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*以下は、2008年12月31日付朝日新聞朝刊13面「私の視点」に掲載されたシーファー大使の寄稿を、同新聞社の許可を得て転載したものです。

私の視点

児童ポルノ - 日本は単純所持禁止を

トーマス・シーファー駐日米国大使

 今の季節、世界各地で子どもの無邪気に喜ぶ姿を見ることができる。米国ではサンタクロースにプレゼントをお願いする時、日本ではお年玉をもらう時だろうか。私たち大人にとっても特別な季節だろう。

 しかし、マリとジュン(ともに仮名)は、子どもらしい無邪気さをとうの昔に失ってしまった。欲望と異常な性癖に満ちた大人が彼らを性的に虐待し、児童ポルノを作るために利用したからだ。

 ロサンゼルスのある米連邦捜査局(FBI)捜査官は、マリとジュンの画像を児童ポルノ捜査中に見つけた。12歳に満たないマリは、日本人の成人男性にレイプされているところをビデオに撮られた。10歳にもならないジュンは、やはり日本人男性にオーラルセックスされるところを撮られた。

 インターネットの普及により、世界各地で閲覧できる児童ポルノは数十億ドル規模のビジネスになった。影響も出ている。心理学者が米連邦刑務局に提出した報告書によると、児童ポルノ犯の85%が子どもへの性的虐待を認めた。世界に児童ポルノが蔓延(まんえん)している今、私たちは行動を起こさなければいけない。 日米欧の主要7カ国(G7)のうち、米国、英国、フランス、ドイツ、カナダ、イタリアでは、児童ポルノの単純所持を処罰する法律がある。単純所持を罰せられないのは日本だけだ。日本が同様の法を制定すれば、無実の人が起訴される恐れがあると批判する人もいる。

 では、犯罪の犠牲となり、無邪気さを奪われたマリとジュンは、どうなるのか。彼らは生涯、ポルノ被害の残像に苦しめられるだろう。友人がネットを利用している時に、おぞましい秘密を知られないか思い悩むだろう。成長し親となっても、家族に過去の映像を見られることを心配し続けるだろう。誰が自分の子どもにそんな運命を背負わせたいと思うだろうか。

 G7の6カ国が、単純所持で無実の人間が起訴されないよう対策をとった。日本も児童ポルノ犯を罰する時ではないか。

 この問題は日本に限ったことではない。だが、日本は児童ポルノの製作、供給、消費の主要な拠点となっている。児童ポルノ根絶のため、私たちは団結すべきだ。現在、日本の警察は児童ポルノの没収はおろか、需要を生み出す者を逮捕・起訴することもできない。撲滅のための手段(法律)が必要だ。

 今年も、子どもたちが喜ぶのを目にする季節が来た。どうか、新年の抱負で願って欲しい。「マリとジュンの苦しみを二度と子どもたちに味わわせないよう、可能な限りのことをしていきます」と。日本と各国の政府に、児童ポルノ撲滅への闘いに参加するよう促して欲しい。そうすれば、マリとジュンは、新年にいくらかの希望と喜びを見いだすことができるかもしれない。