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*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

津田塾大学におけるJ・トーマス・シーファー大使の講演

(草稿)

2008年10月10日、東京都小平市

 本日、ここ津田塾大学でお話をさせていただくことを大変うれしく思います。私はこの日をずっと楽しみにしていました。若い人たちに希望と夢を達成することについてお話をするのは、いつでも楽しいことですが、特に本日は、このように大勢の有能な若い女性にお話をする機会をいただき、うれしく思っています。世界は変わりつつあり、これから女性がますます多くの機関、企業、そして政府を率いるようになるでしょう。津田塾大学の皆さんは、今後間違いなく日本、そしてさらに広い世界に影響を与えることと思いますが、どのように影響を与えていくかに思いをはせるのは、楽しいことです。本日ここにいらっしゃる皆さんの中から、未来の首相が誕生するかもしれません。そう考えると、未来の首相に親米家でいてもらうために、今日は良いスピーチをしなければなりません。

 津田塾大学と米国には深いご縁があります。津田梅子先生は、少女時代を米国で過ごしました。米国の若い女性が受けている教育に感銘を受けた津田先生は、日本の若い女性にも同様の機会を与えるという決意を抱いて帰国しました。その結果、津田塾大学が設立されました。以来、多くの日本人女性が津田塾大学に入学し、一流の教育を受けてきました。しかし以前は、卒業生が、その能力を十分に発揮してキャリアを積む機会を与えてもらえない例もよく見られました。しかし今や事情は変わり、状況は改善されています。今後、皆さんが生きているうちに起こる変化は、そうした機会を促すものとなるはずです。皆さんのお母さんやおばあさんが夢見ることしかできなかったことを、皆さんは見たり体験したりすることができるでしょう。そして私は、皆さんがより良い世界を築くことを確信しています。

 今から40年前、私は今の皆さんと同じ立場の学生として、最高の大学教育を受けることに意欲を燃やしていました。40年という年月は、皆さんにとっては永遠の時のように思われることでしょうが、私にはわずか数年前の数カ月間の中の数分間のことのように思えます。今日の世界は、40年前と大きく変わっています。技術がすべてを変えました。今日では、携帯電話、DVD、あるいはインターネットのない世界で生活することは想像できません。40年前には、そのようなものの存在する世界での生活を想像することはできませんでした。皆さんの多くが生まれた1990年には、政府関係者以外でインターネットに接続している米国人は1人もいませんでした。それから20年もたっていない今、米国でインターネットに接続している端末の数は3億に近づいています。数週間前のニューヨーク・タイムズ紙によると、中国におけるインターネット接続端末数は3億を超えています。

 実際には、今後数年のうちに、全世界のインターネット接続端末数が、地球の総人口である90億を超えることが予想される、というところまで来ています。これは驚異的な数字ですが、インターネットは、米国、日本、そして世界に驚異的な変化をもたらしています。しかも、そうした変化は、おおむね、皆さんが生まれてからこれまでの間に起きたことです。インターネットは、ビジネスからエンターテインメントまで、私たちの生活のあらゆる側面に影響を及ぼしています。しかし、変化の前兆は、インターネットだけではありません。

 科学と技術の進歩によって、私たちの寿命が伸び、人生が豊かなものになりました。20世紀を迎えようとしていた1900年の米国の平均寿命は、わずか46歳でした。21世紀間近の2000年には、米国の平均寿命は78歳になっていました。日本人の場合、現在の平均寿命は82歳です。技術がそうした変化を可能にし、そのおかげで何十億もの人々が恩恵を受けています。

 世界経済にも大きな変化が起きています。最近の金融市場の混乱にもかかわらず、これほど多くの地域で多くの人々がこのように繁栄した時代はこれまでにない、と言っても過言ではありません。貿易の増加、交通の発達、そして教育の拡大によって、何十億もの人々の暮らしが改善されました。例えば中国では、ほぼ3億人の国民が中流階級の仲間入りをしています。しかし、こうした成功の反面、中国にはいまだに1日2ドル未満で暮らしている国民が3億人いる、ということも認識しなければなりません。そして、さらに7億人の中国人が、1日2ドルの生活と中流階級の間の生活レベルにいます。私が皆さんの年齢だったころに比べると、国際経済は非常に大きく変化し、それを表す「グローバリゼーション」という新しい言葉がつくられました。グローバル化の影響は、今後皆さんが生きている間に増加の一途をたどるでしょう。

 私は、駐オーストラリア米国大使時代に、エレクトロニック・データ・システムズ(EDS)という米国企業のアデレード事業所を訪問しました。私がグローバル化の意味を本当に理解するようになったのはその時でした。EDSの人たちの話では、顧客の中にこのような会社があったそうです。その会社では、まず米国のエンジニアが設計の作業をすることから1日が始まります。8時間後にアメリカのエンジニアからオーストラリアのエンジニアに仕事を渡し、オーストラリアで8時間作業した後、今度は英国のエンジニアが引き継いで、24時間の作業サイクルを完了する、ということでした。そして、仕事は英国から再び米国に引き継がれ、新たな作業日が始まるのです。英国はその全盛期に、大英帝国は太陽の沈まない国である、と誇ったものでした。今日では、仕事をしている場所が英国であれ、アジア、北米、あるいはヨーロッパであれ、また国籍が英国人であれ、米国人、日本人、あるいはドイツ人であれ、資金が眠ることはなく、営業時間が終わることはなく、取引の機会が終了することもありません。そして、皆さんの生涯のうちには、こうした商取引のスピードは加速する一方となります。

 そして、大きな変化は、科学やビジネスの世界に限られたものではありません。私が学生だったころの国際秩序はもう存在しません。冷戦は終わりました。皆さんは、ソビエト連邦の存在しない世界で育ちました。しかし私は、ベルリンの壁が築かれた夏のこと、その壁が崩される日は決して来ないだろうと考えた時代のこと、そして東ドイツの人たちがその壁に登り、共産主義の終わりを告げた夜のことを覚えています。今、国際秩序の再定義が進んでいます。その重心はアジアに移行しつつあります。皆さんが受け継ごうとしている世界では、中国、インド、そして日本が、ますます大国としての役割を果たすようになります。

 社会的な課題としては、世界中の多くの人々が、すべての権利を享受できる市民として社会に参加する権利を要求しています。私が高校生・大学生だった時代に、米国は、わが国の歴史上最大の社会変革を体験しました。南部で育った私は、米国民を人種によって合法的に分離する人種隔離のひどい現実を、この目で見てきました。黒人の米国民は、私と同じレストランで食事をすることも、同じホテルに泊まることも、私の通った学校に子どもを通わせることもできませんでした。私は、大学に入るまで、黒い肌の米国民と同じ教室で学ぶことができませんでした。

 また、そのころの差別は、人種に基づくものだけではありませんでした。その多くは、性差別でした。19世紀後半に渡米したとき、津田先生は、日本の女性に比べて米国の女性が多くの機会を与えられていたことに感銘を受けました。当時の米国は、他の国々に比べれば女性の機会に関して進歩的だったかもしれませんが、まだ長い道のりがありました。私が皆さんと同じ学生だったころには、世界のどの社会でも、女性は同等の地位を与えられていませんでしたし、米国では確かにそのような状況にありませんでした。私が法科大学院の学生だったころには、女性のクラスメートはまだ少なく、全体の10~15%にすぎませんでした。今日、全米の法科大学院および医学部に通う学生のうち、過半数を女性が占めています。事実、今日では、米国の大学生の58%が女性です。

 40年前には、米国のフォーチュン500社のトップに女性はいませんでした。今日、フォーチュン500社の最高経営責任者(CEO)のうち、12人が女性です。1993年には、フォーチュン500社の役員のうち、女性は6%強でした。今日では、それが15%近くに増えています。1986年には、米国の大学の学長のうち、女性は10%足らずでした。2006年には、この数字は2倍以上に増え、23%となっていました。ハーバード大学の現学長は女性です。どこから見ても、女性は、米国社会のあらゆる側面で、より大きな指導的役割を追求しており、これを手に入れています。そして、それは米国に良い影響を及ぼしています。

 最終的に誰が勝利を収めるかにかかわらず、米国民は、この夏、民主党がアフリカ系米国人を大統領候補に指名し、共和党が女性を副大統領候補に指名したことを誇りとすることができます。この指名は、ほとんどの米国民が、皮膚の色あるいは性別より人格と能力が重視されることを望んでいることを証明しています。

 人種や性別に対するこうした考え方の変化は、米国の社会だけでなく世界全体に、重大かつ好ましい影響を及ぼしてきており、これからもそうした影響を及ぼしていくでしょう。私たちが偏見と差別を排していけば、より良い世界を築くことができる、ということには、誰も異論を唱えることができません。日本の女性、そして今ここにいらっしゃる女性の皆さんは、人々の生活にプラスの変化をもたらす、継続中の社会変革の一翼を担うことになります。皆さんの前に現れるチャンスをつかんでください。そうすれば歴史は皆さんを称賛するでしょう。

 この継続中の社会変革のほかにも、皆さんを取り巻く世界には巨大な物理的変化が起きようとしています。今日、人口の増加と天然資源の需要の増大による環境への圧力については、多くのことが書かれ報告されています。この問題をめぐる対話は、時には終末論的な論調を帯び、かなり重苦しいものとなることもあります。しかし私は、これは地球の終末ではなく、新しい世界が生まれようとしているのだと言いたいと思います。皆さんが生きている間に、私たちは、化石燃料への依存度が低く、エネルギー利用効率に優れた、新たな世界経済へと移行するでしょう。皆さんが今の私の年齢になるころには、二酸化炭素ではなく水を排出する水素を動力源とした輸送手段が使われている可能性が最も高いと思われます。環境に関して、私が自信を持ってハッピーエンドを予測するのはなぜでしょうか。それは、これから世界を指導するのは皆さんであり、皆さんほど環境に対する大きな責任感を持って指導者の地位に就いた世代はこれまでになかったからです。人間の作り出したこれらの問題は、何も手を尽くさなかった場合よりもクリーンでより良い世界に住みたいがために、そうした問題を解決する決意を固めた人々によって解決することができます。そのことを、やがて皆さんは理解するようになるでしょう。これにはさらに多くの費用がかかり、結果として大きな変化が生じます。経済と世界は現在とは違うものになりますが、これは実現します。それは、皆さんがそうした道を選択するからです。

 私が皆さんの年齢だったころには、破滅論者がたびたび、人口の爆発的な増加によって、想像を絶する規模のマルサス主義的破滅がもたらされる、と予測したものでした。何億もの飢えた人々が先進国に殺到する、と言われました。このようなことが起きていない理由にはいくつかあります。まず、人々が豊かになるにつれて、子どもの数は、増えるのではなく、減ってきました。次に、科学によって、人間の寿命が伸びただけでなく、食糧供給も大幅に増えました。こうした科学の恵みは、皆さんが生きている間に、さらに増加の一途をたどります。遺伝学によって、アジアで年間50万人の子どもたちをビタミンAの不足による失明から守るコメを作ることがすでに可能になっています。ここ日本の技術によって、食べた人の体内でコレラ・ワクチンの役割を果たす種類のコメが開発されています。皆さんが生きているうちに開発されるナノテクノロジーによって、蚊は、人をマラリアに感染させるのではなく、マラリアの予防接種の役割を果たすようになるでしょう。

 変化のペースが加速を続ける中で、皆さんが私の年齢に達するまでに、どのような驚異的なことが実現しているでしょうか。毎日新たに学ぶべきことが生まれ、学ぶ方法も多様になるでしょう。皆さんは、どの世代よりも多くのことを見て、感じて、理解するでしょう。世界はさらに小さくなり、そうした多くの変化の真っただ中で、皆さんは、人生において変わらないものはあるのだろうか、と疑問に思うこともあるでしょう。変わらないものはあると、私は断言できます。

 人間の精神は常に正義を求めます。人間の魂は常に平和を求めます。人間の心は常に愛を求めます。

 私たち皆の奥深くに、そうさせる何かがあるのです。人の魂を変える愛の力を過小評価してはなりません。皆さんも、自分の子どもの顔を見るときに、このことをもっと良く理解するようになります。また、ほかの人が何かを達成したときに、自分の利益になるからではなく、その人の幸せのために喜びを分かち合うとき、皆さんも、人の助けになることがどんなに大きな満足をもたらすかを理解することでしょう。そして、親切と寛容の心が、他人のためになるのと同じくらい自分の心の滋養にもなることを知るとき、皆さんも充足感というものを理解するでしょう。

 皆さんは間もなく津田塾大学を卒業されます。そのときには、成功しなければならないというプレッシャーをますます感じることになると思いますが、私は皆さんが真の成功とは何かを理解するようになることを願っています。真の成功の尺度は、肩書でもなく、服装や車でもなく、貯金の額でもありません。真の成功の尺度は、どれだけの人たちがあなたを愛してくれるか、またどれだけの人たちをあなたが愛するようになるか、ということです。そのことを忘れずにいれば、皆さんが私の年齢になったときに、世の中がどのように変わっていようとも、皆さんは幸せをつかんでいることでしょう。

 私は、皆さんの旅立ちを祝福します。本日は、楽しくお話をさせていただきました。私は、皆さんがこれからの人生で達成する素晴らしいことを、すべてこの目で見ることができるほど長生きできればよいのに、と思っています。皆さんが、より良い世界を築く中で、平和と幸福を手にされることを願っています。