、これまでに時の経過と共に起きた変化を振り返ってみてください。今から100年前、ロシアは皇帝が統治し、ヨーロッパは帝国の地でした。私が生まれたとき、米国の一部ではまだ人種隔離が法律で定められており、私の父の国ケニアはまだ植民地でした。皆さんが生まれたころには、この学院ような学校を創立することなど不可能であり、インターネットは少数の恵まれた人たちにしか知られていませんでした。
次に何が起きるかを決めるのは皆さんです。変化が私たちにどのような世界をもたらすかを選ぶのは皆さんです。なぜなら、未来は、戦場に軍隊を集め、地下にミサイルを貯蔵する人たちのものではなく、教育を受け、何かを生み出す想像力を持つ若者たちのものだからです。それが今世紀の力の源泉です。そして、皆さんが生まれてからの20年間に起きたことを考えて、これから何年もの間に皆さんが何を創り出せるか、想像してみてください。
どの国も、自らの進路を決定します。ロシアは、峡谷を流れる大河のように、時代を切り開いて前進しながら、人類の歴史に消すことのできない足跡を残してきました。皆さんがこの物語をさらに前進させるときには、古い障害や疑惑に苦しむことを拒否することによって築くことのできる未来に目を向けてください。共通の願望の実現に向けて連携することによって築くことのできる未来に目を向けてください。力を合わせれば、人々を守り、繁栄を拡大し、私たちの力が真に進歩に役立つ世界を築くことができます。そしてそれはすべて、皆さんにかかっているのです。皆さんの幸運を願っています。どうもありがとうございました。


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