
2006年9月11日
在日米国大使館
(草稿)
世界が恐ろしい一線を越えてから、あと数分で5年になります。2001年9月11日のあの日、いつもと変わらないアメリカの朝になると皆、考えていました。けれども、それが間違っていたことは、今では誰もが知っています。
時がたつにつれ、私たちは、あの日の恐ろしい出来事によって、世界が永遠に変わってしまったことに気づきました。空港を利用したり、国境を越えるときに、9月11日の事件の影響を感じずにすむことは、2度とないでしょう。
テロはそれ以前からありましたが、あの日、決して忘れられないような形で私たちの身に降りかかってきました。今晩、私たちは、いつものように生活していながら犠牲になった罪のない人々を追悼するためにここに集まりました。世界の半数近くの国から犠牲者が出ました。彼らは、話す言語や信仰する宗教もさまざまで、若い人もお年寄りも、屈強な人も体の弱い人もいました。悪いことをしたわけでもなければ、大義を主張したわけでも、罪を犯したわけでもありませんでした。あの日、彼らにはまったく罪がなかったにもかかわらず、邪悪な人々に攻撃される運命にあったのです。
正義の神を信仰する人間が、なぜこのような不当な行為を実行できたのか、当時も、そして今も、皆、疑問に思っています。その答えは決してわからないでしょう。このような極悪非道なことをした人々は、飛行機をハイジャックするずっと前に人間の心を失い、憎しみに魂が支配されていたのです。自分たちの行為によって世界が一変することを望んでおり、ある意味、それに成功したとも言えますが、重要な点では完全に失敗しました。
私たちは、いざというときには誰もが英雄になるのだということを思い知らされました。人間は今も無私無欲であること、信じられないような危険に直面しても他人を助けることができること、そして、人間が最善を尽くす原動力が何なのかを再認識しました。
ビルの中や飛行機に閉じ込められた勇敢な人々は、最期が近いことを悟ると、携帯電話で私たちに力強いメッセージを送ってくれました。取引銀行に電話して預金残高を確認した人や、電話で最後の株取引をした人、敵に復讐できなくて残念だと言うために電話した人は1人もいませんでした。1人、また1人と、家族や友人に電話をかけ、「愛している」という最後のメッセージを残したのです。
あの時にお互いに対してどういう気持ちを抱いたかを忘れてしまうことが時々ありますが、当時の感情を忘れてはいけません。文明は大きな打撃を受けましたが、破壊されたわけではありません。私たちは、数千人の命を救って殉職した消防士や警察官を誇りに思います。罪のない犠牲者をこれ以上増やさないために命を犠牲にして、ペンシルベニアに墜落した飛行機の搭乗者たちを誇りに思います。そして、誰にもできないようなことを成し遂げて、人生を導くのは憎しみではなく愛であることを思い起こさせてくれた多数の人々を誇りに思います。
あの日、テロリストのもくろみは失敗に終わりました。人間の心を破壊できず、逆に強める結果になりました。私たちの価値観を変えることができず、より強固なものにしました。私たちの善良さを奪うことなく、それを示す機会を与えてしまったのです。だからこそ、最終的には、彼らではなく私たちが勝利するのです。
それでは皆さん、2001年9月11日に犠牲になった勇敢な人々のために、黙とうをささげましょう。


駐日米国大使